logo

今夜、ザワつく映画たち

話題作には、必ず‘ザワつく’タネがある。美しい映像、ストーリーに隠されたギミック、キャストの壮絶な役作り秘話、語らずにはいられない強烈な何か…。そんな、私たちの心を、そして世間をザワつかせる作品を紹介していく。

26

タランティーノ最新作にてレオとブラピの初共演。話題作を100%楽しむ見所を紹介

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、なんとレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット、2大スターの初共演が実現! 彼らの共演は気になるけれど、タランティーノ作品って映画に詳しくないとついていけなさそう……と思っていたとしたらもったいない! というわけで、どんな映画なのか、『ワンス〜』の鑑賞方法をお届け!

1. クエンティン・タランティーノが引退してもいいと思うほどの作品!

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はどんな映画なのか──人気のピークを過ぎたTV俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のスタントマンで付き人のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)、この2人の主人公を中心に、1969年のハリウッドはどんな所だったのか、ロサンゼルスはどんな街だったのか、どんな映画がどんなふうに作られていたのか、ハリウッド黄金時代の光と闇、その年の8月9日に起きた事件、虚実を織り交ぜた物語が描かれる。
本作の監督であるクエンティン・タランティーノは数年前に「10本撮ったら引退する」と宣言をしており、この『ワンス〜』は9作目の長編監督作。引退まであと2本という制限のなかで「作りたい!」と思った映画であり、今年のカンヌ映画祭では「もし本作が好評だったら、10作目までやらないかもしれない」という言葉も飛び出したほど。ちなみに執筆に要した歳月はなんと5年! タランティーノの映画知識と映画愛にあふれた作品が完成した。

2. タランティーノ=マニアックじゃない、知識ゼロでも楽しめる!

タランティーノ監督が映画を愛して止まないシネフィルというのは周知のとおり。この映画のなかにもさまざまな映画へのオマージュ的なシーンがたくさん登場するのだが、となると観客にとって心配な要素となるのは、名作と言われる映画を知らないと面白くないのでは? これまでのタランティーノ作品を見ていないと楽しめないのでは? ということだろう。もちろん1969年頃のハリウッド映画や時代背景を知っていることで色々リンクするものもあるが、大丈夫! タランティーノ監督は決してマニアックな映画を作りたくてこの『ワンス〜』を作ったのではなく、彼がこれまで出会ってきたさまざまな映画の魅力をギュウッと凝縮したような映画でもあって、1人でも多くの人に映画は楽しいものだと伝えたい、そんなタランティーノのメッセージを感じる。だから、なんだか面白そうな映画だなと思ったら迷わずダイブ! リックとクリフのコンビがどんな映画人生を歩んでいるのかという視点で十分楽しめる。しかしながら──この映画を見た後にはきっとタランティーノがこの映画のなかに撒いた映画愛をきっと回収したくなる、知りたくなるはずだ。

3. レオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピット初共演のブロマンス映画

レオナルド・ディカプリオもブラッド・ピットもそれぞれ大スターとして活躍してきたけれど、共演は今回が初となる! タランティーノ監督はこの2人を主演にした理由を「僕が選んだんじゃなくて彼らが僕を選んでくれた」と言っているのだが、世界中から膨大な脚本が送られてくるなかで彼らが『ワンス〜』を選んだというのは、たしかに2人が縁を導いたとも言える。映画のなかでリックとクリフは俳優とスタントマン&付き人であると同時に親友でもあり、男同士の強い絆が描かれたブロマンス映画としても成立している。キラキラした年代を通過した40代と50代のレオとブラピ、円熟した2人の共演は言うまでもなく見どころだ。ちなみにクエンティン・タランティーノ監督とのコラボは、レオは『ジャンゴ 繫がれざる者』、ブラピは『イングロリアス・バスターズ』に続いて、それぞれ『ワンス〜』が2作目となる。

4. レオとブラピが演じるのは架空のキャラクターだけれど、実在の映画人たちも登場する!?

この『ワンス〜』が映画愛に満ちているのは、1969年のハリウッドで実際に起きていたことが描かれ、そこに生きていた映画人たちが登場している。現実と映画の虚構が混在しているのがこの映画の特徴だ。リックとクリフは架空の人物だが、リックの隣に住んでいるのは『ローズマリーの赤ちゃん』(※1)のロマン・ポランスキー監督とその妻シャロン・テート。リックの隣にポランスキーが住んでいたとしたら……という設定だ。ポランスキーやテートをはじめ当時のハリウッドで多くの映画人にアクションを教えていたのは、1960年代後半にTVシリーズ『グリーン・ホーネット』(※2)に出演していたブルース・リーで、クリフとリーが対決するシーンがあったりするのも面白い。また、1969年のハリウッドを舞台にしているということは、このご時世、街並はCGで再現したのか? と想像するだろう。しかし、タランティーノ監督はCGを使わずに当時のロサンゼルスの街を再現。1969年のロサンゼルにタイムトラベルしているかのような、タランティーノ流の「昔々あるところに……」おとぎ話の世界をたっぷりと味わえるのだ。

※1 ロマン・ポランスキー監督にとって初のアメリカ映画となるホラー映画。この映画が公開された翌年にシャロン・テート事件が起こった。

※2 ブルース・リーが準主役で出演していたTVシリーズ。この作品を機にブルース・リーはロサンゼルスに拠点を移し、映画人にアクション指導もしていた。

(こぼれ話)ブラピ演じるクリスの飼っているピットブルテリアの”ブランディ”がパルム・ドック賞受賞!

レオ演じるリックとブラピ演じるクリフは長年にわたる相棒だが、クリフにはもう1人いや1匹相棒がいて、彼のペットとして登場するピットブルテリアのブランディが今年のカンヌ映画祭で“パルム・ドッグ賞”を受賞している。この賞は2001年に創設されたもので、これまでに『マリー・アントワネット』のモップス(パグ)、『アーティスト』のアギー(ジャック・ラッセル・テリア)、『パターソン』のネリー(ブルドッグ)などが受賞している。

次回は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観る前に押さえておきたい予習ポイントを紹介していく。

文/新谷里映

【連載一覧】
第一回:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は何がすごいのか? 来日会見レポート
第二回:タランティーノ最新作にてレオとブラピの初共演。話題作を100%楽しむ見所を紹介
第三回:予習&復習すると『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はもっと面白くなる!