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いつもの街の景色を変える“デザインとアート”の力。「DESIGNART TOKYO 2019」に見る、日常に大切なアクセント

いつもの街の景色を変える“デザインとアート”の力。「DESIGNART TOKYO 2019」に見る、日常に大切なアクセント

DATE:
2019.12.27

いつも見ている街の景色。その中の“デザイン”や“ア—ト”が少し変わるだけで、いつもと見え方が変わってくる。年に1回開催されている「DESIGNART TOKYO(デザイナート・トーキョー)」。東京の街をアートで彩るデザイン&アートフェスティバルだ。毎年秋に行われるこちらのイベントは私たちの日常をどんな風に変えてくれるのだろうか。

数々のクリエイターが考える「デザインとアートの融合」

日常のなかには、たくさんのデザインとアートが隠れている。毎朝飲むコーヒーのパッケージ、遠くの街まで連れて行ってくれる電車の車両デザイン、都心にそびえ立つビルの造形美。デザインとアートの力によって、街は作られていて、私たちの暮らしをより充実したものにしてくれるのだ。

そんなデザインとアートの力を信じて活動しているのが、「DESIGNART TOKYO」だ。“Emotions〜感動の入り口〜”をコンセプトに、デザインとアートを融合するモノやコトのすばらしさを共有してゆく活動のひとつとして、2017年にスタート。そういった思いに多くの企業や街、クリエイターが賛同し、東京を中心に、過去3回に渡って、感動を与えるデザイン&アートなモノ・コトを発信し続けてきた。

2019年10月18日から27日の10日間開催した「DESIGNART TOKYO 2019」は、これまでの青山を中心としたエリアから、銀座と新宿も加え、都内104カ所にて開催。会期中に多様なプロジェクトを展開するほか、署名活動なども実施した。
いつも見慣れた東京の街が、デザインとアートに彩られた10日間。街はどのように変化し、私たちにどのような刺激を与えてくれるのだろうか。表参道と代官山、六本木といったハイセンスかつ先進的なファッションカルチャーを発信している街を散策しながら、「DESIGNART TOKYO 2019」を体感してきた。

慣れ親しんだデザインでも、素材を変えてアートになる。

DESIGNART FEATURE 1% for Art EXHIBITION curated by Design Pier/ワールド北青山ビル(表参道)

白を基調とした開放的な空間が特徴のワールド北青山ビルでは、「DESIGNART TOKYO 2019」×Design Pierのコラボレーションで、「1% for Art」のプログラムとアジア各国のデザインスタジオによるデザインオブジェクトを展示している。保守的でリスクを避けがちだったアジアのデザインから脱し、独自の思考に辿り着いた新しい世代の作品は、非常に斬新かつユニークだ。チェアや照明、テーブルなど慣れ親しんだインテリアが多いものの、ディテールや素材の組み合わせなどにはあっと驚かされるものばかり。アート作品はひとつひとつ360度から見られるように、適度な距離感を持って配置されているため、作品に顔を近づけて見ている人も多くいた。アートを購入することを推奨している「DESIGNART TOKYO」らしい仕組みだろう。

“普通の素材”を使ったアートで「逆の発想」を知る

エデンの園/スパイラルガーデン(表参道)

「生活とアートの融合」をテーマに1985年に設立したスパイラルガーデンには、公式パートナーカントリーであるイスラエルから、同国内で影響力のあるデザインイベント「エルサレム・デザイン・ウィーク(JDW)」を招致。10名を超えるイスラエル現代アーティストの作品のほか、広々とした奥の特別エリアには死海の“塩”と農業革命や現代生活を象徴する“麦”、当国の資源にまつわる2つの神話の出会いを表現。5tもの塩が使われた真っ白で美しく神秘的なスペースは、隣接するカフェの利用者も含め、多くの観客を楽しませていた。先ほどは普遍的なデザインで素材を変えることでアート作品を紹介したが、こちらは逆に、普遍的な素材をスペース全体、作品にすることでアートに昇華させたのだ。また、独自のアルゴリズムを駆使し、円形の木製フレームに糸でイスラエルと日本の庭師たちの肖像を描く「コモン・スレッド(共通の特徴)-庭の守り人」に注目する人が多数。リアルタイムで稼働する電動作品だけに関心が集まっていた。整然と並ぶ中小のコンテンポラリーアートの世界観なども相まって、非日常感を味わえるアートスポットとなっていた。

「ここにないはずのもの」で違和感をアートに

大蔵山スタジオ/KASHIYAMA DAIKANYAMA(代官山)

2019年4月にオープンした新業態施設「KASHIYAMA DAIKANYAMA」では、DESIGNART初参加となる大蔵山スタジオが、自社の山で採掘する伊達冠石のプロダクトと、新たにスタートするリサーチプロジェクトの発表を行なった。建物の1Fにあるギャラリーにさまざまな積層から採れる岩石を、木製ボックスに納めてディスプレイ。アーティスト・写真家の八木夕菜が撮影した作品と合わせ、大蔵山から生まれる自然の力を体感できる空間に仕上がっていた。おそらく同じ展示を、自然溢れる田舎町で見ただけでは、岩石などが持つ自然の力をまじまじと感じることは難しいだろう。代官山に突如として現れるからこそ、そのギャップを感じやすいのではないだろうか。

“そこに馴染む”ようにデザインする

team balanco /東京ミッドタウン(六本木)

造園家や建築家、家具メーカーなどで構成されるteam balancoが、公共空間にプライベートスペースを作り出すミニマルユニットとしてデザインした、屋内外対応の家具「intree table」を展示。遠くから見ると周囲の樹木と馴染んでいて、一見家具であることに気がつかないが、近づくと、そこには樹間に広がるテーブルが。椅子に座って見回すと、まるで樹の上に登ったような、不思議なプライベート空間ができあがる。自然との距離が近いからなのか、心もオープンになるようで、隣に座った見知らぬ人とコミュニケーションをとる人の姿を多く見かけた。

テクノロジーを使って、感覚に訴えるデザイン

Hamid Shahi、HAKUTEN CREATIVE、DraadD、M&T/アクシスギャラリー(六本木)

優れたデザインを社会に送り出す活動をしている「AXISビル」を舞台に、4組の若手デザイナーが展示を行った。ビル内の各フロアでそれぞれの空間を生かし、独自の世界観を表現。なかでも印象的なのは、デザインユニット「M&T」による「Imbalanced balance」。紙風船のようなシェードが下の照明からの熱を受けることで、自然と上下に揺れる不思議な作品だ。最低限のテクノロジーを用いることで、人間の感覚に訴えかける作品を目指したという。全作品が初お披露目であり、そのフレッシュな感性はちょっぴりくたびれた脳とハートに、気持ち良い刺激を与えてくれた。

「DESIGNART TOKYO 2019」を通じて、デザインとアートには大きくわけてふたつの力があると感じた。ひとつは、日常に溶け込む柔軟性。ふたつめは、日常に与える違和感だ。両者が揃うことで、それぞれの魅力は色濃く発揮される。都内120カ所以上で開催された「DESIGNART TOKYO 2019」は、“104カ所の日常”のなかに、デザインとアートによる違和感がプラスされ、いつもの風景が少し変わって見えた。そのギャップこそ、私たちの日常における大切なアクセントであり、生活を充実させるためのヒントになるのではないだろうか。