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おいしいジビエがつなぐ未来。命をいただく過程を感じる「罠ブラザーズ」体験レポート

おいしいジビエがつなぐ未来。命をいただく過程を感じる「罠ブラザーズ」体験レポート

罠を保有することで狩猟を疑似体験し、獲物を食肉として手にすることができる「罠ブラザーズ」。食べることは、命を奪うこと。言葉にすると残酷に感じるが、食べなければ生きていけないのが現実である。1匹のオス鹿の命が食べ物になり、実際に食べるまでの過程を体験した。

以前紹介した、狩猟の追体験ができる「罠ブラザーズ」。いわゆるジビエ肉を入手できるサービスだが、参加者はその時やその場でしか味わえない体験を楽しむことを軸とした「トキ消費」を楽しめるだけでなく、有害鳥獣の有効活用に貢献している。現在、日本における野生動物による農作物被害は約158億円にものぼり、農林水産業、そして生態系にかかわる被害が深刻化している。(農水省資料より)

罠ブラザーズの拠点である長野県では、鹿の被害が多く、害獣駆除として仕留められたれ鹿は食べられることはなく、そのまま埋葬されていたという。「罠ブラザーズ」はこの鹿を獲るための罠を購入し、狩猟の一部始終をFaceboo上のコミュニティグループを通じて写真や動画で届けてもらえるサービスだ。また、画面越しに最期を見届けた獲物が、食用肉となって自宅に届く。まさに命が食べ物に変わる過程を目撃し、その後食事としていただくまでの工程をまるっと体験できるのだ。

5月に罠ブラザーズにて購入した罠がどうなったのかをレポートしよう。

誰かの犠牲のうえで生きていることを考えるきっかけに

生きていくうえで避けては通れない、食物連鎖。我々もその連鎖のなかで毎日3食、肉や魚、野菜を食べて生きている。しかし、現代ではそれら生き物の命を“いただいている”という感覚がどうしても薄れてしまっている。なぜなら、それら生き物の命を奪う瞬間をほとんどの人が経験したことがないから。スーパーにはあらかじめちょうどいいサイズに切られた肉や魚が並んでいるし、野菜はきれいに洗った状態で陳列されている。

今回の参加者たちの罠の分布図。

罠の購入者は、Facebook上のコミュニティグループに招待され、自分が購入した罠を仕掛ける様子や、狩猟の一部始終を写真や動画で届けてもらえる。そこで罠が設置されたという報告を受けたら狩猟の擬似体験がスタートだ。上図内の罠⑥、「まり奈ブラザー」と呼ばれるのが、私たち編集部が購入したものに該当する。同時期に違う場所で、さまざまな人たちが罠の様子を遠隔で楽しんでいるのが可視化されており、ワクワクする。

この投稿のように、なかなか罠に掛からない場合は場所を移動することもある。

季節はちょうど春から夏にかけての時期。猟師の手島さんの目線で撮影した映像や写真からは罠の様子だけでなく、長野の鮮やかな新緑やのどかな景色も楽しむことができる。肝心の罠はというと自分の罠があるエリアだけでなく、他の購入者の罠があるエリアの情報も同じグループ上で発信されるため、「自分の罠がどうなったか」ということだけでなく、山全体の鹿の動きがなんとなく見えてくるのが面白い。手島さんは毎日山に入り、動物の足跡などをこまめにチェックし、それに合わせて罠の位置を調節してくれているようだ。

命が尽きる瞬間を見届けて

編集部が購入した罠⑥は、設置から1日で若いオスの鹿がかかった。通常オス鹿はパワーがあるため捕獲の際に暴れてしまうそうだが、作動したバネが木に偶然巻きついたことで上の写真のように身動きが取れなくなっていたそうだ。そして、この写真からもわかるように、鹿はとても上手に自然に紛れている。(初めこの写真を見た時には鹿が捕獲されていると気付かなかった……!)山の中で鹿を見つけて獲ること自体、決して簡単ではないそうなので、たった1日で獲物がかかるのはラッキーだったといえるだろう。


その後、罠にかかった獲物は食用になるべく、とどめを刺されることになる。かなり生々しいシーンだが、罠にかかったオス鹿の心臓を目掛けて止め刺しをする動画を見ることができる。命が尽きるクライマックスだ。鹿はしばらくもがいたあと、横向きになり動かなくなる。わずか数十秒の出来事。動画ではあるものの、自分の目で目の当たりにしていたたまれない気持ちが湧き上がるとともに、これによって自分たちが生かされていることを実感した。正直、これまで生きてきて自分が食物連鎖のなかにいることを実感したことはなかった。しかし、普段気づいていないだけで、我々が食べているのはほとんどが「生きたもの」である。

このように鹿が罠にかかるところや気絶させて殺すところまで“リアル”を見せてくれる。これを見るか見ないかは参加者次第。主催者である川端さんもこの活動を通して「命の授業をするつもりはない」といっているように、すべての判断を参加者に委ねてくれる点も押し付けがましくなくていい。

(左上から)ローストベニソン、はつ、ハンバーグ、ソーセージ、生肉ブロック、リエット、焼肉。

オス鹿が罠にかかったと報告された数週間後、鹿肉が冷凍で届いた。Facebookのレポートでは、罠にかかった鹿を食肉処理場で解体作業をするところまでは見られなかったが、罠の購入者は彼らの拠点に遊びにいくことも可能なのだそう。希望者は本当の最後まで見届けることができるのだ。もちろんこれをさばくのも、猟師の手島さんが中心となり行なっている。部位ごとに処理したものを罠ブラザーズの運営メンバーである料理人のボブさんが調理をし、一部、ハンバーグなどに加工をしてくれている。正直ジビエ肉に興味はあるものの、「肉が届いたところでどう調理したらいいのかわからない」という都会人には嬉しいサービスだ。

鹿もも肉の赤みの美しさに注目。じっくりと炭火で焼いていく。
ある程度焼けたら、小さくカットしてさらに焼いていく。ちょっとの焦げ目はご愛敬。

今回届いた鹿肉は炭火BBQにしていただいた。大きな鹿の生肉ブロックは、BBQでは主役のような存在。弱火でゆっくりじっくり肉塊を焼き上げていくと、1時間ほどでよい焼き色に。そこにナイフを通して小さく切り分けていく。驚いたのは脂身がほとんどなく赤身肉ながら、すごく柔らかいこと。こんなにも肉本来のおいしさを味わえる料理はそうないだろう。ジビエ肉はよく「くさい」「かたい」といわれることがあるが、この日そんな言葉を聞くことはなく、あっという間になくなってしまった。コミュニティグループ内では、他の参加者たちの調理された鹿肉の写真がアップされており、さまざまな食べ方を見ることができた。


日本でも長い歴史を持つジビエの食文化は、贅沢な趣味や食糧確保など時代ごとに異なる需要があった。そして、いまの時代ジビエを食べることは、持続可能な食文化という側面が大きいだろう。命の尊さを実感しながら、廃棄されていた有害鳥獣の命を有効活用することで、ささやかながらその先の未来の食を考えさせられる。「罠ブラザーズ」のおいしくてフレッシュなジビエ肉が届くサービスは、食べることに深く感謝の念を抱かせてくれる未来志向の活動だった。

取材協力:罠ブラザーズ

罠ブラザーズ
https://wana-bros.jp
Harumari編集部が参加した前回の「罠ブラザーズ 冬」に続き、9/15まで先着100名が参加できる「罠ブラザーズ 夏」の会員を募集中。詳しくはWEBサイトをチェック。