ギフト選びに悩んだときに、テーマを設定する、という方法は結構突破口を開いてくれることがある。テーマと言ってもそんな難しいことではなく、たとえば夏なら「和の涼」みたいに設定して、涼しさを贈れるようなものを組み合わせる、のようなやり方。 そこにちょっとした捻りやこだわりをプラスして……「お!」と思われるギフトの完成。 そんなギフトこそ、何もないときに突然渡したりしたいもの。
文:岡野ぴんこ
夏真っ盛りな時期に、“和の涼”を贈る。その時に描くイメージは田舎の祖父母の日本家屋、
都会とは違う涼しい夕暮れの風がひぐらしの鳴き声と共に縁側に流れ込んでくる日暮れ時。
蚊取り線香のほのかな香りが鼻をくすぐり、早風呂でさっぱりした体に気だるく心地よい眠気がやってくる……。
まあその妄想まで伝わるか、は別としてなんとなくそんな雰囲気を感じられるようなギフトセット。
まずはあの心地よい夕暮れの風、を演出してくれるうちわだ。
栗川商店の来民渋うちわ。熊本は鹿本町来民で作られる渋うちわは、柿渋を和紙に塗ることにより和紙を丈夫にし、長持ちさせ、さらには防虫効果の役目を果たすそう。

熊本の来民でしか作られない渋うちわ、その歴史を遡ると慶長五年……!
四国の修行僧から一宿のお礼にと、その技術が伝わった。来民という地名にあやかり、“民が来る・人が寄る”という意味で縁起物としても扱われてきたのだとか。
今もその伝統技術を使って作られるこの品、涼をとるにはもちろん研ぎ澄まされた技術とデザインが詰まったその形はインテリアとしても様になる。
そして職人が作るうちわはひと仰ぎで送られる風の量に違いを感じる。これは本当。
木のしなり具合と和紙の厚みの加減なのか、感動するレベル。ぜひ体感してみてほしい。

そしてそこに組み合わせるのは夏になるとなんとなく使いたくなる、手拭い。
昔から使われている手拭いには日本の高温多湿な夏にぴったりなさまざまなメリットがあり、実は最近また注目されているのだ。
手拭いは平織という薄く丈夫な織り方で作られている布なので速乾性に優れ、カビや雑菌の繁殖を防いでくれる。また端が切りっぱなしなのでそこから水が抜けやすく衛生的に保てる。
汗を拭く以外にも濡らして首に巻いたり、頭に被ったり(キャップと合わせて、最近見かけるおしゃれアウトドア界隈のようなスタイリングで……!)さまざまな用途で活躍してくれるのだ。
そんな手拭いは“江戸の粋”を意識して、150年以上の歴史がある日本橋の戸田屋商店で。



梨園染という手法で、今も職人の手でこだわり抜いて染めた手拭いがずらりと並んでいる。
その中から、江戸時代に流行した判じ絵の1つ、「鎌」「輪っか」「ぬ」で「構わぬ」という江戸っ子の粋な心意気を表す図柄になるという遊び心のある図柄をチョイス。
「小さなことは気にしない」「お構いなし」という、きっぷの良さや大胆さを表現した判じ絵なのだ。これこそ大人の洒落っ気である。

ちょっといつもとは違う贈り物を、なんていう時はこんなコンセプトありきの組み合わせギフトも良い。
縁側に吹き抜ける風、蚊取り線香の香り……なんとなく誰でもセンチメンタルな涼を感じられるような物語を贈る、うだるような暑さにそろそろ憔悴気味……なんていう時期に粋を贈ろう。