まず「結婚」とは法的には「婚姻」という。これは所定の婚姻届を市区町村役場に提出することで、戸籍上の「配偶者」となることを指す。「婚姻」によって二人が社会的に夫婦であると承認されることとなり、法的権利や義務が発生する。そして、この「婚姻」を、結婚に関するその他の関係と区別するために「法律婚」という言葉が使われる。
さて、この法律とは日本では「民法」のことを指す。「民法」では婚姻によって夫婦間に権利や義務が生じ、それまでの二人の関係とは(法的には)異なる関係に変化する。その一部を紹介しよう。
現行の「民法」では夫婦は妻か夫どちらかのひとつの姓を使うことになっていて、婚姻後は片方の姓に統一しなければならない。旧姓は仕事上のみ使うなど「通称」としての扱いとなる。生活するうえで必要な手続きの多くは、原則的には旧姓(だけ)を使うことができない。ただし、最近では運転免許証や住民票、マイナンバーカード、印鑑登録証明書などの公文書で「旧姓併記」が認められるようになっている。ケースによっては旧姓のままで銀行や保険、携帯電話などの契約をできる場合が増えてきている。とはいえ、それを適応するための手続きが煩雑になり、何かと面倒が多い。なお、一方が死亡したときは元の姓に戻すことができる。
「民法」では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」とはっきり明記されている。つまり、「法律婚」の夫婦は一緒に住んでお互いに協力して、家事をしたり、病気のときには世話をしたり、さらに、未成年の子がいれば協力して子を育てることが義務として規定されている。「健やかなるときも、病めるときも……」という謳い文句は儀礼でも社交辞令でもなく、法的な義務なのである。とはいえ強制することはできず、あくまでも夫婦間の自由意志が尊重される。たとえばお互いの納得のもとで別居生活を送ること(単身赴任など)は認められている。
「法律婚」の夫婦は、二人が持っているお金などの財産を必要な生活費(食費、衣服代、住居費、光熱費、教育費、医療費など)のために分けあって使うことになっている。夫婦間の収入差にあわせて費用を分担する義務があり、たとえ別居していても法律上の夫婦である限りは生活費を分担する。 そして結婚後に築いた財産は「二人のもの」になる。これについても強制力はなく、分担の割合はお互いが同意の上であれば10:0の割合でもいいし、収入格差があっても半分ずつという形にもできる。
というわけで、「法律婚」は、精神的なつながりだけでなく、夫婦として社会生活を営む上でのさまざまな義務を負うことを指す。実際の所はそれが「努力義務」であったとしても、法律というルールのなかで、お互いがしっかり話しあって自分たちらしい夫婦や家族の関係を決めていく必要があることはいうまでもない。さらには、そのルールに「男女の差別はない」ということも忘れないでおこう。
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