スパイス料理の基本のキである「世界4大スパイス」。改めて、歴史や用途をおさらいして、普段の料理に生かしてみよう。知識が増えれば増えるほど、スパイスライフの楽しみがもっと広がるはず。
前回、基本のスパイス&ハーブ辞典を紹介したけれど、そのなかには、「世界4大スパイス」と言われる「こしょう」「ナツメッグ」「クローブ」「シナモン」がある。これらは世界各国、さまざまな料理に使われている有名なスパイスであり、スーパーで手に入るほど身近なものだが、使いこなせているだろうか。
「スパイス料理をもっと楽しみたいなら、世界4大スパイスはぜひ使いこなしてほしいですね。意外と奥深くておもしろい歴史もあるんですよ」と、語るのは、エスビー食品株式会社の遠藤由美さん。
長年スパイスの製造を行ってきたエスビーの社内でもごくわずかな人しかいないという、スパイス&ハーブマスターの資格を持っていて、スパイスのことならなんでも知っているすごい人だ。
「『こしょう』『ナツメッグ』『クローブ』『シナモン』が、世界4大スパイスと言われているのは、世界の歴史を動かしたスパイスだからと考えられています。古代エジプトでミイラを作るときにスパイスを使ったという記述があるほど、はるか昔から世界中で薬や保存剤として重宝されていました。しかし、高温多湿の熱帯性気候を好むスパイスの主な生産地は、東南アジアやインド。収穫ができないヨーロッパにたどり着くころには、金銀と同じ価値があるほど高値で取引されていました。そこで動き出したのが、コロンブスとバスコ・ダ・ガマ、そしてマゼランなどの冒険者たち。貴重なスパイスを入手すべく、血で血を争う壮絶な戦争が繰り広げられたのです。その戦いは約200年続きました。その中でもとくに入手が困難だったのが、『こしょう』『ナツメッグ』『クローブ』『シナモン』の4つだったと言われているんです」。
私たちが、今、平和にスパイスライフと言っていられるのは、はるか昔に壮絶な戦いがあったから……。そんな冒険者たちの挑戦に感謝をしつつ、世界4大スパイスの特徴と用途を紹介していこう。
日本の家庭にもひとつはある、かなりポピュラーなスパイス。しかし前述したとおり、中世のヨーロッパでは、ひと握りのこしょうが牛1頭分の価値にあたいするほどの高級品だったというから驚き!
「こしょうは、ピリリとした辛みを持つスパイス。味を引き締めたり、食欲をそそったりしてくれます。食材との相性のよさもピカイチで、肉料理、魚料理、野菜料理、スープなどどれでもOK。ホール(原形の粒)やあらびき、パウダーなどさまざまな形で販売されているので、好みに応じて使ってみてください」(遠藤さん)。
種子の仁を使う、ナツメッグ。甘くてスパイシーな香りは、肉の臭み消しに効果的だというが、他にはどのような使い道があるんだろう。
「乳製品を使った料理の乳独特の臭い消しや野菜料理、お菓子にもおすすめです。加熱をすると、スパイシーな香りが和らいで、より甘みが香り立ちますので、焼く前や煮込む前のタイミングで加えるとよいでしょう」(遠藤さん)。
家庭ではあまり使ったことがないという方も多い、クローブ。しかしインドカレーによく使われるガラムマサラの主原料だというから、侮れない!
「ナツメッグと同様に、肉の臭い消しに効果的。ビーフカレーやビーフシチューなどに入れると、深い味わいになりますよ。ただし、甘く濃厚な強い香りを持つため、使いすぎには注意。4人前のカレーなら、ホールタイプで3〜4本で充分です」(遠藤さん)。
アップルパイなどの洋菓子に使われること多い、シナモン。スティックかパウダーで販売されていることがほとんどだが、スイーツ以外の使い方は?
「代表的なものでは、チャイ。甘くエキゾチックな香りでおいしくいただけます。あとは、豚の角煮など肉を使った中華料理にも。シナモンの甘い香りが加わると、一気に本格的な味わいになりますよ」(遠藤さん)。
スパイスのメリットは、素材の味を邪魔せずに、風味を変化させること。食べ慣れた料理に、好みのスパイスを加えれば、いつもと違うおいしさを発見できるかも。週末は世界4大スパイスの特徴を生かしたスパイス料理に挑戦してみよう。
【クレジット】
監修:エスビー食品株式会社
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