11作目は、1970年代のアメリカを舞台に世紀の男女平等裁判に挑んだ女性弁護士の実話を映画化した『ビリーブ 未来への大逆転』。今や当たり前になりつつある男女平等は、いつどうやって当たり前になったのか──その背景には女性弁護士の挑戦があった!
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ルース・ベイダー・ギンズバーグを知っているだろうか。彼女は、86歳になった今も現役の米最高裁判所判事として活躍する女性弁護士。アメリカでは“RBG”の愛称で親しまれ、正義と平等のために闘うスーパーヒーローのような存在として敬愛されている。『ビリーブ 未来への大逆転』は、そのギンズバーグがどうやって正義と平等と闘ってきたのか──彼女が弁護士になる始まりの話、男女平等を訴える一歩となる裁判を描いた感動の実話だ!(※5月にはドキュメンタリー『RBG 最強の85才』も公開となる)
現在、まだまだ問題はあるにしても男女平等は当たり前になりつつある。けれど、50年前はそうではなかった。自由の国、世界の中心のアメリカでさえ、男性は外で働き家庭を養う義務があり、女性は仕事が選べず、自分の名前でクレジットカードさえ作れない時代だった。この映画の主人公ルース・ギンズバーグがハーバード法科大学院に入学した1956年当時、500人の生徒のうち女性はわずか9人で、女性トイレすらなかったというから驚きだ。
ギンズバーグは首席で卒業するが、女性だから、母親だから、ユダヤ系だからという理由で、13社連続、弁護士事務所の入社試験に落ち、生きていくために大学の教授に就任する道を選ぶ。そんなある日、夫で弁護士のマーティンが見せたとある訴訟記録からヒントを得て、男女平等への第一歩となる道を切り開くため、100%負けると言われた裁判を無償で引き受けることに!
どんな裁判だったのかは映画で確かめてもうらうとして、ギンズバーグの何が凄いかって、諦めない強さと頑張りだ。彼女がいたからこそ、彼女が立ち上がってくれたからこそ、今の男女平等があるのだと胸が熱くなる。クライマックスの約5分半にわたるスピーチは特に素晴らしく、感動的だ!
ギンズバーグは#Me Too運動の先駆者的存在でもあり──「女性たちは長いこと沈黙してきた。しかし、いい加減に(#Me Too運動のような)動きが起こってもよい時だろう」と意見を述べている。この映画を観ると、あなたも一緒に立ち上がろう! と、声を上げることがどれだけ大切なのかを受け取るだろう。
彼女が頑張れたのは夫や家族の支えもあった。実は夫のマーティンも弁護士で、2人は学生結婚をしている。ギンズバーグ家では、子育ても家事も分担することが当然のこととして成り立っていて、この夫婦の在り方は本当に理想的! お手本にしたい家族像が描かれている。ルースとマーティンを演じるフェリシティ・ジョーンズとアーミー・ハマーもハマり役だ。
この映画の監督がミミ・レダーであることにも意味がある。ミミ・レダー監督といえば、映画『ピースメーカー』や『ディープ・インパクト』の監督で、映画を観た当時「この映画は女性監督なんだ!」と、もの凄く驚いたと同時に「女性もどんな分野でも働けるんだ!」と勇気をもらったのをよく覚えている。また、アメリカン・フィルム・インスティテュートに入学を許された初の女性撮影技師でもあり、映画界の女性先駆者のひとり。そういう意味でもミミ・レダー監督がルース・ギンズバーグの物語を監督するというのはとても意味があるのだ。
監督自身も「この映画を作らなければならない、このストーリーを伝えなければならない」と思ったと語っている。というのは、ミミ・レダー自身も女性の活躍が難しい映画の世界で、逆境や差別を経験してきた人物で、「私より劣っている男性たちに与えられた仕事を自分のものにするために、一生懸命戦ってきた。ルース・ギンズバーグと私がたどってきた道のりには共通点があると感じた」と、絆のようなものを感じたそうだ。ちなみに、脚本はギンズバーグの甥であるダニエル・スティエプルマンが担当している。
女性も立ち上がろう、声をあげよう、でも男だから女だからという視点や捉え方で闘うのではなく、不平等解消のためにどう向きあうのか、どう生きていくのか──認め合うこと、支え合うことをこの映画は伝えている。男女ともに必見!
文:新谷里映
【ビリーブ 未来への大逆転】
2019年3月22日 TOHOシネマズ 日比谷他 全国ロードショー
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