原宿の声を形に。「foru cafe」はWeWorkと育む‘街の食堂’

原宿で一際目を引くビル「WeWork Iceberg」の一階のカフェがリニューアルオープン。請け負ったのは西早稲田に本店のある「foru cafe」だ。店名の中に隠された言葉は「for you」。

2018年8月のオープンと同時に大きな話題を呼んだ、ニューヨーク発のコミュニティ型ワークスペース「WeWork」の国内6店舗目の旗艦店「WeWork Iceberg（アイスバーグ）」。‘me’TIME NAVIGATOR 表参道・原宿編では実際に入居している高野一朗さんに話を聞いた。

その1階に併設されたカフェが、3月にリニューアルオープンした。新たに手がけるのは、西早稲田に本店を持つ「foru cafe（フォルカフェ）」。土地柄も客層も異なる上、WeWorkという特殊な場で、なぜカフェを始めたのか。この場所にかけた想いに迫る。

原宿と渋谷を結ぶ明治通りに、突如現れるまさにアイスバーグ（＝氷山）のような巨大なビル「WeWork Iceberg」。7階建てのフロアは全てWeWorkのメンバーが利用できるワークスペースになっている。1階のエントランスに併設されているのが、メンバー以外の一般客も利用できるカフェだ。

広々としたエントランスゲートに設けられたキッチンカウンターを挟むようにして、誰でも利用できるフリーエリアとメンバー専用のワーススペースに分けられ、どちら側からもオーダーできる仕組みだ。

キッチンを担うforu cafeは、日本初のブリュレフレンチトースト専門店として2013年に西早稲田にオープンした。当時目新しかったスイーツと、オーナー・平井幸奈さんが大学生だったことも重なりメディアからも注目を浴びた。

しかしその後、平井さんは大学を卒業、さらには結婚して家庭を持つようになり自身のライフスタイルは大きく変化。「女の子たちがスイーツを食べに来る場所としてだけじゃなく、もっと幅広い人に日常的に使ってもらえる、街に寄り添うカフェを作りたい」と考えるようになったという。栄養もボリュームもある食事メニューを増やし、自家製グラノーラ「FORU GRANOLA」を開発。客層は大きく広がり、街の新たな人たちとの交流も生まれた。

原宿店で目指すのも同じだ。これまでにも月に数回、ケータリングやイベントを通じてこの場所で出店してきたforu cafe。その度に、原宿の街やWeWorkに集まるクリエイターたちのフレンドリーな人柄とユニークな発想に魅力を感じていたと平井さんは話す。「とにかくここで働くことが楽しくて、この場所が大好きになったんです」。常設の声がかかったとき、「街の人やWeWorkという大きなコミュニティの人たちに日常的に使ってもらえるように、お客さんの声を取り入れて応えていく、将来的には“社員食堂みたいな場所”にしたい」。そんな目標を掲げた。

そのひとつの取り組みが、食事メニューの充実と時間別メニューをなくしたことだ。特に平日はWeWorkのメンバーや周辺で働く客が多い。原宿の街もWeWorkというコミュニテイも、自由なライフスタイルの人が共存する場所。だからこそ、あらゆる人の生活にフィットできるよう、モーニング・ランチ・ディナーという時間枠を取り払った。「朝からがっつりご飯を食べたいという声や、忙しくてランチタイムを逃してしまったという声に応えたくて」。

時間だけでなく、異なる食事スタイルに対応したメニューも用意した。「お弁当やサンドイッチ、ランチ後のコーヒーなど、テイクアウト用のメニューもとても好評です。周辺の方がたくさん立ち寄ってくださって嬉しい」。店名の「foru」に込められたのは、「for u（you）=あなたのために」にという想い。生活スタイルやそのときの気分に合わせて、自分らしく利用することができるカフェ を、原宿の街の人は待ち望んでいたのかもしれない。

グランドオープンから1ヶ月も経たないうちに、早くもコミュニティが広がっている。WeWorkのメンバーとのコラボレーション企画がいくつか立ち上がり、実際にコラボメニューもスタートした。街の声を拾い形にしていく、その取り組みは着実に動き出した。

西早稲田で街の人との繋がりを築いてきたforu cafeが、WeWorkという無限の可能性を持つ集団と共に、新たなコミュニティをこの街に生み出そうとしている。「原宿の食堂になる」。そんな日も遠くないかもしれない。

取材・文 : RIN