ひとりの男性が同時に二人以上の女性を妻とする婚姻形態。日本では民法732条で配偶者が重ねて婚姻すること(重婚)は禁止されている。しかし歴史を遡ると江戸時代には、男性が配偶者以外の女性を妾とすることがあり、上流階級の男性は当たり前のことだった。明治時代初期にも、妻と妾を二親等に扱うなど、一夫多妻制度が続いた。福沢諭吉を始めとする脱亜入欧の考えの浸透により、刑法上の妾が禁止され、民法も改正された。
現在は、民法の「婚姻」の成立要件がないため正式な夫婦とは認められないものの、当事者の意識や生活実態において事実上夫婦同然の生活をする男女関係は存在する。また、本妻とは「法律婚」をしつつ、養女として籍を同一にすることで事実上夫婦同然の生活を送っている、などいくつかのケースがある。
なお、海外ではイスラム教徒が多い西アフリカで法的に認められており、これは宗教も要因のひとつだと推察される。
20世紀後半に入って、制度としての一夫多妻制ではなく、「生き方」として、恋愛する相手をひとりに定めず、複数の相手と同時並行してつきあう恋愛スタイル「ポリアモリー」が注目されている。この複数の相手とは、異性の場合もあれば同性の場合もある。単なる「不倫」、「ダブル不倫」と異なるのは、お互いが相手の複数恋愛を認め合う関係であること。恋愛や性愛を倫理的に捉えると、一対一の関係を前提とし、それ以外は「不貞」、「不純」と捉えることが一般的であろう。一方で、「ひとりの人間を一生愛し続けること」の難しさや「恋愛関係にあるからといって個人の欲望や思考を強制すること(我慢させること)」が現実的ではないと素直に捉えることもできる。私たちの心が不変ではないことを認め、個人を尊重しながら互いの幸福を追求した結果の関係とすれば、倫理的な問題を超えて、自由意志として尊重、許容すべき関係と考えられる。
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