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知ることが、こんなに楽しいとは。高輪で出会う「ちいさな地球」

知ることが、こんなに楽しいとは。高輪で出会う「ちいさな地球」

DATE:
2026.07.31

高輪ゲートウェイ駅と聞いても、まだ実際に足を運んだことがない人は多いかもしれない。開放的な駅舎が話題になったこの場所に、新しい街「TAKANAWA GATEWAY CITY」が誕生した。駅直結の街区には、ショップや飲食店だけでなく、これからの都市の暮らし方を考えるための実験的な場所も生まれている。そのひとつが、MIMUREの一角にある「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」だ。高輪の新しい街に生まれたファームラボを訪ねた。

高輪の新しい街で見つけた「ちいさな地球」

湿気や突然の雨、厳しい暑さが続く東京の夏。「駅直結」という言葉のありがたさを、これほど実感する季節もない。うんざりするような天気の日でも、改札から屋根のある通路を進み、傘をささずに目的地へたどり着ける。

向かったのは、「TAKANAWA GATEWAY CITY」内のニュウマン高輪にある「MIMURE」。食や自然、生産者とのつながりを体感できる店舗が集まるエリアだ。

その一角にある「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」は、東京にいながら自然の循環を肌で感じ、体験できるファームラボだ。ラボの中では、「アクアポニックス」と呼ばれる循環型農業が昼夜問わず稼働。一見すると実験施設のようだが、自然界で起きている水と栄養の循環を、小さな規模で再現した仕組みなのだという。

新しいショップや飲食店が並ぶ都市空間の中に、植物と魚による「ちいさな地球」がある。その意外な取り合わせが面白い。

「へぇ」が止まらないファームラボ

「アクアポニックス」は二層になっており、上部の水耕栽培では季節のハーブやエディブルフラワーを育て、下部の水槽ではティラピアやホンモロコ、チョウザメなどの淡水魚が忙しなく泳いでいる(取材当時)。

チョウザメといえば、キャビアでおなじみだ。ティラピアやホンモロコは同じ建物内の飲食店へ卸され、料理として提供されることもあるという。目の前で泳いでいる魚が、この街の食につながっている。単なる展示ではないと分かった瞬間、ラボの景色が急に身近なものに感じられた。

では、ここにある植物と魚は、どのように循環しているのだろう。

魚の排泄物をバクテリアが分解し、その過程で生まれた栄養が植物を育てる。そして植物によって浄化された水が、再び魚たちの水槽へ戻っていく。これが「ちいさな地球」と呼ばれるエコシステムなのだが、仕組みだけを文字や図で見ても、すぐには実感しにくい。しかし実際に植物が育ち、魚が泳いでいる姿を目の前にすると、その循環が急に現実のものとして見えてくる。

「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」では、植物の香りや水の音、魚の動きを追っているうちに、「この魚も食べるの?」「この花も食用なの?」と、次々に質問したくなる。ここでは説明を受ける前から、自然と好奇心が動き始めるのだ。

大人になってから出会う、とうもろこしの知らない一面

「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」が一般開放するのは主に土日と祝日を中心とした、ワークショップの開催日。定期的に行われるさまざまな体験がこの場所最大の売りだ。この日は京都から運ばれてきた140株の『舞コーン』が所狭しと置かれ、ラボはとうもろこし畑さながら。

今回体験するのは、収穫に適した期間がわずか5日間で、メロンなどの甘い果実にも劣らない、糖度が最高22度にもなるという希少な舞コーンだ。舞コーンを育てるロックファームのスタッフが、作物の特徴や育て方をミニクイズを交えて紹介すると、子どもたちも保護者も次第に話へ引き込まれていく。収穫前に完熟した舞コーンを試食すると、今度は自分でもおいしい一本を探してみたくなった。

採る際の注意点や、おいしいとうもろこしの見分け方を教わったら、いよいよ収穫へ。子どもたちに混じり、ヒゲがしっかり茶色くなり、実がふっくらとした一本を探す。

とうもろこしの葉は、想像していたよりも硬く、少し鋭い。小さな実でも甘いのだろうか。スーパーや道の駅で、すでに収穫されたとうもろこしを見比べるときとは違い、一本の実をじっくり観察する時間が自然と長くなる。

2本を収穫すると、「まずは小さい方を食べてみてください」と促された。半信半疑でかじると、水分は豊富だが、甘さはまだ控えめで、青々とした香りが残っている。収穫前に試食した完熟の舞コーンとは、味わいが明らかに違った。

「甘さの違いや食べ頃の大切さを知ってほしい」という農家の言葉を聞き、なるほど、この比較まで含めて収穫体験なのだと腑に落ちた。

見て、触れて、味わううちに、自分の中に疑問が生まれてくる。目の前の食材だけでなく、その背景にいる生産者や、食べ頃を見極める知恵まで、少しずつ見えるようになる。ここは、知識を一方的に教わるのではなく、自分から知りたくなる場所なのだ。

これまでにも、アクアポニックスで育てたハーブやエディブルフラワーを使ったサラダブーケ作り、梅シロップの仕込みなど、季節に合わせたワークショップが開かれてきた。内容は変わっても共通するのは、食材を完成品として受け取るだけでなく、手を動かしながらその背景に触れられることだ。

※過去開催された「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」でのさまざまなワークショップの様子

高輪の街で、知りたくなる時間に出会う

収穫体験を終えたからといって、とうもろこしに詳しくなったわけではない。それでも次に店頭で手に取るときは、ヒゲの色や実の太さを、これまでより少し丁寧に見るだろう。食材がどのように育ち、いつ食べ頃を迎えるのか。一度でもその背景に触れると、いつもの買い物や食事の見え方が少し変わる。

新しく生まれた高輪の街には、買い物や食事だけではない過ごし方が少しずつ増えている。そのひとつが、このLABだ。何かを一方的に教えられるのではなく、自分から知りたくなる。そんな時間が、この街にはよく似合う。

AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab
公式Instagram:https://www.instagram.com/botalab0328/?hl=ja