世はワークショップ全盛期。中でも、ただお手本を見ながらモノづくりをする以上の価値がある「アートなワークショップ」がおすすめだ。リフレッシュに、円滑なコミュニケーションに、クリエイティブの源に。参加すれば、モノ作りの先に見える世界がきっと変わって見えてくるだろう。
「臨床美術」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、ストレス緩和などのメンタルヘルスケアや感性教育などに効果が期待されている、芸術療法のひとつだ。ストレス社会のいま、その注目度は高い。どこか「研究分野」での話のような固いワードだが、そのアプローチを自然に取り入れているのが、南青山にある「ヨックモックミュージアム」だ。
講師となるのは臨床美術士の資格を取得したヨックモックミュージアムのスタッフ。セッションに参加した初対面の人同士に自己紹介を促すなど、空気を和ませながら、ワークショップを進めてくれる。
このアートセッションが面白いのは、「作品を作るだけじゃない」ということ。
制作後、参加者たちそれぞれが、仕上がった作品を自由に鑑賞し、思い思いに印象を語る時間が設けられている。無邪気に作ったもののはずだが、それを言語化するのは意外と難しい。だが自分の行動と脳内の世界のつながりを言葉にする行為そのものが、デトックスしているような心地良さを感じられる。まさに参加者主体の「トキ消費」が体験できるワークショップだ。
また、臨床美術士がしっかりプログラムを組んでくれているので、アートセラピー的要素も強い。先進的なワークショップに参加して、スッキリ、ポジティブな気持ちを体感しよう。
ヨックモックミュージアム
住所:東京都港区南青山6-15-1
https://yokumokumuseum.com/
CHANEL、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーションイメージの制作を担当し、世界的に活躍しているアーティスト・シシヤマザキ。気鋭のアーティストから直々に『描くこと、表現すること』を学べるお絵かき教室が、オンラインで定期開催されている。
ここでは、単純に画力を上達させるということよりも、絵づくりを通して、視点を広げ、考えを深めていくことを目的としている。また参加者を“メンバー”と呼び、チャットを用いた交流や共同制作など、アーティストを中心としたコミュニティづくりが活発な点も特徴だ。
シシヤマザキといえば、やはりその独特な世界観の源が気になるところ。教室では絵を描く際のテクニック、考え方、裏技などの話を惜しみなく紹介してくれるだけでなく、おすすめ作品や、カルチャーの話、素敵な体験談なども多く聞くことができる。アーティストの視点を知り、メンバー同志でもチャットで語り合い、作品を生み出す。SNSを当たり前に使いこなす時代にマッチした「トキ消費」体験のワークショップだろう。単に「お絵かき」といってもとても奥深い。絵を描き、交流するという“実りのある時間”を重ね、より多角的な視野を手に入れよう。
シシヤマザキのお絵かき教室
https://community.camp-fire.jp/projects/view/288325
大人を対象にしたさまざまなオリジナルワークショップを企画・運営する「おとなの図工クラブ」。この教室の特徴は、かつて誰もが素直に楽しんでいた「図工」をベースに、コミュニケーションを豊かにすることを目指していること。「子ども心に帰れる非日常体験」を通じて気持ちを解放し、描いた絵を言語化していくことで気づきを得られる体験ができる。
手のひらや足で絵を描く、顔をキャンバスにする、「好き」をテーマに自由に作る……などシンプル且つ多彩な手法、テーマで展開される点が特徴的な同教室。現在はオンラインがメインながら、出来上がった作品を自ら説明したり、相手への感想を述べたりすることで参加者同士の価値観の理解にまで踏み込んだ“本音の対話”へ発展させていく。モノ作りという体験を超えた「ワークショップ」そのものを愉しみ、他者との違いから自らの今現在の内面を知るきっかけにもなっていくのだ。
「図工」という童心に帰る体験だからこそ、自らの核心により近づけるともいえるだろう。体験から気づきを得ることで、価値観の幅を広げ、職場の人間関係や新たなビジネスアイデアを生み出す活力へとつなげることも期待できそうだ。
おとなの図工クラブ
住所:東京都目黒区中目黒1-1-17-708
https://otonanozukoclub.com/
ワークショップの中でも人気の高い「陶芸」。初心者でも楽しめるさまざまなプログラムが組まれている。都内でも多くの教室があり、習い事として通っている人も少なくない。
銀座の「陶芸教室ゆう工房」は初心者向けの1日体験から、じっくり制作できる会員コースまで設定された陶芸教室だ。プレゼントを手作りできるギフトコースや、ブライダルコースなど用途に合わせた作陶にも対応してくれる。
陶芸の技法はいくつかあるが、オリジナリティを発揮して自由にもの作りを楽しむなら、「手びねり」がおすすめだ。手回しろくろを使いながら、土で作った紐を積んだり、土の塊に穴をあけたりしなから、自由にうつわの形を作っていく。電動ろくろと比べると簡単なように思えるが、やってみると実に難しい。思い通りにならない土の塊に、どんどんのめり込んでしまうだろう。
またなんといっても陶芸の魅力は、世界にひとつだけのうつわを完成させられること。出来上がったうつわや食事を盛り付けた様子をSNSで紹介すれば、「モノ作り」以上の愉しさを共有できる。作っているトキだけでなく、家に持ち帰って使用することでさらにその“トキ=ワークショップ”の醍醐味が増幅する。
忙しい日常を離れ、作品作りに没頭する時間はリフレッシュにも最適。頭を空っぽにして取り組んでいる時間そのものが心地よく感じられるだろう。
陶芸教室ゆう工房 東京銀座教室
住所:東京都中央区銀座8-4-25 もりくま11ビル2F
電話:03-3572-3373
https://yukobo.co.jp/
“ゼンタングル“という言葉を耳にしたことがあるだろうか。これは、タイルと呼ばれる小さな紙に、ペンと鉛筆だけを使って描くアートのこと。名前の由来はZen(禅)とTangle(絡まる)を合わせた造語だ。無心で繰り返し描くことにより瞑想状態となり、雑念が消え、リラックス効果を得ることができる。紙が小さいので、必ず完成させられ、達成感を味わい易いのがポイント。また消しゴムを使わず、自分が間違えたと感じる線も活かしながら、描き続ける点も特徴だ。どんな仕上がりになっても「これでいいんだ」と思うことで、自己肯定力を高めることを目指している。
都内でゼンタングル認定講師として活躍する成冨史絵の教室では、対面、オンラインのレッスンが定期開催されている。レッスンでは完成した参加者の作品を集めて、1枚の大きなモザイクアートにすることも。小さな1枚の作品が、大きく掲げられる様は圧巻。その日、その時だけの特別なアートを完成させた充実感に満たされることだろう。
気の向くまま、自分の発想に正直に、ありのまま描いていくだけのゼンタングル。一人無心で集中する時間と、どんな時も「これでいい」と言ってくれる人々と共に過ごす時間、どちらの良さも体感できるワークショップだ。
成冨史絵のゼンタングル
https://shie.localinfo.jp/