HOME WELL BEING リーマントラベラー東松寛文の 休み方改革2020 休み方改革を「とりあえずやってみる。」|東松寛文の提言その1
休み方改革を「とりあえずやってみる。」|東松寛文の提言その1

VOL.1 休み方改革を「とりあえずやってみる。」|東松寛文の提言その1

平日は広告代理店で働きながら、週末旅行だけで世界一周を成し遂げた、リーマントラベラーこと東松寛文。彼は単なる旅行好きではなく、「本当の休み方」を追求する男なのだ。 あなたの週末が、単に仕事の疲れを癒やすだけであったら、それは本当の休みではない。自分のための時間を謳歌する東松寛文の生き様を知ることで休日の本当の価値が見えてくる。 特集「休み方改革」。まずはリーマントラベラー・東松寛文さんと小誌編集長・島﨑昭光の対談から。なぜ彼はリーマントラベラーになったのか?その生い立ちから、リーマントラベラーという生き方を見つけるまでを聞いた。

生い立ちと、「もったいないをなくしたい」という信条

島崎:

東松さんは行動力がすごい。週末に海外旅行をすることもそうですが、サロンやYouTuberと、新しいことをどんどん始めてる。

東松:

「やらないともったいない」ってなるんです。やるか考えている時間がもったいない。やってみて違ったらやめるって決めていて。そうすると、また違うチャレンジができる。

島崎:

その性格は昔から?それとも、社会人になってから?

東松:

就活の時のキャッチフレーズは、「もったいないをなくしたい」でした。もったいないことが嫌なんです。せっかくやるんだったら、頭使わずにやることを増やしたい。

島崎:

ポリシーを超えてもはや個性ですね。頭より体が先に反応する…。

東松:

育ちも普通の家庭環境でした。今思えば、母親の教育の影響もあるかもしれません。母親がピアノの先生で、3歳とか2歳とか超幼少期からピアノを習っていたんです。

島崎:

すごい!

東松:

でも、あまり興味が持てなくて、辞めたいと言ったら、違う楽器をやるなら辞めても良いと制限つきのOKをもらった。それで、ギターを始めました。でも、僕は指が短いのでしんどくて、ギターを弾けるようになっても、プロにはならないなと悟って、辞めました。

島崎:

あら(笑)。辞めることで、ご両親から怒られたりはしなかったんですか。

東松:

はい、普通なら楽器を買って投資しているわけですから、辞めることを怒ったり続けるように説得すると思いますけど、我が家はそれがあまりなかったんです。そのおかげで、ダメだったら違うことをやればいいという「良い辞め癖」がついたのかも。これが今チャレンジする上で、すごい重要になっていると思います。

島崎:

ご両親に感謝ですね。

東松:

やっぱりお金をかけて何かを始めてみたりすると、辞められないじゃないですか、辞めることをもったいないと思ってしまう。

島崎:

考えてしまいますよ。

東松:

でも僕は、辞めるスピードが誰よりも早いんです。そして、辞めることを強く決めます。なんとなく辞めるとどこかで戻ろうとしちゃうので、一生やらない!ってズバッと決める。そうすると頭の中の余白ができて、次のチャレンジが気持ち良くできる。今後一生僕の中のスキルには必要ないと割り切ることで、次のチャレンジがどんどんできるというのはあるかもしれないですね。

島崎:

潔い!まあ、スキルがないと分かっただけで十分価値がありますよね。

NBAをきっかけに、週末旅行が始まった

島崎:

今の生き方に変わり始めたのは入社何年目くらいからなんでしょう。

東松:

まず、最初に旅行に出たのは入社3年目の2012年。でも最初は、旅行に行きたいとは思っていなくて、バスケが見たい、NBAを見に行きたいっていうその気持ちだけだったんです。

島崎:

偶然みたいなところから始まった。

東松:

そうですね。それでチケットを買ったんですよ。NBAの。でもチケットを買っても有休とれないから行けるはずがないと思って、職場のデスクに飾ってあったわけですよ。

島崎:

その頃って広告代理店の若手社員だからめちゃくちゃ忙しい時代ですよね。

東松:

はい。だからなかなか、休みたいと言いだせなかったんです。でも意を決して、チケットを懐に入れて上司のとこ行ったんですよ。

島崎:

その不退転の決意…。泣けるほど分かります。僕も最初の会社が大企業だったんで、「有給休暇=辞表」みたいな強迫観念あったなあ。

東松:

そう不退転ですよ。人生一番の大勝負みたいな。だから、休む理由を話すときに、上司にめちゃめちゃ僕の夢を語ったんですよ。1時間くらい(笑)。そしたら、「休んでいいよ」って言われまして。

島崎:

泣ける。もうドラマですよ。旧時代の(笑)。

東松:

その偶然の成功体験があって、自分が「できない」って思っていたことを「できること」にするためにはどうしたらいいかを考えるようになりました。

島崎:

それがリーマントラベラーへの道だった。

東松:

そうです。2015年頃から考えていて、その1年後には実際にやり始めました。

島崎:

サラリーマンは閉じた社会だから、自分の考えも狭いところで考えてしまいますよね。

東松:

意外とみんな「できない」と決めていることってあるじゃないですか、会社員だからできない、と思っていることを、どうしたらできるか考えてやってみる。結果的にできなくてもいいんです。やってみる、それだけで結構人生が変わるような気がします。

キューバの衝撃

島崎:

リーマントラベラーって単なる旅行好きのことではないと思うんですね。いわゆる観光とは違う旅の価値に気づいたのは、なにかきっかけがあったんですか?

東松:

最初は、旅行で非日常を感じるとリフレッシュできるという単純な楽しみで週末旅行をはじめていました。その考えが変わったのは、キューバに行ったのがきっかけです。

島崎:

キューバ!行きたい!

東松:

キューバに興味を持ったのは、『アナザースカイ』の紀里谷和明さんの回を見たのがきっかけです。キューバの人って年収が低くて、2万4000円くらいって言われているのに、なんて明るくて優しいんだ!と。紀里谷さんも普通に、「こんにちは」って言って現地の人の家に入って行ったのを映像で見て、自分もそんな旅をしてみたいなと。実際にキューバでは(人の家に)こんにちはって入って行ったりしました。

島崎:

すごいですね。

東松:

キューバの人はとてもおもてなしをしてくれるんですね。ダンスや遊びに誘ってくれたり、ご飯をくれたり……。そんなキューバの人たちに感動して、帰りのフライトの中では、どうしてそんなに優しいんだろう?そもそもどうしてこんなに感動したんだろうってずっと考えていました。

島崎:

今どきで言うところの「リフレクション」ですね。日本での自分の生活と比べて、自分を見つめ直すきっかけをつくるという。

東松:

そうやって考えているうちに、自分にとって旅行は、世界遺産が好きとか、景色が見たいから行くというよりも、色々な生き方を見たいから行くんだと。自分はそこに知的好奇心がわくんだなと気付いたんです。それが、リーマントラベラーを始めるきっかけになった。

島崎:

飛行機の中、というのも良かった?

東松:

そうなんです。飛行機に乗っている時間って、非日常と日常の合間というか、完全にシャットダウンされているじゃないですか。そういう場所で、いろんな考え事ができるんです。

旅の楽しさ

東松:

旅行というと、最初はガイドブックを見て、人気の場所などに一通り行くと思います。ただ、そうすると、旅行がいつの間にか、知っている情報の確認作業になってしまう。短い期間に元を取ろうとしてスケジュールを詰め込んで……って、むしろ仕事モードですよね。

島崎:

そうですね。「タスクをこなしている」感。

東松:

なので、僕は予定を決めない。1つだけ「やること」を決めて、あとは決めない。そして、ハプニングやトラブルはつきものだ、くらいに思って行く。それくらいのスタンスで行くと、現地の人とコミュニケーションも取りやすくなるし、十分元がとれるぐらい現地で楽しめる。

島崎:

短い時間だからこそ、敢えて詰め込まない。英語が苦手だとも仰っていましたね。

東松:

語学に自信はないんですけど、積極的に話しかけています。例えば写真撮ってくださいとか、食事をした店で、店の人に他のオススメのレストランを聞いたりとか。

島崎:

そういう旅をしているといつもと違ったものが見えてくる。

東松:

確認作業がない分、本当の意味で自分がわかってくる。限られた時間の中で、自分の好きなことと、嫌いなことがはっきりわかるようになってきた。

島崎:

特にひとり旅だったら、誰の目も気にする必要がないですからね。本音が出やすい。もし、それでも“気にしい”だったりしたら、それはそれでそういう“気にしい”な自分であるということが改めて分かるし。

東松:

それに、仕事における自分のモチベーションも見えてくるんです。自分の強みや弱みって、普段の生活の中だとわからない。(海外)旅行は、自分を見つめ直す題材として最高の環境です。

第2回につづく)

写真:南方 篤