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今夜、ザワつく映画たち

話題作には、必ず‘ザワつく’タネがある。美しい映像、ストーリーに隠されたギミック、キャストの壮絶な役作り秘話、語らずにはいられない強烈な何か…。そんな、私たちの心を、そして世間をザワつかせる作品を紹介していく。

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脱獄映画の不朽の名作。ジェットコースターのように揺さぶられる感情にザワつく!

パピヨン

23作目は、1973年に映画化・公開された脱獄劇の名作と言われる『パピヨン』のリメイク。作家アンリ・シャリエールの壮絶な実体験を基にした世界的ベストセラー自伝小説を、新時代の監督と俳優を迎えて映画化! 13年間にわたり命がけで脱獄に挑んだパピヨンの壮絶な人生にザワつく!

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

地獄のような流刑地から脱出は可能なのか?

殺人の罪を着せられて終身刑を言い渡されるパピヨンと呼ばれる主人公アンリ・シャリエール(チャーリー・ハナム)が、自由を求めて何度も脱獄を試みる冒険活劇。とにかく、最初から最後まで緊張感が途切れない!時代は1931年。パピヨンが投獄された場所はフランス領ギアナの悪名高い流刑地。私たちが知る刑務所は、罪を犯したものが罪を償い社会復帰させるための場所だが、この映画に登場する流刑地は、害のある囚人を無害にするための場所、まるで生き地獄のような場所なのだ。

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

マイケル・ノアー監督は「この映画で描かれる大半は現代に関連している。今でも多くの人々がゾッとするような環境下で収監されている」と語っていて。何が恐ろしいかって、実話をもとにしているというだけでも「えー!これって実話なの?」と、かなりの衝撃なのに、現代に関連しているって……もう、平和な日本で暮らす者にとっては「信じられない!」「恐ろしい!」「マジで!?」「有り得ない!」の連続。

衝撃から恐怖、感動へ、紡がれていく感情にザワつく

この『パピヨン』の物語が面白いのは、絶対的な緊張感と共にさまざまな感情が次から次へと紡がれていることだ。物語の前半は、信じられないような獄中生活の描写に驚かされる。労働は過酷で、監獄の中は汚くて、食事は具がほとんどないスープ、いつ襲われるか分からない……命の危険も隣り合わせだ。

パピヨンは早々にそこから脱獄しようとするが、脱獄を企てた者は独房に送られる。暗くて、狭くて、汚くて、人が生活する場所とは到底思えない場所に閉じ込められるのだ。脱獄1回目は2年間、2回目は5年間の独房送りになる。物語の中盤は、パピヨンが独房に送り込まれ、そこに待ち受ける恐怖が描かれる。精神が崩壊してしまうような環境であっても、パピヨンは決して諦めない。絶対に生き延びてやる、抜けだしてやる、自由を手にするのだと希望を持ち続ける──スティーブ・マックイーン(73年版)の後を継ぎパピヨンを演じたチャーリー・ハナムの演技も本当に素晴らしい。

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

脱獄映画なのになぜ感動するのか? その理由は、パピヨンとドガ(ラミ・マレック)の友情にある。パピヨンは脱獄の資金を得るため、ドガは自身を危険から守ってもらうため、毛嫌いしつつも互いに手を組み、やがて彼らの間に友情が芽生える。驚きから恐怖へ、恐怖から2人のエールへと、観客の受け取る感情が変化し、気づけば強い絆で結ばれていく2人の関係に心を揺さぶられてしまうのだ。ダスティン・ホフマン(73年版)の後を引き継ぎドガを演じるのは、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じアカデミー賞主演男優賞を受賞したラミ・マレックだ。

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

面白い原作は何度映画化されても面白い!

そもそも1973年版『パピヨン』が脱獄映画の名作と言われているのに、なんでまた作るの? と思う人もいるだろうけれど、面白い原作は繰り返し映画化されるもので──。個人的に大好きな映画『プリティ・ウーマン』を例に挙げると(『パピヨン』とは全然ジャンルが違うけれど……)、『プリティ・ウーマン』はオードリー・ヘプバーン主演の『マイ・フェア・レディ』をアレンジしたもので、『マイ・フェア・レディ』はギリシャ神話の『ピグマリオン』が元ネタになっている。

今回の『パピヨン』は、アンリ・シャリエールの原作小説と73年版のダルトン・トランボの脚本の両方をもとにしている。ストーリーの流れはほぼ同じだが、新しい『パピヨン』ではパピヨンが無実であること、暗黒街のボスを裏切ったことで殺人の濡れ衣を着せられてしまうパリのシーンが追加、冒頭で描かれる。それは73年版を見ている人にとっても新しいストーリーだ。

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

脱獄劇、脱走劇は、いかに脱出不可能な場所から抜け出すのか、その作戦だったり、知恵の出し合いだったり、アクションだったりが面白いのだけれど、『パピヨン』は、それに加えてもの凄く生々しさがある。何が何でも生きようとする、自由を手にする希望を持ち続ける、そんなパピヨンの生命力に惚れてしまう。そして、ラストに用意されたパピヨンのあのジャンプは、それまで描いていきたすべてを“爽快”という二文字に変えてしまうほどの力強さがあって、感動が弾けるような瞬間、大いにザワつく瞬間だ。

文・新谷里映

【パピヨン】
2019年6月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー