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今夜、ザワつく映画たち

話題作には、必ず‘ザワつく’タネがある。美しい映像、ストーリーに隠されたギミック、キャストの壮絶な役作り秘話、語らずにはいられない強烈な何か…。そんな、私たちの心を、そして世間をザワつかせる作品を紹介していく。

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予習&復習すると『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はもっと面白くなる!

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

どんな映画なのか……というのは前回お届けしたが、これだけは事前に知っているともっと『ワンス〜』が楽しめるというキーワードをご用意。レオとブラピが演じるのは架空のキャラクターだが、彼らを取り巻く人物や作品のなかには、実在する人物も作品も多い。とりあえず「シャロン・テート殺人事件」の概要はチェック!

シャロン・テート殺人事件とは?

マーゴット・ロビーの演じるシャロン・テートとは、1960年代にテレビから映画に進出した女優で1968年1月20日に映画監督のロマン・ポランスキーと結婚。しかし、その翌年の1969年8月9日に狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者たちによって自宅で惨殺されてしまう。26歳で妊娠8ヵ月だった。この事件は今もハリウッド史上希にみる悲劇として刻まれている。この事件がどんな事件なのかを知っていると、リックとポランスキー邸に向かうあの曲がりくねった坂道が、豪邸に続く煌びやかな道ではなく、その先で何が起きるのか……一気にサスペンスな雰囲気として映るだろう。

マンソン・ファミリーとは?

シャロン・テート殺人事件を計画したチャールズ・マンソンが率いるコミューンのこと。マンソンは十代の頃から犯罪を繰り返し、34歳のときにミュージシャンを夢見てロサンゼルスにやって来るが、夢は失敗に終わってしまう。そんななか、マンソンは音楽とセックスとドラッグで若者、主に女性を洗脳し意のままに操り、集団生活をしていた。1968年の夏頃には西部劇の撮影場所として使われていたスパーン牧場に移り住む。映画のなかで、クリフがヒッピーの女の子を送り届ける場所がマンソン・ファミリーの棲息場所だ。

1969年のハリウッドの光と闇

舞台となる1969年は、古き良きハリウッド映画の衰退とアメリカン・ニューシネマの登場など光と闇が内在した時代。この映画のなかでは、ピークを過ぎたリックはなかなかTVスターから映画スターへ転身することが難しく、マカロニ・ウェスタンなんてと文句を言いながらもイタリア映画に出演することになる。それはTV「ローハイド」からイタリアへ渡り、『荒野の用心棒』などに出演し、イタリアの西部劇から映画スターの道を切り開いたクリント・イーストウッドの実際の経歴と重なる。また、リックの隣に越してきたポランスキー監督が、夫婦で訪ねる華やかなパーティ会場となっているのは「PLAYBOY」の創刊者で実業家のヒュー・ヘフナーが住む豪邸、通称プレイボーイ・マンションだ。

この『ワンス〜』を見たら興味が湧く! クエンティン・タランティーノ監督作品

タランティーノ作品は面白そうだけど、見ないままここまで来てしまった……という人のなかには、監督自身が影響を受けた映画へのオマージュが多かったり、銃撃戦や流血シーン満載のバイオレンス色が強かったり、タランティーノ=クセのある映画というイメージもあるのではないだろうか。その点で言うと、今回の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドはタランティーノ監督作のなかでも一番見やすくて分かりやすい作品と言える。『ワンス〜』きっかけで、過去作も見てみようかなという人も多いはず! 年代順に『レザボア・ドッグス』からスタートして一気見するのもいいし、今作『ワンス〜』の2人の主演俳優、レオが出ている『ジャンゴ 繋がれざる者』、ブラピ主演の『イングロリアス・バスターズ』を見てもいい。カンヌ国際映画祭パルム・ドールとアカデミー賞脚本賞を受賞した『パルプ・フィクション』など、賞レースで話題になった作品という切り口でもいい。この機会に、クエンティン・タランティーノ監督に深く触れてみるのはいかがだろう。

どれから見る? クエンティン・タランティーノ監督作品

『レザボア・ドッグス』(1993)

タランティーノの記念すべき監督デビュー作。悪党たちが集まりダイヤモンドを強奪するが、計画と関係が崩壊していくバイオレンス映画。主題歌「Little Green Bag」に乗せて強盗に向かうシーンが格好良すぎ!

『パルプ・フィクション』(1994)

いくつかの殺し屋たちの物語を交錯させながらコメディ要素たっぷりに描いたバイオレンス映画。1994年のアカデミー賞では7部門ノミネートされ脚本賞を受賞。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞した。

『ジャッキー・ブラウン』(1998)

スチュワーデスという仕事の傍ら武器密売の売上をメキシコからアメリカへ運ぶ副業をしているジャッキー・ブラウンが一攫千金を企てる犯罪サスペンス。主演の黒人女優パム・グリアの存在感と演技力が圧倒的!

『キル・ビル』(2003)

ユマ・サーマンの演じる女エージェントのザ・ブライドが、愛する者を殺され復讐のための旅に出るバイオレンス映画。監督いわく「70年代のエクスプロイテーション(キワモノ)映画」で、日本のヤクザ映画のオマージュ満載!

『キル・ビル Vol.2』(2004)

ザ・ブライドの復讐の標的は5人(実行犯4人とボスのビル)、シリーズ2作目では残る3人との対決が描かれる。なぜ彼女は結婚式という幸せな瞬間に襲撃されたのか、その理由も明らかに!バイオレンスのなかにラブな要素も!?

『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)

タントマンで連続殺人鬼の男と3人の女性たちのカーアクション。タイトルのグラインドハウスとはB級映画を2〜3本立てで上映する映画館のこと。本作はロバート・ロドリゲスの『プラネット・テラー』と2本立てで上映された。

『イングロリアス・バスターズ』(2009)

主演のブラッド・ピットが演じるのは、ナチス軍人を標的とする秘密部隊イングロリアス・バスターズのリーダー。彼らの戦いと、家族をナチスに殺された女性映画館主(メラニー・ロラン)の復讐劇が描かれる。

『ジャンゴ 繋がれざる者』(2013)

レオナルド・ディカプリオが演じるのは、極悪人の領主キャンディ。黒人奴隷から賞金稼ぎとなったジャンゴが、生き別れになった妻を取り戻すためにキャシディのもとを訪ねてくる。アカデミー賞で脚本賞を受賞。

『ヘイトフル・エイト』(2016)

賞金稼ぎ、首吊り人、老将軍、保安官、メキシコ野郎、小さき男、カウボーイ、囚人──怪しげな男女8人が大雪のため山小屋で過ごすことに。そして起きた殺人事件!西部劇テイストで描く密室ミステリー。

文/新谷里映

【連載一覧】
第一回:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は何がすごいのか? 来日会見レポート
第二回:タランティーノ最新作にてレオとブラピの初共演。話題作を100%楽しむ見所を紹介
第三回:予習&復習すると『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はもっと面白くなる!