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物語を観光ガイドに。原田マハの小説世界で旅をする

VOL.3 物語を観光ガイドに。原田マハの小説世界で旅をする

人気小説家・原田マハ。アート領域の作品が多いが、実はある街に住む、アートに関わる誰かを描いている。小説を通して街の個性を知り、共感はそこへ旅をする。観光ガイドではわからない街の魅力を知ることができる。必ず来る「コロナ明けの旅」に思いを馳せたい。

目次

    ①見知らぬ街の、誰かから街を知る。『デトロイト美術館の奇跡』

    2013年、米国ミシガン州南東部の街・デトロイトは経済破綻した。これはその頃のデトロイト美術館の、実話をベースにした物語だ。章毎に主人公が変わるのだが、冒頭に登場する第一章の主人公・フレッドが読みすすめていくにつれ、読む者の心を打つ。

    彼は、アートになんて何の興味もない一般人だ。裕福なわけでもない。それでも、ひょんなことから美術館と接点を持つ。当初接点がなかったからこそのピュアな想いが、美術のプロたちの常識や思い込みを打ち破り、彼らのピンチを救う。見知らぬ誰かの小さな物語が、実在の美術館を舞台に繰り広げられるのだ。会ったこともないその誰かに共感し、会いに行きたくなってしまうのが原田マハ作品の真骨頂。デトロイト美術館に行けば、彼に会えるような気がする。他にどんな観光スポットがあるのか、そんなことは二の次。この物語の続編を確認しにデトロイトへ行きたい。

    ②今年また注目のゴッホ。夢破れたパリでの切ないストーリー『たゆたえども沈まず』

    『たゆたえども沈まず』は、19世紀後半のパリが舞台。浮世絵を売る画商・林忠正と助手の重吉、そして日本文化に憧れるゴッホと、弟のテオ。彼ら4人が紡ぐ、ゴッホの物語だ。ゴッホは存命中、パリの美術界でまったく受け入れられなかった。そのことがやがて悲劇へと繋がっていくのだが、パリの華やかさ・賑わいが物語で鮮やかに描かれ、よりゴッホの苦悩が浮き彫りになる。パリの町並みが目に浮かぶように描写され、私たちを19世紀のパリの世界へと連れて行ってくれるのだ。
    ゴッホは、日本でも人気が高く、今年の秋にもゴッホ展が上野・東京都美術館で開かれる。

    パリへ行ったことのある人はいつか来るコロナ明けの旅への想いを。行ったことのない人はこの悲劇ながらも美しい物語の舞台・パリへ想いを馳せよう。

    ③これは、私だったかもしれない。ニューヨークのあの日を描く『モダン』

    本作は「MoMA」ことニューヨーク近代美術館に勤める4人の主人公の日々を綴った短編集だ。共通して、いまだ忘れることのできないあの日「9.11」そして日本の「3.11」を背景にしている。現代に生きる私たちにとっては、両方、心に刻まれているだろう。直接被害を受けなくても、心の奥底にずっと存在している。物語に登場する彼らは、MoMAに勤めているが、一般の人々だ。「彼は彼女は、私だったかもしれない」。ニューヨークの、実在する美術館。そこに勤めている彼らのリアルな日々を感じて、間違いなく想像するだろう。

    悲劇の後、どうやって人は立ち直り、日常を取り戻すのか、また取り戻さざるを得ないのか。再生の物語は、MoMAに勤める彼らを応援して止まない。

    ④点と点が重なる。中立国での奇跡『楽園のカンヴァス』

    山本周五郎賞受賞作の本作品は、芸術家アンリ・ルソーの研究をするふたりの物語だ。主人公のふたりは、どこまでも対極的。男と女、東洋人と西洋人、名誉職のエリートとパートのおばちゃん。だが同じものを見つめている。

    二元論では語れない現代社会の複雑さ。白黒つけることがもたらす意味や、グレーにとどめておくことの優しさというようなことを考えさせられる作品だ。舞台になる街はスイスのバーゼル。世界最大級の芸術見本市が開かれている、いわばコレクターの聖地だ。だがそれだけでなく、スイスというとどうしてもその「中立」の立場がまた何かを示唆しているような気がしてならない。対比軸が印象的な物語の設定に、対立が深まる現代の国際社会を思わず重ねてしまう。
    そして、物語内で登場するバーゼルのとあるレストランのとあるメニュー。それが何かを表現するように描かれている本作を読むと、確かめに行きたくなる。これは、食べなくては。原田マハの小説は、フィクションとノンフィクションがうまく融合し、旅情をそそる。読後に“答え合わせ”し、登場人物に会いに行く旅を、コロナ明けではぜひ楽しんでほしい。

    原田マハ公式WEB
    すべての作品が紹介されています。
    https://haradamaha.com