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2025年、注目のまち・大阪へ。いまさら聞けない“万博”って?

VOL.151 2025年、注目のまち・大阪へ。いまさら聞けない“万博”って?

2025年、日本で大きな国際イベント「大阪・関西万博」がされている。ニュースでは何度か見聞きしているし、ネガティブな話題、「このパビリオンがすごい」、売れているミャクミャクグッズ……と断片的に情報が入ってくる。しかし東京から離れた大阪での開催とあって、実際にどんな内容なのかを説明できる人は多くないかもしれない。そもそも万博とは、どんなイベントなのだろうか?休暇の旅先に、出張から少し足を伸ばして。大阪こそ、今行くべきまち。その理由は万博だけではない。

文:稲垣美緒(Harumari TOKYO)

2025年、大阪・関西万博会場となっているのは大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」。なんば、梅田といった大阪市中心部からのアクセスは40分程度と、意外と近い。東京から行くと、新大阪駅から地下鉄や直通のシャトルバスなどを利用することになる。出張や観光のついでに足を伸ばすことも十分に可能だ。

たとえば京都や神戸と組み合わせて、建築や現代アート、食のカルチャーをめぐる旅に組み込むような過ごし方もおすすめできる。今年は瀬戸内でトリエンナーレが開催されているため、それと合わせるのもいいだろう。

ひとつの目的地というよりは、“感覚を揺らすひと区画”として、旅の流れにさりげなく差し込む。そんな使い方がしっくりくる。

万博とは、世界の「問い」が集まる場所

万博——正式には「国際博覧会」は、国や企業がそれぞれの技術や思想、課題意識を持ち寄り、“これからの社会はどうあるべきか”という問いを多角的に共有する場。

2025年の大阪万博には、150を超える国と地域、企業・国際機関が参加している。基本的にはさまざまな団体が「パビリオン」なる施設やコーナーを持ち、6ヶ月の間、展示やイベント・カンファレンスなどを行う。

万博のプロデューサー8名がそれぞれ企画した「シグネチャーパビリオン」、日本国内の自治体や企業の「国内パビリオン」、世界中から集まった「海外パビリオン」。それぞれのパビリオンが共通テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げながらも、まったく異なる切り口でプレゼンテーションしている。同じテーマに対して、異なる文化や価値観がどう応答するのか、その多様性こそが、今の時代を象徴する風景だ。

国のパビリオン、企業や地域の展示、アートや建築、食の表現……バラエティに富んだ展示の数々は、1日中巨大な博物館にいるようなもの。知的好奇心を満たすテーマパークといえるだろう。

見どころは、「個性的な展示内容」と「空間そのもの」

最先端技術にフォーカスするパビリオンもあれば、文化や感情、記憶を表現する空間もある。日本人にあまり馴染みのない国のパビリオンであれば、「こんな国です!」という紹介のようなスタイルも。スケール感も重厚なものから、身の丈に合ったささやかなものまでさまざまだ。まるでフェスのように、それぞれの表現が自由なリズムで鳴っている。

統一感のなさは、むしろ今の社会のリアリティといえる。正解がひとつではない時代に、それぞれの表現を楽しめるのがいい。

そして、展示内容はもちろんだが、空間そのものの豊かさにも注目したい。

会場内には、世界的な建築家・藤本壮介が手がけた「大屋根リング」をはじめ、それぞれのパビリオンは国内外の著名建築家が手がけているものが多い。

構造や素材、コンセプトもさまざま。特に海外パビリオンは、移動しながら建築をめぐるだけでも、大きな視覚体験になるはずだ。

万博に行くという選択が、私たちに何をもたらす?

技術やシステムの話を聞くだけなら、ネットやメディアでも十分に知ることができる。けれど、自分の体を運んで会場を歩くことで見えてくるものがある。

たとえば「今の自分の価値観って、何が土台になってるんだろう」と気づかされたり、「こういう社会だったら、悪くないな」と思えたり。

万博は、未来を教えてくれる場所というより、いまの自分の輪郭を映し返してくれる装置のようなものかもしれない。

すぐに答えが見つかるわけではないけれど、ひとつの展示、一枚の絵、一言のコピーが、どこかに引っかかる。その感触を持ち帰れるだけでも、十分に意味がある気がする。

大阪は今年行くべき注目のまち

世界中から多くの人が訪れる2025年の大阪は、このタイミングに合わせ、新しい観光の目玉も生まれている。特に、大阪駅の北側エリアの再開発は、東京ではなかなか見られない空間の使い方に驚く人も多いだろう。

いわゆる「うめきた」といわれるエリアは、長年再開発のための工事が行われてきたが、この度その大部分を占める「うめきた公園」と商業施設「グラングリーン大阪」が開業し、街の風景が大きく変わった。

敷地の半分が緑になっており、街をあげて緑化に取り組んでいるということがよくわかる。東京ドーム1個分の広さの公園がターミナル駅と直結しているというのも東京ではあり得ない。高層ビルが立ち並ぶエリアでありながら、広大な芝生と噴水広場を中心に、大きな開放感を楽しめる素晴らしい空間。いすや遊び道具が無料で貸し出されることもあり、子どもたちが走り回る平和な光景が広がっている。

公園に隣接し、3月に開業したばかりの「グラングリーン大阪 南館」最大の目玉はアジア初の「タイムアウトマーケット」だ。

ロンドン発のシティマガジン「タイムアウト」が手がけるフードホールには、新進気鋭の話題店や地元民御用達の人気店などがラインナップ。観光客だけでなく、地元民や近隣のサラリーマン、公園に遊びに来たファミリー層などさまざまな人が利用し、いい風景になっている。客層が分断されがちな東京ではあまり見られない使われ方に、きっと驚かされる。

観光地として見るのではなく、出張として用事だけ済ませて東京に直帰するのではなく。

旅の途中で立ち寄るような気軽さで、しかしどこかに余白を残しておけるような心持ちで見る大阪。
わたしたちが生きていく世界が、どう変わっていくのか。その断片に、少しだけ触れてみるのも悪くない。