あかりと東京の倦怠期がやってきた。喧騒が怖くなった時は違う高さから東京を見てみる。バスに揺られて、知らない道を、新しいスピードで進む。これまでと違った“好き”を発見できる、とっておきのバスの旅。
“上京して4ヶ月。どうしても慣れないことがある。
渋谷。渋谷の人混み。怖いとすら思うからあそこには近寄れない。足早に歩く人の波とか、目的がわからない声かけとか、とにかく飲み込まれていきそうで未だにあの人混みに突入していく勇気はわかない・・・
上京したばかりの高揚感も落ち着いてきて、でもまだ渋谷は怖いし私と東京の倦怠期が来た。
人混みを避けてあのエリアを楽しめるなら。違う角度から渋谷を見て、面白がれるそんな目線があるなら。きっとそれは本当に私の知らない新しい東京の発見になるんだと思う。
目線の高さが変わると街は急にその色や空気を変えてこちらに微笑んでくるから。”

バス。東京の新しい遊び方はバスの有効活用、これは断言したい。
まだまだ知らない便利な路線や、まさに“かゆいところに手が届く”ような絶妙なルートを巡ってくれるバスがある。プロ東京人たちからそう聞いて、あかりは試さずにはいられなくなった。その東京の見方を。
その1つがハチ公バス。渋谷、青山、恵比寿、代官山などのエリアを“裏”をかくようなルートで回ってくれる知られざる便利バス路線。
買い物や、食事、カフェ巡りにぴったりなエリア。まさに「あの駅からも、この駅からもちょっと歩くよね・・・」というかゆいところに手が届くバスルート。
渋谷の怖い人混みも通らずバス乗り場に行けるなんて、まさに私にうってつけ!とあかりは思った。

バスに乗るとすぐ、東京をバスで巡るのはとても新鮮で旅気分になれる日常に潜む贅沢な逃避行だ、とあかりは気付いた。
いつもより少し高い目線で。歩くよりは早く、タクシーよりはゆっくり進んでいく。
ハチ公バスのような路線は、その地域に根付いている人が買い物袋からネギを出して乗っていたりする。
時間帯にもよるがこの路線にはものすごく急いでいる人、は乗っていない気がする。それがまた普段のスピード感を崩してくれて心地よい。
のんびり揺られながら。小さなハチ公バスで進んでいく。
恵比寿ガーデンプレイス。バスでのんびり来ると、その道すがらに気になるお店が見えたりして“自分のお気に入りの東京を探す”に一役買ってくれる。

目線とスピードが変わるだけで街はこんなに違って見えるんだ・・・。
王道からじゃなく自分のペースで自分が心地よいと思える目線から東京を“自分の街”にしていく。細い細い路地の途中に、しっくりくる古着屋があるかもしれない。窓から差し込む夕日に、故郷を思い出してまた明日も頑張れるかもしれない。
予定なんて決めず、気の赴くままに。
降りたいところで降りて、また乗る。
ともするとそのスピード感に気づかずに飲み込まれていると気づく。
バスで旅した今日は、東京も自分のスピードで歩いて大丈夫なんだよってことをあかりに思い出させてくれた。倦怠期終了。
また明日からは自分のスピードで歩いていく。

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