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東京・夜こそ行きたいカフェ事情

飲みに行った帰りや時間つぶしでなく、敢えて、夜こそ、「カフェに行く」予定を入れたい。そんな魅力的なお店が東京に増殖中。さぁ、夜カフェしに、わざわざ、出かけましょう。

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「音楽、コーヒー、甘いもの」。シンプルなカフェ欲を満たす高円寺「CITY」

CITY (シティ)

直帰するには早いけれど、長々と外で飲む気分でもない夜。そんなとき欲しいものは、耳触りの良い音楽と美味しいコーヒー一杯、そこにスイーツがあればベストだ。それでいて雰囲気が良い……。そんな条件をすべて満たす格好のカフェが、高円寺にある。

“ちょうどいい”のは洗練されたムード漂う“自分たち”世代の純喫茶

駅前は飲み屋が多く、なんだか騒々しい。チェーン系のカフェやおしゃれなお店もあるが、なんだかそういう“日常過ぎず”“よそゆきでもない”そんな場所が、きっと等身大の自分に合っているような気がする。そんな時にジャストフィットするのは“純喫茶”だろう。しかも、妙に昭和レトロを売りにするでもなく、ちょうどいい自分たち世代の、“コーヒーを飲める店”。夜こそ行きたいのはそんな店だ。

騒がしい高円寺駅周辺から少し離れると急に人通りが減り、閑静な住宅街に。「CITY」は、喧騒から離れた落ち着ける所で待っていた。黒を基調とした外観は、大人っぽさ漂うバーのよう。扉を開けると、ほど良い明るさの照明と、店主の田代さんが出迎えてくれる。

「元々、深い味のコーヒーが飲めて、ちょっと安らぐ喫茶店をやりたかったんです。でも、狙い過ぎの昭和レトロは好きじゃなくて、もっと自分世代のシンプルな感覚を大切にしたいと思いこのスタイルになりました」(田代さん/以下同)

そうそう、シンプルな感覚でコーヒーを夜飲める店は意外と貴重なのだ。

ほぼモノトーンで統一された店内。インパクトある家具、装飾品などは置かず、驚くほどシンプルにまとめている。そのなかで目をひくのが、ぎっしりと詰まったCDラック。

「ブルース、ロックなど、自分の好きな音ばかり。でも、お店に流しますから、耳馴染みの良さ重視でセレクトしています」

BGMも“普段着”。気分とシーズンによって変える等身大のもの。

本や雑誌は備えず、無論テレビ、ラジオもない。BGMは、音楽好きの田代さんがチョイスした音が流れるだけ。

「ジャンルにこだわりはないのですが、誰もが休める場所であって欲しいですからね。無闇に激しい曲はかけません」

喫茶店にありがちなクラシックやヒーリング音楽とは違う、自宅にいるような感覚になれる“普段着”の音。耳慣れないアナログレコードではないのもポイントかもしれない。

「入れ替えの手間があり、慌ただしくなってしまいそうで。わざわざ慣れないアナログにするのは背伸びしているようで不自然ですし(笑)」

2人掛けテーブル3卓とカウンター4席のみの、最小限の座席数だから窮屈な雰囲気もない。整頓された空間に座っていると、頭のなかを駆け巡っていった余計な物事もスムーズに動き出す気がする。

「土地柄、古着屋巡りの休憩にひとりで立ち寄って、静かに過ごす人が多いですね。この空間は気持ちを落ち着かせたり、リセットするのにちょうどいいのかもしれません」

リラックスタイムを過ごす環境はすでに整った。あとは美味しい一杯を注文しよう。

高円寺の有名喫茶店で学んだ極上の1杯で、つかの間のリラックス

2015年にオープンした「CITY」。独立前、田代さんは高円寺の老舗喫茶店「ポエム」で修行を積んだ。だから、俗にいうサードウェーブとはテイストの違うコーヒーとなっている。

「基本的に中煎りから深煎り。昔ながらのコーヒーだけど、ちゃんと豆の個性を引き出した味が特徴です」

オーダー後、ハンドドリップで丁寧に入れる姿をカウンター越しに確認。フィルターに「カリタ」のウェーブフィルターを使用し、雑味の少ない安定した味を提供している。飲むと落ち着くような、いつもの味を感じられる。そんな心配りがうれしい。

「妻が焙煎士なんです。ですから細かくオーダーでき、理想の加減が実現できています」と田代さん。なるほど、だから中煎りでもフルーティさが残っていて、香り強めのエチオピア産モカが味わえるのか。誰もが馴染みのある風味だが、そこらのチェーン店とは一線を画す深みまで表現されている。

フッと落ち着きたいときには、やはり甘いものがあるといい。チョコケーキとチーズケーキのふたつから、今夜は自家製チーズケーキをセレクト。アクセントには、生クリームとマーマレードジャムが。

「男性ひとりでも通いやすいよう、スイーツは全般的に甘さ控えめです。サイズもコーヒー一杯にジャストな小さめに」

久しぶりでも安心して帰ってこられる場所になれたら

「喫茶店の良いところは変わらない点。10年ぶりのお客さんでも、変わっていないなって安心して寛げる場所であるべきです。時代に流されず、このままのスタイルを続けたいと思います」という田代さん。音楽にコーヒーにスイーツ。愛される喫茶店には、この3つが必ず揃っているように感じる。等身大で“ちょうどいい”「CITY」もそのひとつ。忙しない日々で疲れた心をゆっくりと癒す空間があなたを待っていてくれるはずだ。

 

取材・文:金井幸男
撮影:工藤直人