19作目は、韓国映画『神と共に 第一章:罪と罰』。壮絶な殉死を遂げた消防士の若者が現世に生まれ変わるために、冥界で7つの地獄の裁判にかけられる物語だ。人は死んだらどうなるのか──誰も覗いたことのない死後の世界、冥界の圧倒的スケールにザワつく!
『神と共に』というタイトルから、神とかそういう世界を題材にした映画なんだろうな……というのは想像に難くないと思うが、実際に見ると「スケールでかっ!」「死後の世界をそういうふうに描くのか!」など、いろんなことに驚かされる。
死後の世界を描く──それ自体は珍しくはないが、この映画がユニークなのは、冥界、アドベンチャー、法廷、人間ドラマが融合されていることだ。
主人公は、若き消防士キム・ジャホン(チャ・テヒョン)。火災現場で少女の命を救い壮絶な殉職を遂げたジャホンは、冥界で3人の使者カンニム、ヘウォンメク、ドクチュン(ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ)に迎えられる。人は亡者になると49日間のうちに7つの地獄で裁判を受け、その裁判をクリアした者だけが現世に生まれ変われるのだ。
というわけで、ジャホンは3人の使者と共に地獄の裁判を受けるのだが、各地獄にはそれぞれ大王=裁判官がいて、無罪か有罪かが決められていく。現世での罪と罰が問われる“地獄”の旅のなかで、主人公がどんな人物なのか、どんな人生を歩んできたのかが裁判を通して浮き彫りになっていく。
この映画は『第一章:罪と罰』『第二章:因と縁』の2部作の超大作。韓国では『新感染 ファイナル・エクスプレス』(’16)を超える大ヒットとなり、1部2部あわせたシリーズ動員数は2700万人! この数字がどのくらい凄いかというと──2019年4月現在の韓国の人口はおよそ5165万人なので、2人に1人が観た計算になる。本作は韓国の人気ウェブコミックが原作で、準備に5年、撮影に約1年、映画の背景のほとんどがCGで完成となるエンターテイメント。気になるのは、冥界の地獄をどう描いているのかだろう。
冥界、死後の世界はどんな所なのか──たとえば、日本映画『地獄』(’60)のようなおどろおどろしい世界なのか、アニメーション『リメンバー・ミー』(’17)のようにポップで華やかな世界なのか、誰も見たことのない冥界だからこそ自由に描ける利点もあるが、誰もがどんな場所なのかを想像したことがある、イメージしているものがある、だからこそリアリティある冥界、地獄でなければならない。
描かれるのは7つの地獄だ。
1.殺人に関与した者を裁く〈殺人地獄〉
2.人生を無駄にした者を裁く〈怠惰地獄〉
3.生前についた嘘に関して裁く〈ウソ地獄〉
4.正義の行いをしなかった者を裁く〈不義地獄〉
5.信頼を裏切った者を裁く〈裏切り地獄〉
6.暴力をふるった者を裁く〈暴力地獄〉
7.親不孝の罪を裁く〈天倫地獄〉
さらに各地獄の間には、三途の川や溶けることのない氷の渓谷、剣が茂る林、広大な千古砂漠など、危険と隣り合わせだけれど風光明媚な世界が広がり、その世界観はどこか『スター・ウォーズ』っぽくもあり、アドベンチャー感は『インディ・ジョーンズ』っぽくもあり、ほかにも砂漠でのアクションシーンは『ハムナプトラ』っぽくもあったり……冥界という名の巨大なテーマパークのようでワクワクする、見たことがあるようでない世界観にザワザワする!
圧倒的スケールで描かれる冥界の世界に引き込まれるだけでなく、主人公がどんな人生を送ってきたのか──人助けをして命を落としたジャホンに裁かれるようなことがあるのだろうか。好青年、善人にしか見えないジャホンの過去に何があるというのか。人生をふり返ることで見えてくる秘密とは……人間ドラマとしての面白さもあるのだ。
第一章の主人公ジャホンを演じるのは、『猟奇的な彼女』で日本でも一躍有名になったチャ・テヒョン。もともと“いい人”役が似合う俳優だが、今回は、ある葛藤とある罪の意識を抱えた青年を演じている。そしてジャホンを導く3人の使者を演じる俳優も実力派揃いだ。
死者と使者の転生をかけた裁判の弁護士のリーダーとして圧倒的存在感と名演を見せるのは『チェイサー』『哀しき獣』のハ・ジョンウ。2ヵ月以上のアクションの訓練に費やして猛々しくも美しい殺陣を披露している『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』のチュ・ジフン。ピュアな感性でストーリーに癒しを与えていくキャラクターを演じる『優しい嘘』のキム・ヒャンギ。
また、彼らが演じる使者にもある目的がある。49日の間に7つの裁判でジャホンを無罪の判決を勝ち取り転生させる任務の背景には、自分たちも人間に生まれ変わりたいという願いがあった。そのために必要なのは、1000年の間に正義の亡者=貴人を49人転生させること。ジャホンは48人目の貴人だったのだ──。
第二章『神と共に 第二章:因と縁』(6月28日公開)では、新たな正義の亡者が登場すると共に、なぜ3人の使者たちが使者になったのか、その謎も明らかになっていく。まずは第一章で、見たことのない冥界、地獄の旅を体験!
文:新谷里映
【神と共に 第一章:罪と罰】
2019年5月24日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
※2019年5月24日に一部内容を更新しました。
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