logo

今夜、ザワつく映画たち

話題作には、必ず‘ザワつく’タネがある。美しい映像、ストーリーに隠されたギミック、キャストの壮絶な役作り秘話、語らずにはいられない強烈な何か…。そんな、私たちの心を、そして世間をザワつかせる作品を紹介していく。

28

実は初共演。2大俳優レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共通点とは?

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の面白さを紐解く連載4回目は、主演のレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットについて。とっくの昔に共演していそうな2人なのに、実は今回が初共演! 共演に至るまでにどんな接点があったのか、また今回の共演を経て現在の2人の関係はどうなっているのか──。

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット、それぞれ説明不要の世界的スター俳優として活躍しているものの、これまでなかなか共演に恵まれなかった。

とはいえ、まったく接点がなかったわけではなく──たとえば、2006年の映画『ディパーテッド』はレオが主演、第79回アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞・編集賞を受賞した作品だが、ブラピは製作のひとりとして名前を連ねている。この映画は3部作のシリーズとして作られた香港映画『インファナル・アフェア』のリメイク。ブラピがハリウッドでの映画化を強く熱望していたという背景がある。

スター俳優として活躍する一方で、制作会社「プランBエンターテインメント」を経営するブラピ。近年ではプランB制作の『ツリー・オブ・ライフ』がカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを、『それでも夜は明ける』『ムーンライト』がアカデミー賞作品賞を受賞。この秋には主演と製作を兼ねた『アド・アストラ』の公開(9月20日)も控えている。

レオもデビューから今日までコンスタントに主演俳優として映画に出演し続けているが、環境保護主義者としての活動も有名だ。1998 年には野生生物保護を目的とした「ザ・レオナルド・ディカプリオ・ファンデーション」を設立。また、2004 年には制作会社「アピアン・ウェイ」を設立し、環境ドキュメンタリー『The 11th Hour』をはじめ数々の作品を送り出している。製作としては、『ロケットマン』のタロン・エガートンを主演に迎えた『フッド:ザ・ビギニング』が間もなく公開となる(10月18日)。

ほかにも、過去にプランBとアッピアン・ウェイが『ワールド・ウォーZ』の映画化権を巡って入札競争をしたという接点があったり、ブラピ主演の『イングロリアス・バスターズ』に実はレオも出演する可能性があったり(クリストフ・ヴァルツの演じたランダ役の候補として当初レオの名前もあった)、そんなタッグを組むチャンスがありそうでなかった2人を繋げたのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。中心にいるのは、もちろんクエンティン・タランティーノ監督だ。ブラピは『イングロリアス・バスターズ』で、レオは『ジャンゴ 繋がれざる者』でタランティーノとタッグを組み、そして『ワンス〜』で3人は集結した。

今年45歳となるレオ、56歳となるブラピ。彼らが『ワンス〜』で演じるのは、キャリアを重ねてきた2人だからこそ演じられる役。人気のピークを過ぎたTV俳優のリック・ダルトンと、彼のスタントダブルで付き人のクリフ・ブースだ。

リックとクリフは仕事の付き合いを超えた親友同士で、固い絆で結ばれている。しかしながら性格は全く違うから面白い。レオの演じるリックは情緒不安定の俳優、ブラピの演じるクリフは沈着冷静のスタントマンという設定だ。見どころはたくさんある、ありすぎるのだが、それぞれの役の特徴を活かした印象的なシーンを挙げるとすると──

レオの見どころのひとつは“泣き”のシーン。セリフを忘れて自分を責めたり、お酒に溺れたり、電撃結婚したり……喜怒哀楽さまざまな面をリックとして演じているレオだが、なかでも泣きのシーンは本当に素晴らしい。自信をなくしたリックがクリフの胸で泣いて(観客を)クスッと笑わせたかと思うと、子役の女優相手に涙を流すときの存在感ある泣きの演技、やっぱりレオナルド・ディカプリオって凄いと見入ってしまうだろう。

そんなリックとは対照的で常に冷静、何事にも動じないのがクリフだ。ヒッピーの少女に言い寄られても、集団で襲われそうになっても、とにかく慌てず対処する大人な男、真面目で控え目なところも格好いい。そして強い! なかでも釘付けになるのは、リックに頼まれて家のアンテナを直すシーン。シャツを脱ぎ上半身裸で修理する姿は、タランティーノ監督からブラピファンへのサービスショット! 『ファイトクラブ』や『トロイ』の肉体美にも惚れ惚れしたが、50代の肉体もたまらなく色気がある。

共演を経てレオとブラピはどのくらい仲良くなったのか? この共演を機に2人は役柄同様に親友になったそうで、共通の趣味はなんと陶芸。ブラピが所有しているアトリエをレオが訪ねることもあるそうだ。そもそもブラピはアートスクールでグラフィックデザインを学んでいたことがあり、元妻アンジェリーナ・ジョリーと別れた後は彫刻制作に没頭していたこともあった。レオに関しては、米美術雑誌「ARTnews」が毎年発表している「世界のアートコレクタートップ200」の2015年度版にランクインしている。そんな2人がタランティーノ監督とアートで繫がった。俳優として製作としてアート系のコラボレーションがこの先あるのかもしれない! と思うと(勝手な想像だが……)楽しみで仕方ないが、まずは待ち望まれた彼らの共演作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を見逃さないでほしい。

文/新谷里映

【連載一覧】
第一回:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は何がすごいのか? 来日会見レポート
第二回:タランティーノ最新作にてレオとブラピの初共演。話題作を100%楽しむ見所を紹介
第三回:予習&復習すると『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はもっと面白くなる!