HOME WELL BEING SPECIAL コロナ禍で見えた軽井沢の特別な事情。地元メディアが語る“広い”地元愛と街の結束
コロナ禍で見えた軽井沢の特別な事情。地元メディアが語る“広い”地元愛と街の結束

コロナ禍で見えた軽井沢の特別な事情。地元メディアが語る“広い”地元愛と街の結束

100年を超える“別荘地・軽井沢”の歴史の中でもかつてない事態。世界中の観光地と同じく、新型コロナウイルスによる旅行客の減少に打撃を受けた軽井沢だが、その現実は他の観光地と少々事情が異なっていた。軽井沢には別荘族が多いため、別荘オーナーたちの“巣ごもり”がメディアで妙な形で報じられたことに端を発する非常にセンシティブな分断があったのだ。

3月の連休中に「東京ナンバーの車がスーパーに大挙して日用品を買い占めている」と別荘族らしき客の来店が面白おかしく報道された。確かに「首都圏からの県境をまたいだ移動は自粛」とされてはいたが、そもそも別荘は「自分の家」。もともと平日は首都圏で働き、週末は軽井沢の自宅で過ごすというライフスタイルの人も多い。近隣市町村の首長らによるツイートをきっかけに、軽井沢への移動に関する意見は賛否両論あったそうだ。
軽井沢新聞社・編集長の広川美愛さんに話を聞いた。

「江戸時代、中山道の宿場町でもあった軽井沢には、昔からどなたに対してもウェルカム精神でお迎えする気持ちをずっと持っています。誤解を招くような表現や報道が先行してしまい、私たち軽井沢の住民の本当の気持ちが伝わらなかったのは残念でした」
他の観光地同様、緊急事態宣言下の軽井沢は、「まるで死んだ街だった」と、広川さん。
前述したようなこともあってか、別荘の方たちがあまり出歩くこともなく、通常の軽井沢の活気を作ってくれる観光客の姿もない。避暑地として、春から秋にかけて盛り上がる軽井沢は、どこもさみしい光景が広がっていた。

しかし、下を向いてばかりもいられない。無人になってしまった街を盛り上げようと、軽井沢の人々はアクションを起こし始める。

広川さんや、飲食店などの仲間たちが声掛けをして始まった「遠くに行けない今だから#地元軽井沢を体験してみた」キャンペーンはまさにそのひとつ。
「地元の事業者をなんとか盛り上げたい…そんな気持ちで企画しました。軽井沢のお店や施設は観光客向けというイメージがあり、実は行ったことがない地元住民や別荘族が多い。この機会に軽井沢を身近に感じてもらいたいと思ったんです」

地元向けの割引や特典サービスを用意して、利用を促す企画。準備期間わずか10日間あまりだったが、参加を呼びかけ始めると、なんと90もの店舗や施設が参加してくれた。老舗ホテルや星野リゾートなどの大手企業、フレンチの名店、人気のトラットリアや和食処、ゴルフ場やレジャー施設まで、軽井沢のあらゆる企業が参加し、活気を取り戻そうと一致団結したのだ。こうして1ヶ月半に及ぶキャンペーンが行われた。

キャンペーンの利用条件は自称“地元”。別荘客も周辺地域の住民でも、「軽井沢は地元だ」と思っている人は誰でも参加できる仕組みにした。このオープンな“緩さ”こそ軽井沢らしさだと広川さんは言う。

「地元のおばあちゃんから、別荘のおじさま、隣町の方など色んな方に利用していただき、町中に人の動きが見られるようになりました。『こんなお店があるんだ、知らなかった』とか『実は一度行ってみたかったんだよね』と言いながら楽しんでくれたことが何より嬉しかったです。軽井沢の魅力を地元自身が体感して、身近にファンを作ること。その重要性は、今回の非常事態の中で気づけたことの一つですね。今回の試みはシーズンオフや閑散期の対策にもつなげていきたいと思っています」

コロナ禍で外出することが憚られた2020年の春。徒歩で行ける“地元”に改めて注目した人も多いだろう。観光地である軽井沢の住民たちもまた、改めて自分たちの街の魅力を再発見した。自分たちが実感を持っておすすめできるパワーを蓄えた軽井沢の街は、旅行客に対しても今後、より魅力的な旅を提供してくれるに違いない。

取材協力:軽井沢新聞社