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今夜、ザワつく映画たち

話題作には、必ず‘ザワつく’タネがある。美しい映像、ストーリーに隠されたギミック、キャストの壮絶な役作り秘話、語らずにはいられない強烈な何か…。そんな、私たちの心を、そして世間をザワつかせる作品を紹介していく。

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テクノロジーと普遍的な愛。キアヌ・リーブスの迫真の演技にザワつく!

レプリカズ

18作目は、キアヌ・リーブスが主演と製作を兼ねたSFエンターテイメント『レプリカズ』。愛する者のために人はどこまで危険を冒せるのか──家族を守るために暴走していく神経科学者ウィリアムを演じるキアヌの演技にザワつく!

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

54歳のキアヌ・リーブスが見せる更なる新しい一面

最近のキアヌ・リーブスと言えば、最強の殺し屋を演じた『ジョン・ウィック』シリーズで、スター健在であることを証明し、『マトリックス』シリーズ以降の低迷期から完全復活してみせた(実際は、大作に出ていなかっただけで、コンスタントに映画に出演していたのだけれど……)。また、なんとも無様な男の姿を披露した『ノック・ノック』、ワケありの大人の恋の会話劇『おとなの恋は、まわり道』など、そういえばこういうキアヌは見たことなかった、見たかった、というキャラクターを選んでいるのも面白い。

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

新作の『レプリカズ』で演じるのは、医療開発企業の研究施設に勤務する神経科学者ウィリアム・フォスター。人間の意識をコンピューターに移す実験を行っている優秀な科学者の設定だが、やはり最近のキアヌが選んだ役ということは、普通の科学者ではなかった! 愛する家族を何としても甦らせたい一心で、科学者として守らなければならない境界線を越えてどんどん暴走していく、暴走の止まらない科学者を演じているのだ。

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

キャラクターの魅力について、キアヌはこう語っている。「ウィリアムは家族を失う夫であり、優れた科学者でもある。僕たちは誰もが人生のなかで誰かを失ったことがある。そこに共通の何かが生まれる。それは、どうしたら彼らを取り戻せるのか? という苦渋の思いだ。それが、このキャラクターを魅力的で力強いものにしているんだ」

愛する人をクローンとして甦らせるのはアリかナシか

キアヌの演じるウィリアムは「ちょっと暴走しすぎじゃないかい?」と、観ている側がブレーキをかけたくなるほど暴走する。感情をコントロールできなくなった科学者が、人類にとっての禁断エリアに踏み込み、人間のクローン化は許されるのかどうか、という問題が提起される。

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

愛する人を甦らせるという題材は、SFとして、ホラーとして、恋愛映画として使われてきた題材だ。科学者が自然の法則に逆らって何かを生み出す物語をたどれば……19世紀にメアリー・シェリーが書いたゴシック小説「フランケンシュタイン」まで遡ることができる。

時代と共に繰り返し描かれてきた題材ではあるものの、今この時代だからこそ描けるもの=テクノロジーが加わることで、物語はぐんと面白くなる。本当に、現実に、もしかするとあり得るかもしれない……というリアルを感じる。だからこそウィリアムが家族を甦らせるシーンは、エンタメの世界だと分かっていても何だかとても生々しくて、ものすごくザワザワさせられるのだ。

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

近未来的テクノロジーと普遍的な愛が同時に描かれる

「この映画はエンターテイメントであり、メッセージでもある」というのは、キアヌ・リーブスの言葉で、その言葉とおり、観客はいくつものメッセージを受け取る。

テクノロジーの進化によって人間の倫理的な制限は越えることができるのか? それは映画のなかでも描かれていることだが、要は、人口知能と人間の意識の間の線をどこで引いたらいいのか、という倫理的ジレンマを追求していく物語でもある。

© 2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.

人造人間レプリカントが出てくる『ブレードランナー』をはじめ、人間とAIとの恋愛は成立するのかを描いた『her 世界でひとつの彼女』、肉体が滅んでも人間の意識はデジタル信号として生き続けることは可能なのかを探った『トランセンデンス』、ほかにも『A.I.』『エクス・マキナ』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『アリータ:バトル・エンジェル』なども同じテーマを内包しており、『レプリカズ』もそれらに続く作品だ。

ラストに用意されたウィリアムの最終的な決断をどう受け取るかは人それぞれ異なるだろう。そこにキアヌ・リーブスの言うメッセージ、君ならどうするか? という問題提起がある。人間のクローン化、記憶の移植、近未来的テクノロジー、そして普遍的な愛。それらが絡み合ったこのSFエンターテイメントは、たしかにツッコミどころ満載ではあるけれど、映画のなかの世界は、時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれなくて。本当にそんな世界が訪れるかもしれない、訪れたら……と、想像力を掻き立てられる、ザワつく映画だ。

 

文:新谷里映

【レプリカズ】
2019年5月 17 日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開