毎日を充実させる東京のトレンド情報をお届け!
Harumari TOKYOのLINEをチェック

詳しくは
こちら

HOME SPECIAL 今夜、ザワつく映画たち 『女王陛下のお気に入り』~欲望、嫉妬、野心…。三者三様の“女の生き様”にザワつく~
『女王陛下のお気に入り』~欲望、嫉妬、野心…。三者三様の“女の生き様”にザワつく~

VOL.6 『女王陛下のお気に入り』~欲望、嫉妬、野心…。三者三様の“女の生き様”にザワつく~

6作目は『女王陛下のお気に入り』。オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、実力ある女優たちの競演にザワつくだけでなく、監督のヨルゴス・ランティモスも世界から熱い注目を浴びている鬼才!何とも魅力的なこのタッグ、ザワつかずにはいられない!

©2018 Twentieth Century Fox

これまでのイギリス君主映画とは一線を画すキャラクター

この映画、2018年のベネチア国際映画祭で審査員大賞(銀獅子賞)と女優賞のダブル受賞したのを皮切りに、ゴールデングローブ賞では主演女優賞、まもなく発表となるアカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演&助演女優賞を含む9部門最多10ノミネート!何だか凄い映画だぞと世間をザワつかせているのだが、本当に凄く面白い映画ということでピックアップ!これまで描かれてきたイギリスの歴代君主を主人公にした映画とはちょっと違うのだ。

©2018 Twentieth Century Fox

イギリスの歴代君主の映画で真っ先に思い浮かぶのは、そう!『エリザベス』。ケイト・ブランシェットの演じるエリザベス1世の並々ならぬ決意と覚悟に圧倒された人、感動させられた人は多いだろう。ほかにも『ヴィクトリア女王 世紀の愛』や、エリザベス2世の苦悩を描いた『クィーン』などもあるが、いずれも共通するのは運命と向きあう強い女性像が描かれていることだ。さらに、エリザベス1世誕生秘話の『ブーリン家の姉妹』、3月公開の『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』などを合わせて見ると、歴史や系図が繋がって面白い。

©2018 Twentieth Century Fox

今回の『女王陛下のお気に入り』の主人公は、アン女王だ。また力強い女王の話だろうか、と思って見ていると早々に裏切られる。グレートブリテン王国が世界的権力として台頭した時期に君臨した女王だが、この映画で描かれるのは、虚弱体質で、気まぐれで、わがままで、寂しがり屋で……17回も妊娠したのに17人すべて先だってしまう悲劇のヒロイン。そんな女王陛下の周りで権力を手にしようとする女たちの戦いが描かれる。

©2018 Twentieth Century Fox

三者三様。女たちの行動にザワつく!

アン女王(オリヴィア・コールマン)を支え、政治顧問的な役割で国家を指揮していたのは、レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)。アンとサラは幼なじみで強い絆で結ばれていたが、アビゲイル・ヒル(エマ・ストーン)が侍女としてやって来たことで、アンのお気に入りはサラからアビゲイルへ変わっていく。

©2018 Twentieth Century Fox

権力もアンの愛も手放したくないサラ、自分の立場を変えるために過激で冷淡なことも厭わないアビゲイル。三人三様の欲望、嫉妬、野心、愛憎がぐるぐると渦巻いていて、(もしも自分だったら)ここでは生きていけないな……と身震いする。女ってコワッ!と思うようなエピソードが次から次へテンポよく描かれていく。アビゲイルが現れたことによってアンとサラの関係は大きく揺らぎ、その信頼は、その愛情は、その忠誠はホンモノなの?ニセモノなの?彼らの本心が見え隠れするなかで、生き残りをかけてお互いを裏切っていく女たちの行動が、まあスキャンダラス!

©2018 Twentieth Century Fox

アビゲイルの這い上がり方が凄い!上流階級から没落し、従妹だというサラを頼って宮廷で召し使いとして働き始める。そしてすぐにアンに近づくための作戦開始!痛風に苦しむアンのために薬草を摘みに行くのだが、それには目的があって──勝手に女王の寝室に入って薬を塗っちゃうのだ!忍び込んだ時点でアウト!のはずだったが、痛みが和らいだことで何と侍女に昇格!そこからあの手この手でアンの“お気に入り”になるための策略を練って実行していく、生きる残るために。特に印象的なザワザワ、強烈なザワザワとして残っているのは、クライマックスであるものを踏みつけるアビゲイルの態度と表情だ。人ってこんなに変わっちゃうのね、いやこんなに本性隠せるのね……って、かなりザワつくはず!

©2018 Twentieth Century Fox

この映画の面白さは、実話をもとに聡明で美しい女性が悪行を働く物語にある。プロデューサーが20年前に手に入れたその脚本は何度も改稿され、時を経てギリシャのヨルゴス・ランティモス監督に託された。「ヨルゴスの手にかかれば、完全にユニークな物語に作りかえられることは分かっていた。ワクワクしたね」とプロデューサーが語るように、ヨルゴス・ランティモス監督は人間が極限に追いつめられた心理を映し出すことがとても巧い(もちろん脚本の素晴らしさあってこそだが)。彼の過去作品──『籠の中の乙女』『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』を見ればその実力は明らかで、毎回、なんて面白い発想&視点&表現なんだ!と驚かされてきた。でもって今回もやっぱり面白い、面白すぎるッ!映画を観終わった後の満足感の高いことといったら!こういう映画を見ながら歴史の勉強をしたかったなぁなんて、世界史を学び直したくなるほどザワつかせてもらった『女王陛下のお気に入り』、自信を持ってオススメする!

文:新谷里映

【女王陛下のお気に入り】
2月15日(金)より全国ロードショー