特殊メイクのゾンビが出てくるような、いわゆるホラーと呼ばれるジャンルは、そりゃもちろん怖い。でも、もっと怖いのって、実は…。Netflixの「子供はあなたの所有物じゃない」を観て、ドロッと・ヌルッとした“人間が抱える闇”にのめり込もう。
「まずタイトルの訳し方からして衝撃的なこのドラマは、いま日本でも話題になっている“毒親”を描いた、1回完結のオムニバスものです」(ぴんこ)
Netflixオリジナルシリーズの「子供はあなたの所有物じゃない」は、小説をもとに作られた台湾のドラマ。見慣れているアメリカのドラマとは、まるで雰囲気が違う。
「ドラマのなかには、過保護だったりエリート志向だったり、子供をコントロールしようとしたりする、狂気的な毒親たちが出てきます。そのへんはかなりリアルな設定ですね」
「そこに、以前紹介した『ブラック・ミラー』のような、“世にも奇妙な”感じがプラスされます。たとえば、親があまりにもそう願っていたら、なぜか息子のことをコントロールできちゃうリモコンが手に入って、どんどん悲劇に引き込まれていくような…」
ブラックでシニカルな世界観は「笑ゥせぇるすまん」にも通ずるものがあるかもしれない。
「毒親は台湾でも社会問題になっていて、さらにお隣の韓国でも、中国でもそうみたい。なので、立場によって受け取り方が違う、というのがあって。親が見るか、子供が見るか、どちらでもない人が見るか。その人のステータスによって変わると思います。どの目線で見ても、なぜかひとごとと思えないリアル感があります」
アメリカのドラマと違い、正義vs悪の構図がはっきりしていないので、考えさせられる。
「ちなみに私はめっちゃ怖かった! 出演している俳優たちを知らないというのもあって、本当にこんな人いそうだよね!と思いました。親ってもしかしたら、みんなついやりすぎちゃうんじゃないかな…なんて、けっこう考えさせられました」
どちらかといえば悲劇寄りで、社会への警鐘も強めになっている。まさに現代社会の闇を静かに淡々と浮き彫りにしている感じだ。
「これは向こうのドラマのセオリーなのか、役者たちの表現がとにかくオーバー! 苦しい顔も楽しい顔も全力! その鬼気迫る感じが、芯にグサッと来ます」
この物語の恐怖感にさらなる拍車をかけているのが、台湾ドラマならではの演出。
「ただ“やりすぎ”なワケじゃなくて、その“やりすぎ”が逆にリアル。人って本当に苦しかったり、プッツンって切れたりしたらこういう風になりそう。幽霊よりも人の執着心って怖い、気持ちをフィルターなしで最大限に爆発させている人って怖い、と思いました」
アメリカともヨーロッパともまた違う、ビジュアル面も注目したいポイントだ。
「もうひとつ特徴的に感じたのが、色の使い方。白が基調の空間にいきなり真っピンクの花びらが降ってきたり、突然めちゃくちゃカラフルな空間に入ったり。ビビッドな色を象徴的に使っている印象ですね」
「これは、日本ではなかなかない表現方法。ミュージック・ビデオのようにアーティスティックな感じです。ジョジョのグラフィックみたいなのが好きな人もハマるかも!」
お国柄によって異なる表現手法を実感するのも、ひとつの楽しみ方。このドラマの観方は人それぞれのようだ。
「まずこの衝撃的なタイトルから入って、全体的に不思議な世界観を楽しみつつ、最後は怖さを感じる。1話が1時間半くらいとけっこう長めなので、ガッツリ入り込めます」
「チャレンジングな人は、親子で観てみて(笑)。『こんなお母さんじゃなくてよかったね』ってなるか、『お母さんに似てるね』ってなるか、みなさんはどっちでしょう?」
親子で観た結果、家族の絆が深まるかケンカになるかは、当編集部では責任を持てませんので、あしからず。
取材・文:中山秀明
コンテンツセレクト:岡野ぴんこ
【子供はあなたの所有物じゃない】Netflixオリジナルシリーズ 独占配信中
世間や親からの大きなプレッシャーが、子供とその家族にもたらす悲劇。小説をベースにした不可思議な物語で、背筋を冷やすような社会の闇を切り取った、台湾のドラマシリーズ。
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公式WEB: | https://www.netflix.com/jp/title/81000509 |
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