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HOME SPECIAL SUPER FLAT LIFE 導かれた、知らなかった世界。同性婚合法の国で叶えた、フラットな幸せ[結婚の先輩に聞け!Vol.04]
導かれた、知らなかった世界。同性婚合法の国で叶えた、フラットな幸せ[結婚の先輩に聞け!Vol.04]

VOL.5 導かれた、知らなかった世界。同性婚合法の国で叶えた、フラットな幸せ[結婚の先輩に聞け!Vol.04]

時代やライフスタイルが刻々と変化するなか、結婚のカタチもそれに合わせて多様化している。そのなかには、正式な結婚制度ではなく自ら新しいスタイルを確立している人もいて、それは家族であることと何ら変わりがないように思える。 東京でずっと生きていたら得られなかったかもしれない、まるで別の人生。みっつんさんは恋人の転勤にともない、「ただ一緒にいるために」同性婚が合法の国へと居住地を変更して結婚。自分自身は何も変わっていないのに、国や制度や文化、環境が違うだけで得られる幸せがあると初めて知った。自分がマイノリティであることを忘れさせてくれるような世界がある……。導かれるままに知った新しいフラットな環境は、みっつんさんに心穏やかな幸せな日々を歩ませてくれている。

みっつんさんは現在パートナーのリカさんと、ひとりのこどもと共にスウェーデン北部で暮らしている。2007年に仕事で東京で暮らしていたリカさんと出会い、交際を始めたみっつんさん。3年ほど経った頃、リカさんのロンドン赴任が決まったのだという。

「リカが『一緒にロンドン行く?』と聞いてくれて『いいよ』と答えました。事実上のプロポーズのようなものでした」

その際、事実婚の選択もあったが、ビザなどの問題もあり結婚するという選択肢を選んだ。ふたりにとって、ごく自然な流れだった。

他の大多数の人と同じように“望んだこともなかった”しあわせの形

幸せなことに、パートナーであるリカさんの母国も、そして新天地のイギリスも、同性婚が法律で認められている。みっつんさんは導かれるように、スウェーデンの法の下で同性ながらも法律婚をしたのだ。東京で生活している時には想像もしなかった、変化の始まりだった。

ロンドン、そしてスウェーデンでの自分

東京からロンドンへ。ある程度英語が喋れたとはいえ、環境の変化はみっつんさんのライフスタイルも大きく変えた。

だが、最大の変化は「マイノリティへの偏見を減らそうとする社会」に生きるようになったことだったのだという。

「ゲイであることを忘れる生活になったということは大きかったですね。日本に住んでた時とは全然違う人生を歩んでいる感じがするんです」とみっつんさん。

日本での生活は、性的指向のことを隠し、不便や不安を抱えて生きていく日々だったことだろう。だがそれが当たり前の世の中で育ったため、何に不安を抱えているかわかってもいなかった。

ネガティブなことや自分の生きづらさについて考えないのが、生きていく術だったのだという。

「自分は苦しかったんだ、ということに気付いたのはロンドンに来たから。もちろんマイノリティではあるけれど、ゲイは珍しいことじゃない。『ゲイでもいいんだよ』とかけてもらえる声、そしてそれが法律でも守られているということはこんなにも自分を肯定してくれるんだ、と思いました」

こどもを持つという、カップルとしてごく自然な選択

みっつんさんカップルにとって、結婚よりも大きな意味を持つことになったのが「こどもを持つ」ということだ。これも自然な流れだったという。

「僕自身は甥や姪がいたので、こどもは好きでした。夫にはその背景がなかったのですが、2011年に初めて姪っ子が生まれて、初めてこどもを意識したんですよね。『みっつんどう思う?』『いやいや、ないでしょ~(笑)』というやりとりが始まりでした。その時は冗談でもあったのですが、いざ口に出してみると気になってきてしまって……。たくさん調べて、可能性あるんだと気付いて、現実的に動き出した感じですね」

新婚カップルが友人から「お子さんは?」と聞かれることは日本でもあるだろう。それと同じように、ロンドンではゲイカップルにもその質問をされることがある種“自然”だった。

「こどもが欲しい気持ちはあるものの、自分自身がまだ親になる自信なんてないし、うちの場合はゲイとして親になるってなかなか想像つかなくって不安があったんです」

こどもが欲しいという想いがありつつも、自分が親になるということを不安に思うみっつんさんに、友人の言葉が背中を押してくれたのだそう。

「誰だって、親になるのは不安。私だってなかったし。誰だって初めての経験なんだからそれはゲイでもストレートでも同じじゃない?こどもに『親のなり方』を教えてもらうものだよ」

心がふっと軽くなったみっつんさんカップルは第一歩を踏み始めることができたのだった。

「僕自身、今まで“ゲイであること”を特別に意識しすぎていたんだと思います。みんなと違う、普通とは違う……。でも、マイノリティではあるけど結構いる。普通じゃん、と思えたことでいろんなことが自然とフラットになっていったんです。日本にいる頃は、こどものことなんて考えたこともなかった。20代前半の頃は『自分はこどもを持たない人生だろうな、生涯一緒にいるパートナーくらいは出会えたらいいな』と思っていました。その頃からしてみたら、考えられないくらいの変化ですよね」

たかが制度、されど制度

周囲のフラットな視線と言動。マイノリティでも守られる社会制度。その両方と触れてみっつんさんもどんどんフラットになっていった。

スウェーデンの同性カップルには「法律婚」と「事実婚」という公的な2つの制度が選択肢としてある。その後どこに転勤になってもスムーズにという点の便利さから、彼らは法律婚を選んだ。

「『結婚』に対しては実は気持ちもそこまで大きくなくて、あくまでも一緒に暮らすための選択肢……。過程の一部でしかなかったんですよね。ぶっちゃけいつでも離婚できる……というのもあります。離婚率も高いですし、離婚しても生きていける世の中ですし。ただこどもに関しては、法律婚だからスムーズにいくことが多いのは事実です。だからこどもをもった現在では、僕らの人生にとって重要な制度であることは間違いないな、とは考えています」

ただの社会制度ではあるものの、どんな生活を送るかによってはうまく活用できる便利なシステムでもある。どんな制度であれ、自分の人生をバックアップしてくれる制度であってほしい。そしてそれがどんな少数派の人々にも適用されるのが理想だ。

「同性婚」という言葉はあまりヨーロッパでは使われない。「結婚の自由」「結婚の平等化」という言葉がよく使われるのだそう。日本ではマイノリティに関するトピックはそれぞれが別の課題になりがち。それゆえ、あくまで当事者のみの問題として片づけられ、なかなか社会現象化しないのが現状だ。

ヨーロッパでは、細分化されたトピックでなく、その根底にある「基本的人権の尊重」が議論のポイントとして重要視されている。

「スウェーデンではフェミニズムの活動も多いので、LGBTQ+の問題もジェンダーの平等や公平性の問題のひとつとして、お互いのコミュニティがサポートしあっています。僕が日本を離れた2011年は『LGBTQ+』という言葉も日本ではまだそんなに聞かなかったように記憶しています」

ロンドンのレインボーパレードは、さながら国民の休日のようだ。LGBTQ+以外の人も皆が笑顔で、お祭りを楽しんでいる。いろんなカフェやレストランから「レインボーデー限定メニュー」が提供されたり、公共バスがレインボーカラーに染まったりする。だが、そんなフラットな現状は、積み重ねてきた歴史の上に成り立っている。

「イギリスもスウェーデンも元々そういう国だったわけではないし、何しろ宗教上禁じられていた歴史がありますよね。外国だからフラットなんだよ!という話ではないはずなんです。だから日本も、少しずつ変わっていくんだと思います。そう思って希望を持ちつつ発信活動をしています」

日本はまだ、スタートラインに立ったばかり

ブログやSNS、YouTubeなどでご自身やご家族のことを発信しているみっつんさん。

「僕はまさに、当事者が楽しそうにしている姿や堂々としている言葉に励まされた瞬間がたくさんありました。だから他の人にとっての僕らはそうありたいと思っているんです。特に日本にいたら知り得ない世界をもっと知ってほしい。だから発信は日本語にこだわっていますね。最近は僕らに限らず、発信する人たちもよく目にしますし、パートナーシップ制度のこともよくニュースになっていますよね。いま、日本は変わり始めているんだと思います」

と、日本のLGBTQ+や同性婚シーンへの想いを語るみっつんさん。

「でもその一方で、『あ、もう認められているんだな』と思われてしまっている現状は危惧していますね。僕らはスウェーデンの法律の下で結婚していますが、裏を返せば、日本では結婚できていないことになるんです。日本はまだまだ、同性カップルは法的なパートナーになれないことで不便を被っていることが多々あります。何十年も連れ添ったパートナーの最期の別れに立ち会えないなんてことが、普通にあるんです。法律ひとつで左右されてしまうことがたくさんあるという事実は、意外と知られていないかもしれません」

確かに、語られることは多いものの、「パートナーシップ制度」として条例で定められている自治体は東京の渋谷区など数少ない。他の自治体で制度と呼ばれているものは「要綱」……つまり法的強制力がないものがほとんどだ。同性婚訴訟の判決もまだまだバラツキがあり、議会の議論のテーブルにすら乗せられない例も多い。

「こういったトピックや動きに、少しでも関心を寄せてもらえたら、と思います。制度化への議論が『認知度が低い』『市民の声が少ない』と却下されてしまわないように、協力してほしい。関心を持つだけでもいい。アンテナを1ミリでもいいから伸ばして正しい情報や現状をキャッチしてほしいなと思います」

法律婚でも、事実婚でも、同性婚でも、すべての人に平等に幸せになる選択肢を。

平等化が進んだヨーロッパへ導かれたことで幸せを得たみっつんさんは、その法的な選択肢がたくさんのマイノリティを幸せにしてくれることを身をもって体感している。

みっつん

1980年名古屋市生まれ。スウェーデン・ルレオ在住。

2008年に東京でスウェーデン人の現在の夫と出会い、’11年にスウェーデンの法律の下、同性結婚。同年、東京からロンドンへ移住。2016年サロガシー(代理母出産)により男児を授かったのを機に、夫の出身地であるルレオに移住。2015年開設したブログ「ふたりぱぱ」が話題になり2019年に書籍化。2020年春から本格的に始めたYouTubeチャンネル「ふたりぱぱ」も大きな反響を呼び、チャンネル登録者数は約11万人(2021年3月現在)。LGBTQや育児というテーマを軸に、スウェーデンの文化と共に発信を続けている。