16作目は、『リアム16歳、はじめての学校』。16歳までホームスクール(自宅教育)を受けていた少年が、ある出来事をきかっけに高校に通うことになり、色々な“初めて”を経験する青春コメディ。超ピュアで世間知らずな主人公が、初めて恋に落ちて、その感情に振り回されていく、青春のザワつきを追体験!
青春映画にジャンル分けされていても、そこからさらに恋愛、友情、社会問題……何を題材に描かれているかによって、同じ青春映画であっても中身は随分と違ってくる。
『リアム16歳、はじめての学校』は、子供の頃から学校には通わず、母親の自宅教育を受けて育った16歳の少年リアムが主人公。ホーキング博士の次に有名な天文学者になることが夢のリアムは、大学に進学するために高卒認定試験を受けに“初めて”公立高校を訪れる。その時、義足の美少女アナスタシアに一目惚れ! してしまったリアムは、彼女とまた会いたい! 学校ってなんだか面白そう! 自分の知らない世界を知りたい! と心がザワザワして、余裕で合格するはずの試験にわざと落ちて高校に通うことに。
初恋、高校、親子というキーワードは学園ものの青春映画ではこれといって珍しいわけではないのに、一度も学校に通ったことのない16歳が主人公となると、視点が変わる、見えてくる景色が全然変わってくるから面白い。
とにかくリアムのキャラクターがいい! 母親の愛情と英才教育を受けて育ったリアムは、こんなにピュアな16歳が存在するの? と、最初はちょっぴり引いてしまうほどピュアだ。ピュアであることは、言い換えれば世間知らずでもあって。友だちとのコミュニケーション、好きな子への接し方、集団のなかでの空気の読み方……私たちが当たり前だと思っている普通のことが、リアムにとっては初めてのこと。彼がひとつずつ新しい経験をすることで、当たり前すぎて気にもとめなかったことが、たとえば友だちの存在など、どれだけ素晴らしいことなのか気づかされる。
リアムのこういうところを真似したいなぁと思うのは、自分らしさを決して否定しないことだ。幼い頃から学校という集団のなかで生きていた人は、周りからどう思われているかを気にしたり、自分の意志に反していたとしても周りに合わせたりしてきたのではないだろうか。でも、リアムはからかわれても、奇妙がられても、自分の行動や態度を周りに合わせて変えようとはしない、そこがいい。ホームスクールが良い悪いということではなく、自宅教育のリアム=個性と表現することで、個性はとても大切であることをこの映画は伝えている。
リアムを演じるのは、本作でスクリーンデビューを飾ったカナダの新人ダニエル・ドエニー。「ルックスが良いうえに、無器用さも表現できる俳優だ」と、カイル・ライドアウト監督が絶賛する。ベン・スティラーがプロデューサーを務めるNetflixオリジナル映画『アレックス・ストレンジラブ』で主役を演じるなど、チェックしておきたい俳優のひとりだ。もちろん、カイル・ライドアウト監督も、監督・脚本家・俳優として幅広く活躍する注目株で、この映画では俳優としても参加。リアムのおじさん役を演じている。
そもそも、この風変わりな親子の物語が生まれたのは、監督のカイル・ライドアウトが「自宅教育を受けた人たちのずば抜けた知性と大人っぽい言動、時々見られる浮世離れした感覚や態度にすごく興味を惹かれました」と語っているように、素朴な疑問=興味からスタートしている。そして、自宅教育を受けた彼らが、突然にリアルな世界に放り込まれたらどうなるのか? と想像することで、物語は広がっていったそうだ。
学ぶ、友だちを作る、恋をする、将来を考える、色々なことにぶつかりながら、悩みながら、自分と向き合い人格を形成していく高校時代。個性の塊のようなリアムが、戸惑いながらも学校生活にチャレンジすることで、観る人の青春時代の記憶もザワつかせる。あの頃の自分はどんな大人になりたかったのか、どんな夢を抱いていたのか……過去の自分と向きあうことで、これからの自分に必要なものが見つかるかもしれない──そんな素敵な青春コメディだ。
文:新谷里映
【リアム16歳、はじめての学校】
4月27日(土)、新宿シネマカリテ他全国順次公開
配給:エスパース・サロウ
エリア: | 注目コンテンツ |
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公式WEB: | https://liam-hajimete.espace-sarou.com/ |
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