10作目は、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』。スコットランド女王のメアリー・スチュアートと、イングランド女王のエリザベスⅠ世、激動の16世紀の英国を生きたふたりの女王の物語。 シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビーという最旬女優の共演にもザワつく!
イングランドの女王エリザベスⅠ世を主人公にした映画と言えば、彼女の数奇な半生をケイト・ブランシェットが演じた『エリザベス』、その続編『エリザベス:ゴールデン・エイジ』を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。
今回の映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は、そのエリザベスⅠ世の物語であると同時にメアリー・スチュアートの生涯の物語でもあるのだが、どちらかというとメアリーはどんな人物だったのか、どんな人生を送ったのかを掘り下げた形になっている。
というのも『エリザベス』とその続編を手がけたプロデューサーたちが『エリザベス』の製作時にメアリーの生涯に興味を持ったことが本作に繫がっているのだ。可能であれば『エリザベス』とセットで見ることをおすすめしたい。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』、この物語の大軸としてはイングランドの王位継承をめぐる2人の女王の戦いが描かれる。
メアリー・スチュアートは生後6日でスコットランド女王となるが、イングランドから狙われることを避けるために5歳でフランスへ。15歳でフランス王太子と結婚。スコットランド女王にしてフランス王妃となるものの18歳で未亡人となりスコットランドへ帰国することに……。
そこまでの人生だけでも波瀾万丈すぎ、壮絶すぎて驚く! そしてメアリーがスコットランドへ帰国し、当時イングランドを統治していた従姉妹のエリザベスⅠ世に自身のイングランドの王位継承権を主張することによって物語は大きく動いていく。
エリザベスの人生も苦労の連続だった。3歳のときに母のアン・ブーリンが死刑となり、庶子と見なされ王位継承権を失うが、異母姉のメアリーⅠ世が死去したことで、25歳のときにエリザベス1世として即位する(※この時代はメアリーがたくさんいるのでややこしいのだが、メアリーⅠ世はこの映画の主人公メアリーとは別人物)。
しかし、エリザベスⅠ世よりメアリー・スチュアートの方が正当な継承者なのではないか──という理由から、そこから2人の女王の戦いの物語が始まるのだ。
この映画の面白さは、「お互いの心理的な執着についての映画です」とジョージー・ルーク監督が語っているように、王位継承をめぐる話ではあるのだが、それ以上にメアリーとエリザベスの女としての生き方がとても対照的に描かれている点にある。
メアリー・スチュアートは、恋愛、結婚、出産を経験し「恋多き女」と言われ続けた。エリザベスⅠ世は、国際紛争や国内派閥の形成を避けるために生涯結婚を拒否、国家と結婚した「処女王」と呼ばれている。どちらの生き方が正しいかどうかではなく、男性優位の時代に生きた女王同士が互いに意識し合っていたのか、そこに焦点を当てて描いていることが(映画としては)新しく、それが現代を生きる我々にも響いてくる。2人の女優も2人の女王に共感した──。
メアリーを演じたシアーシャ・ローナンは「私たちも常に難しい決断を迫られますが、地位のある若い女性がする同じような経験を見て、とても勇気づけられるのです」、エリザベスを演じたマーゴット・ロビーも「共感できるところが数多くあります。政治におけるジェンダー問題は、今の時代に非常にタイムリーです」とコメントしている。観客もまた、2人の女王が互いに抱くさまざまな感情に心が動かされてしまうだろう。
この映画の原作は、歴史学者ジョン・ガイによる「Queen of Scots:THE TRUE LIFE OF MARY STUART(スコットランド女王:メアリー・スチュアートの真実の生涯)」。彼が資料のなかから見つけたメアリーとエリザベスの往復書簡をヒントに、新しい女王像が描かれている。
たとえば、映画の予告映像にも映し出されている2人の対面(会合)シーンは、この映画のために作られた架空のシーンではあるが──「私たちは体が震えるのを止められませんでした」(シアーシャ・ローナン)、「強烈な魔法のような、感情的な経験でした」(マーゴット・ロビー)、2人の女優の心を大きく動かした。ファンタジックなきらめく美しさのなかで、過酷な現実と向きあわなければならない2人の女王の運命と選択が描かれる、忘れられない名シーンとなっている。
文:新谷里映
【ふたりの女王 メアリーとエリザベス】
2019年3月15日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー
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公式WEB: | http://www.2queens.jp/ |
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