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2019.8.23

時代に合った日本茶を楽しめるカフェ。西荻窪「Satén japanese tea」

Satén japanese tea(サテンジャパニーズティー)

日本茶は、決して堅苦しいものではない。片手で飲めたり、アレンジを楽しんだり、焼き菓子やサンドイッチと合わせたり。「Satén japanese tea」は現代らしいお茶の楽しみ方を教えてくれる。お茶をもっと、カジュアルに楽しもう。

西荻窪駅から歩いて5分たらず。呑んべい横丁を抜けて線路沿いの通りを吉祥寺方面に少し進むと、趣のある和モダンな格子扉が見えてくる。2018年4月にオープンした日本茶スタンド、「Satén japanese tea(サテン ジャパニーズ ティー)」の入り口だ。

スタンドスタイルで体験する 日本茶の“シングルオリジン”

この店を手がけるのは、「ブルーボトルコーヒー」で一号店の立ち上げや新店舗スタッフのトレーナーを務めるなど、一流バリスタとして長年活躍してきた藤岡響さんと、かつて三鷹にあった日本茶とコーヒーを提供するカフェ「UNI STAND」のスタッフだった小山和裕さんの二人。

「Leaf to Relief=茶葉から一服へ」をコンセプトに、日本各地のお茶農家が丹精込めて育てたそれぞれの茶葉の魅力を、この場所を通して届けようとしている。

「Satén japanese tea」藤岡響さん

今回、話をうかがったのは藤岡さん。そもそもなぜ、コーヒーから日本茶の世界に?

「日本茶って、シングルオリジンコーヒーと似ているんですよね」。

以前は仕事上、日々コーヒーと向き合う生活。そのため、休みの日はコーヒー以外のものに触れるようになったという藤岡さん。そんな中で産地・農園・品種、そして蒸し過程によっても味わいが異なり、ひとつひとつに作り手のストーリーがある日本茶と出会い、コーヒーと似た魅力を感じたという。

「コーヒーはどうしても生産地が遠いのですが、例えば日本茶は『京都産』といわれれば、その土地の歴史や特産物、街のイメージがすぐに思い浮かぶ。本来は日本人の誰もが、コーヒーよりずっと身近に感じられるものだと思うんです」。

Saténのメニューを見ると、まるでコーヒーのように“シングルオリジン”として、産地・農園名・品種が書かれた緑茶が並んでいる。毎日2種類の緑茶が楽しめ、この日は、静岡県・掛川「平野園」の「合組(ごうぐみ)」(ブレンド)と、鹿児島県・屋久島「八万寿茶園」の「栗田早生」。それぞれの特徴がもっとも表現できるよう、品種や茶葉によって淹れ方を変えるという。

「抹茶ラテ」をはじめとしたアレンジドリンクや、「焙じ茶ラムコーク」などの日本茶カクテルも。合わせる素材とのバランスを考慮し茶葉を選ぶという手法も、スペシャルティコーヒーに通ずるものを感じる。

今の時代にあった、日本茶の楽しみ方を提供する

これまでも和カフェやお茶スタンドはいくつかあったが、不思議とSaténは「わざわざ日本茶を飲みに来た」という特別感を感じさせない。いつものコーヒーショップへ来たような感覚で、すんなりと日本茶に触れられる流れが、なんとも新鮮だ。

メニューの見せ方はもとより、空間も大きな要因だろう。和紙を使用したテーブルや照明など、和の要素を取り入れながらも、いわゆる和カフェによくあるような、畳や障子、暖簾といった、いかにも“和風”なデザインなわけでも、日本茶を前面に押し出した看板があるわけでもない。居心地のいいバーかコーヒースタンドという方がしっくりくる。

「和風も素敵ですけど、特に若い人は馴染みがないのでちょっと身構えるし、逆に特別感が出てしまうと思うんです。なので“和カフェにある要素”は、意識的に除きましたね」。

かつて喫茶店や電車の椅子で重宝されていたベルベット地のカウンターチェアー、昔の日本家屋に使われいた織りクロスなどを多用した空間は、どんな世代の人も、どこか懐かしさを感じられるのではないだろうか。

「今の時代の日本人にあった、日本茶の楽しみ方を作ることが必要だと思うんです」。

抹茶を点てながら、藤岡さんはそう語る。「気軽に、日本茶に触れられる場所にしたいと思っています。なので、茶碗や湯のみではなく、片手でカジュアルに飲めるコーヒーカップでお出ししていますし、テイクアウトもできます。本来、日本茶は一煎から三煎までゆっくり楽しむ文化ですが、それだと今の時代のスタイルには合わない。だったら1杯で、その茶葉の美味しさを引き出す淹れ方をすればいい。もちろん、アレンジしたっていい」。

昔の日本茶文化に執着するのではなく、時代に日本茶を合わせるのだ。

バリスタがコーヒーを淹れるのと同じように、カウンターの目の前で抹茶を点てたり、お茶を淹れたりする姿を見られるのも、“今風”の楽しみかたのひとつなのかもしれない。アレンジドリンクのつもりで訪れても、お茶を淹れている様子を見るとつい興味をそそられ、「たまには緑茶でも飲んでみようかな」なんて思わせる。

「そんな風に、気軽に立ち寄ってもらえる、日常に根ざした店でありたいですね」。

メニューにはコーヒーやお酒もあるが、日本茶だけに絞らないのは、そんな理由から。コーヒーが飲みたい時にも寄れるし、お酒が飲みたい時は日本茶カクテルも楽しめる。この場所が気軽に来れる場所であるほど、日本茶に触れる機会も多くなる。

「アイス抹茶ラテ」と「あんバタートースト」

フードでも、あらゆる世代に親しみある味わいをと、「あんバタートースト」は食パンを特注するこだわりよう。あんころ餅をイメージしたもっちりとした食感が特徴だ。「抹茶ラテ」には、ミルクとのバランスを考え、少し渋みと苦味の強い、京都・宇治の「辻喜(つじき)」の抹茶を使う。

「季節ごとにシーズナルメニューも登場しますし、和菓子だけでなく、サンドイッチや素朴なアメリカンベイクも用意しています。焼き菓子と日本茶も、意外と合うんですよ」。

「日本茶って、特別なものじゃない」。そんな風に思わせてくれる、Satén。まずは、「抹茶ラテ」からはじめてみよう。しきたりにとらわれず、さまざまなスタイルで日本茶を楽しむことができるのは、今の時代を生きる私たちの特権だ。

取材・文 : RIN