「お気に入りの服が着たい」「あの人のようになりたい」「ありのままでいたい」「新しい自分を見つけたい」……そんないろんな情熱や欲望=「LOVE」を受け止める“装い”。そのさまざまな形について考える展覧会「LOVE ファッション—私を着がえるとき」が開催中だ。
人間の普遍的な営みのひとつである「服を着る」こと。本展は、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する衣装コレクションを中心に、130点の衣装や装飾品、アートを通じ、「着ること」をめぐる人々の多様な願望である「LOVE」とそのありようについて見つめ直す試みだ。
色鮮やかな花柄が広がる18世紀の宮廷服をはじめ、いまにも動き出しそうな鳥たちがあしらわれた帽子、極端に細いウエストや膨れ上がった袖のドレスなど、当時の人々の美意識が凝縮した衣服のほか、ヘルムート・ラングやコム・デ・ギャルソン、ヨウジ・ヤマモトといった現代のデザイナーが手がける衣装を一堂に展示。着る側と作る側、それぞれの熱い「LOVE」から生み出された装いの数々が登場する。
展示は「自然にかえりたい」「きれいになりたい」「ありのままでいたい」「自由になりたい」「我を忘れたい」の5つのチャプターで構成。たとえば、美への憧れをテーマとした「きれいになりたい」では、絞り上げたウエストに、歩きにくいほどに広がるスカートなど、時に偏執的ともいえる造形への欲望に着目。20世紀中葉のオートクチュール作品を中心に、ディオールやバレンシアガのドレスを展示する。
また、「自由になりたい」では、アイデンティティの変容を描いたヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』に着想した、コム デ ギャルソン・オム プリュスの2020年春夏コレクション、コム デ ギャルソンの2020年春夏コレクション、そして川久保が衣装デザインを手がけたウィーン国立歌劇場のオペラ《オーランドー》による、「オーランドー」三部作を一挙公開する。
さらに本展では、さまざまな願望や葛藤を抱えながら現代を生きる多様な「私」のありようを、ヴォルフガング・ティルマンスや松川朋奈、AKI INOMATA、原田裕規といった現代アーティストによる作品を通して紹介。本展のための新作も。
5つの「LOVE」を通じて、ファッションと私たち人間の関わりを考えるとともに、身近な「服を着る」ことの奥深さを再認識できそうだ。
LOVE ファッション—私を着がえるとき
会期:2025年4月16日(水)〜6月22日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー ギャラリー1・2
https://www.kci.or.jp/love/index.html