HOME NEW TRENDS 駅徒歩0分。下町カルチャーがつまった“理想形”駅ビル「西日暮里スクランブル」
駅徒歩0分。下町カルチャーがつまった“理想形”駅ビル「西日暮里スクランブル」

駅徒歩0分。下町カルチャーがつまった“理想形”駅ビル「西日暮里スクランブル」

渋谷や丸の内を中心に大規模な再開発が進む東京だが、コロナによる生活様式の変化は、「商業施設」や「街のあり方」に大きなパラダイムシフトを起こした。人が集まる大型の街ではなく、地元にある街の魅力を発掘する。そんな動きが加速しそうだ。「西日暮里スクランブル」は、今ある街の個性を増幅させ、街をよりおもしろい場にする新たな拠点になりそうだ。

JR線をはじめ、いくつもの路線が交わる東京城北エリアの交通の拠点、西日暮里駅。とはいえ、西日暮里駅は乗り換えなどのために通過する人が多いという。周辺には小さな飲食店や個人商店が多く立ち並び、各線への乗り継ぎを急ぐワーカーや近くの有名進学校に通う学生たち、さらには諏訪神社への参拝客に地元住民まで、実にさまざまなキャラクターの人々が複雑に入り交じる。その風景はやや雑多だが、節々に生活感が表れどこか味わい深い。

西日暮里も、再開発により数年後には新たな街へ生まれ変わる計画が進められている街のひとつだ。そんな最中の昨年末、駅直結の古ビルに新たな商業施設「西日暮里スクランブル」がオープンした。仕掛け人は、谷根千エリアを中心にカフェ運営や建築設計などを手がける株式会社HAGI STUDIO である。

コンセプトは「まちを混ぜる」。この先街が新たに生まれ変わったとき、今あるカルチャーが色濃く根付きながらも、新しい要素を備えたより魅力ある地域であるために、人と街とを混ぜるハブになろうというのだ。乗り換え客、学生、参拝客、地元住民……。ただ駅を“利用”しているだけではけっして交わることのない彼ら同士、さらには彼らと西日暮里の街をつなぐ場所、それが西日暮里スクランブル。毛色の違う複雑な要素が入り組む街だからこそ、それらが交わった時に起きる化学反応は未知数といえるだろう。西日暮里スクランブルには、志を共にする6つの小さな商店が集まった。

SPICESH

たとえば、JR線の改札から最も近くに位置し、一見蕎麦屋のように暖簾をなびかせるのは、スパイスカレー店SPICESH(スパイセッシュ)。老若男女に愛されるカレーは、さまざまな人を集め・つなぐにはもってこいのキーアイテムだ。隣り合った客や目の前のスタッフとも自然と会話が弾むカウンタースタイルに、女性のひとり客でも気兼ねなく立ち寄れるようロゴや盛り付けにはカフェ風の要素も取り入れる。乗り換えの間や帰宅前の「サクッとカレー」で偶然出会った“お隣さん”との会話のなかから、何かいい刺激が得られるかもしれない。また、スタンプカードを3枚貯めるとフルカスタマイズカレーがオーダー可能。スタンプを集めながら通えば通うほど、誰かと交わるチャンスが増え、刺激もスパイスも“セッシュ”できるカレー店というわけだ。
(営業時間:火〜日 11:30〜22:00(L.O.21:30)/定休日:月曜日)

9種のスパイスをブレンドしたオリジナルカレーは、辛さを抑え食べやすい味に。2種盛り1,200円(税抜)

ぐるぐるジェラート

カレーのあとはぐるぐるジェラートでお口直しはいかがだろう。「素材やトッピングをぐるぐると混ぜて食べるジェラートのように、街で暮らす人や街で作られたものが混ざり合う場でありたい」と、北海道の牧場から直送するジェラートに、西日暮里周辺の生産者によるさまざまな食材がトッピングできるジェラート店だ。トッピングのラインナップはその時々で変わるが、根津の老舗味噌店の麹味噌に谷中のせんべい店のおこしなど、なかなかに個性的なものばかり。おすすめの取り合わせやスタッフお気に入りの西日暮里周辺ショップ情報をしっかり聞き出しつつ、トッピングの生産者のメモはお忘れなく。ちなみに、飲み帰りの“別腹”にも最高。
(営業時間:火〜日 12:00〜22:00/定休日:月曜日)

「レモンライム」(右)は客の声から生まれたフレーバー。「ハスカップベリー」とダブルで。600円(税込)

西日暮里BOOK APARTMENT

建物の奥には書店、アクセサリーショップ、革のリペアショップが並ぶ。

“80人でつくる本屋さん”西日暮里BOOK APARTMENT(ブックアパートメント)は、全部で80ある巨大な本棚の1箱を月額4,000円で借りることができるオーナー制の書店。オーナーになると箱内で自由に本を販売することができ、消費者としてだけでなく本の提供者として街と関われるという仕組みだ。実は西日暮里は近隣では“無書店地域”として知られる街。書店ができるのを心待ちにしていた地元の本好きも多く、現在の出店者の7割は一般客だという。歴史上の人物の悪役ばかりを主役にした書籍が並ぶ棚があれば、タイトルすら一切隠された全面真っ白な本が並ぶ棚など、棚には選書者や元所有者のパーソナリティが表れるもの。顔は見えずとも、ここでは本を通して、売り手と買い手が“共感”でつながっていく。
(営業時間:水〜日 11:30〜20:00/定休日:月・火曜日)

古書、新刊、自著など、何を並べるもオーナーの自由。

Labo753

続いて向かい側のLabo753はハンドメイドアクセサリーのショップ。三河島駅近くにある、精神疾患を持つ人々が働く「studio753(就労継続支援B型事業所)」が運営している。「精神疾患そのものや患者たちについて、地域の人にもっと知ってもらいたい」と、彼らが丹精込めて作ったアクセサリーに正当な価値を付け「Labo753」というブランドを立ち上げた。店頭に並ぶのは、実に美しく仕上げられたこぎん刺しのブローチや刺繍作品の数々。作品に触れ、その技術の高さや作品づくりへの熱量を知れば、彼らとの関わり方が変わりそうだ。
(営業時間:火〜日 11:30〜24:00/定休日:月曜日)

革マルシェ

カバンや財布など、革製品のリペア・クリーニングなら革マルシェにおまかせ。革マルシェは「動物たちの命をいただきながら作られる革を可能な限り“永く”使うこと」をコンセプトとする革製品修理の専門店だ。大切な思い出が詰まった革製品を、わざわざ百貨店に行かずとも駅から徒歩0分の場所で信頼できるプロに預けられるとなれば、こんなに助かることはない。まだ西日暮里に訪れたことがない人が、この街に立ち寄るひとつの目的となるはずだ。せっかく来たなら、ぜひ周辺をぶらついてみてはいかがだろうか。
(営業時間:火〜日 13:00〜18:30/定休日:月曜日・祝日)

NIGHT KIOSK

最後は、唯一夕方からオープンする2階の立ち飲み屋NIGHT KIOSK(ナイト キオスク)。人が交わるといえば、やはりお酒の席は外せない。約150種類のクラフトビールをメインに、ナチュラルワインや日本酒などを豊富に揃え、酒類は客が自ら店の奥にある冷蔵庫に取りに行くという独特のスタイル。客が動けば人が交わる。「ちょっとすみません」……すれ違い際のそんな一言がコミュニケーションのはじまりだ。ひとりで来たはずなのに気がつけば隣には誰かがいて、「次どこ行く?」「街中の店に行ってみようか」となれば、窓に描かれた西日暮里の地図をチェックしよう。そこには客おすすめの周辺の店情報がぎっしり!それでもどこに行くか迷ったら、常連客やスタッフに気軽に尋ねてみるのもいい。
(営業時間:月〜土 17:00〜23:00 /定休日:日曜日)

珍しいビールも多数揃う。星野製作所(麦)の「アナーキン・イン・ザ・ジャスラ」。935円(税込)

今、西日暮里スクランブルで“混ざった”さまざまな人と街が、数年後に生まれ変わる新たな街をつくっていく。世代や性別を越え、小さなコミュニティから大きなビジネスまで、その可能性は無限大だ。乗り換えを急ぐあまり「気になるな〜」などと外から眺めているだけではもったいない。飛び込んでみれば、ここには必ず楽しいことが待っている。
大きな街の「日本初上陸」がずらりと並ぶ新しい施設もいいが、アフターコロナの時代ではこういった「足元を見つめ直す」ことが求められている。小さな場所で直接言葉を交わすことからカルチャーは育まれるのだ。

文:山本愛理
写真:河野優太

MORE INFO:

西日暮里スクランブル

住所: 〒116-0013 東京都荒川区西日暮里5丁目21−1
電話番号: 03-6806-8991
公式WEB: https://scramblebdg.com/