「完全菜食主義は、みんなで食卓を囲むため。」― 8ablishの想いに触れる。

動物性素材を一切使わない、完全菜食＝ヴィーガンのカフェレストラン「8ablish」。その根幹にあるのは「みんなで食卓を囲める食事」という考え。性別も年代も国籍も問わず、8ablishはあらゆる人を快く迎え入れてくれる。

me TIME NAVIGATOR 表参道・原宿編　加藤菜緒さんが挙げてくれたおすすめのカフェは、南青山五丁目交差点の一角、青山骨董通りのすぐ裏にある「Restaurant 8ablish（エイタブリッシュ）」。海外からの来客との会食にも使うとの彼女の推薦だが、その秘密をお店に確かめに行ってみた。

表参道らしいモノトーンのシックな外観は、一見フレンチかイタリアンレストランのように思えるが、そうではない。エイタブリッシュは動物由来の食材を一切使わない、「ヴィーガン」を謳うカフェレストランだ。

ビル脇の外階段で2階へ上がると、モダンな空間が待っている。全面ガラス張りの窓からは、気持ちのいい日差しが燦々と差し込み、随所に取り入れられた緑が映える。活気溢れる開放的なオープンキッチンでは、忙しそうに、そして楽しそうに料理をするスタッフたちの姿。

そのキッチンで作られる全てが、植物由来の食材のみで作る「ヴィーガン料理」だ。オープンから今年で4年目を迎えたエイタブリッシュ。前身であるヴィーガンカフェ「Pure Cafe」は、同じく表参道で約12年も愛された名店だ。当時の客も、よく訪れるという。まだヴィーガンがあまり知られていなかったころから、一途にその考えを貫いてきたPure Cafe、そしてエイタブリッシュ。なぜなのか？

「もちろん、健康のために野菜を食べようという考えもありました。でも、ヴィーガンに着目した一番の理由は、もっとも多くの人と一緒に食卓を囲むことができる食事だから」。

そう話してくれたのは、スタッフの板原さん。世界には、アレルギーはもちろん、国籍や宗教などの理由から、特定の動物性食材を食べられない人がいる。そんな人たちとも、菜食なら平等に食事を楽しむことができる、というわけだ。「ただ植物性食材だけを使うのではなく、動物性食材を食べる人でも満足できるヴィーガン料理があったら、みんなで同じ『おいしい』を共有できて、一緒にハッピーになれると思うんです」。

その想いはきちんと伝わっているようだ。その証拠に、エイタブリッシュに訪れる客は、完全菜食に強くこだわる人ばかりではない。性別、年代、国籍問わず、さまざまな層の客に親しまれている。「日本人男性のおひとり様でいっぱいになる日もあるんですよ」、という言葉には少し驚いた。特に平日の客の大半は、周辺のオフィスやショップで働く人たち。しっかりとボリュームのあるヘルシーなランチ、夜には豊富なビオ・オーガニックワインとコース料理が楽しめる「おいしい食事を楽しむ場所」として、選択肢のひとつになっているのだ。

あらゆる人が訪れるエイタブリッシュだが、ヴィーガンを広めるために一生懸命何かに取り組んだということはないのだそう。「人づてに自然と広まって行きました。お客さま同士の紹介で来られる方も多いですし、一度来られて『ヴィーガンって味も量も物足りないものだと思っていたけど、概念が変わった』と、気に入ってまた来てくださる方も多いです」。

ランチの看板メニューの「スブラキ」は、肉の代わりにテンペと豆腐で作るギリシャの串焼き料理。日替わりのポタージュも付き、食べ応えがあるのも人気の理由だ。

「動物性食材を使っているか否か」だけでなく、ヘルシーなのに食べ応えがあるおいしい料理のジャンル、として認知が広がりつつある。

特にヴィーガンの人が一緒でなかったとしても、「今日はイタリアンにする？ それともヴィーガンにする？」 そんな感覚で、食事のひとつとして意識せずヴィーガンを楽しんでほしいと話す。もし少し勇気が必要なら、オリジナルのマフィンやクッキーなどテイクアウトできる焼き菓子から始めてみてもいいかもしれない。

「完全菜食」に絞ることで、「できるだけ多くの人と食卓を囲む」ことができるエイタブリッシュ。この店は、どんな人も快く迎えてくれる。おいしくヘルシーな食事が楽しめるカフェレストランとして、気軽に立ち寄ってみてほしい。

取材・文 : RIN