この春、東京ミッドタウンで「翻訳」にフォーカスした「トランスレーションズ展」が開催される。コミュニケーションの中に横たわる「わかりあえなさ」を知る体験ができるという本展、いったいどんな内容なのだろうか。
翻訳というと、ある言語の文章や言葉を、別の言語に変換することを思い浮かべるのではないだろうか。しかし、今回開催される「トランスレーションズ展」では、身振り手振りで伝える手話や、感情を絵に表すグラフィック・レコーディング、さらには青空や暖かな日差しから自分が感じた気持ちを言葉にして発する、というプロセス自体も、翻訳行為とみなしている。
本展のディレクターを務めるのは、学際情報学の研究者であるドミニク・チェン。幼少期はインターナショナルスクールに通っていたというチェン氏は、日本・台湾・ベトナムの血を引いたフランス国籍の持ち主で、使う言語は日本語・仏語・英語。人生で日々「翻訳」を体感してきたチェンが注目したのは、その「わかりあえなさ」だった。

『「翻訳」を、わかりあえないはずの他者同士が意思疎通をはかるためのプロセスと捉え(中略)、「誤解」や「誤訳」によってコミュニケーションからこぼれ落ちる意味の面白さを実感できるような「多種多様な翻訳の技法のワンダーランド」をつくろうとしました』(ドミニク・チェン)
「翻訳の技法のワンダーランド」という表現の通り、会場ではあらゆる角度から「翻訳」を捉えた作品が展示される。


視覚障がいを持つ人のために文字を代わりに読み上げる島影圭佑の「OTON GLASS」や、言語と食文化の類似に着目し、それぞれの文化的混交や摩擦を考察する永田康祐の映像作品「Translation Zone」。


さらに、「サメを性的に魅惑する香水」の制作を通して、分子レベルでの異種間コミュニケーションについて考える長谷川愛のリサーチプロジェクト「Human X Shark」や、ぬか床の中に棲む無数の微生物たちの発酵具合を音声に翻訳するロボット「NukaBot v3」など、翻訳の相手は人だけにとどまらない。ちなみにこのロボットは、チェンが手掛ける発酵メディア研究・Ferment Media Researchによるものだ。
他にも、聴覚障がい者・ろう者と協働で開発された、音の特徴を振動と光によって身体に伝える本多達也のインタフェース「Ontenna(オンテナ)」や、想像を手の動きであらわして見せる視覚言語としての手話の世界を、鑑賞者とともに探る和田夏実の映像作品「Visual Creole」など、様々なアーティストや研究者、組織が参加する。


おそらく誰もが、相手との「わかりあえないもどかしさ」を感じたことはあるはず。人だけでなく動植物、無機物まで、あらゆるものとの意思疎通の過程を「翻訳」と捉えた本展に足を運べば、この「わかりあえなさ」を解消するヒントが掴めるかもしれない。
| エリア: | 東京 / 六本木 |
|---|---|
| 住所: | 〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7−6 東京ミッドタウン・ミッドタウンガーデン |
| 電話番号: | 03-3475-2121 |
| 営業時間: |
月曜日 10:00〜19:00 火曜日 10:00〜19:00 水曜日 10:00〜19:00 木曜日 10:00〜19:00 金曜日 10:00〜19:00 土曜日 10:00〜19:00 日曜日 10:00〜19:00 祝日 10:00〜19:00 |
| 定休日: | 火曜日(11月3日、2月23日は開館)、年末年始(12月26日 - 1月3日) |
| 公式WEB: | http://www.2121designsight.jp/program/translations/ |
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