「翻訳」をテーマにした21_21 DESIGN SIGHT企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から会期が変更され、2020年10月16日からの開催となった。翻訳という行為を「コミュニケーションのデザイン」と捉えるユニークな展覧会を、改めて紹介しよう。
翻訳というと、英語から日本語や、日本語から英語へなど、「言語を変換する」ことが、まず頭に浮かぶだろう。しかし、「トランスレーションズ展」で取り上げられるのは、単なる言語の変換ではない。
たとえば、手や表情を使って伝える手話や、感情を表すグラフィックレコーディング。青空を見上げたときの気持ちを言葉にするという行為自体も翻訳行為とみなすのだ。
このユニークな展示をディレクションしたのは、学際情報学研究者のドミニク・チェン。

日常では日本語、英語、フランス語を操るチェンだが、日々、言語を変換する中で注目したのは「わかりあえなさ」だったという。
『「翻訳」をわかりあえないはずの他者同士が意思疎通を図るためのプロセスと捉え(中略)「誤解」や「誤訳」によってコミュニケーションからこぼれ落ちる意味の面白さを実感できるような、「多種多様な翻訳の技法のワンダーランド」をつくろうとしました』(ドミニク・チェン)
こう発言するチェンの言う通り、会場には「翻訳」を多様な解釈で捉えた作品が並べられる。

島影圭佑「OTON GLASS」は、視覚障害を持つ人のかわりに文字を読み上げる装置だ。

長谷川愛のプロジェクト「Human X Shark」では、“サメを性的に魅惑する香水”の制作を通して異種間コミュニケーションについて考察した。

また、発酵メディア研究・Ferment Media Researchは、ぬか床の中でうごめく微生物たちの発酵具合を音声に変換するロボット「NukaBot v3」を展示。この研究はチェン本人が手掛けている。

他にも視覚障害者やろう者と協働開発した本多達也「Ontenna(オンテナ)」や、手話の世界観を鑑賞者とともに探っていく和田夏実の「Visual Creole」なども見どころだ。

「わかりあえない」という気持ちは、誰もが経験したことのある感情であるはず。「トランスレーションズ展」では、動物や植物、無機物など、あらゆるものを対象に意思疎通しようと試みる過程を表現しているが、その視点がまさに、生きる中での「わかりあえなさ」の解消・受容の一助となるかもしれない。
| エリア: | 東京 / 六本木 |
|---|---|
| 住所: | 〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7−6 東京ミッドタウン・ミッドタウンガーデン |
| 電話番号: | 03-3475-2121 |
| 営業時間: |
月曜日 10:00〜19:00 火曜日 10:00〜19:00 水曜日 10:00〜19:00 木曜日 10:00〜19:00 金曜日 10:00〜19:00 土曜日 10:00〜19:00 日曜日 10:00〜19:00 祝日 10:00〜19:00 |
| 定休日: | 火曜日(11月3日、2月23日は開館)、年末年始(12月26日 - 1月3日) |
| 公式WEB: | http://www.2121designsight.jp/program/translations/ |
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