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「都会と自然」。欲しいものを二つとも手に入れる理想の暮らしとは?

「都会と自然」。欲しいものを二つとも手に入れる理想の暮らしとは?

自然の中で過ごすもうひとつの家を提供するサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」。それは、どんな暮らし、どんな幸せな時間をもたらすのか? 都会で暮らしながら自然との共生という「理想論」に「現実解」を提示したSANU創業者の本間貴裕さん、福島弦さんと一緒に “Live with nature”の意義を考えていく、二人と弊誌編集長・島崎昭光との鼎談企画。

<前回の内容はこちら>

株式会社SanuのFounder, Brand Director本間貴裕さん(右)とCEOの福島弦さん

島崎:

SANU(サヌ)って、独特ですけど耳心地のいい言葉ですよね? どこかの言語ですか?

本間:

はい。サンスクリット語です。

島崎:

へえ! サンスクリット語をブランド名に。

本間:

「山頂」「太陽」に加えて「思慮深い人」という意味があるんです。日本人も、自然に対して「畏怖」という観念みたいなのがありますよね?

島崎:

畏怖…。謙虚な気持ちというニュアンスでしょうか?

本間:

そうです。自然という大きなものに対して、ただ美しいなって感動するというよりも、少し頭を下げる思いというか、素晴らしいものに対して少し謙虚であるような。サンスクリット語のSANUに日本人のそういう気持ちも重なって、それで「SANU」で行こうと。

島崎:

なるほどー。山頂、太陽という自然物の大きな意味と、思慮深いや畏怖といった謙虚な生き方が合わさっていると。

本間:

あとは、ブランド自体を世界に広げていきたかったので、どの人が発音しても同じ発音になること、覚えやすいというのもありました。

島崎:

では、僕の耳心地の感想も正解でしたね(笑)。そしてブランドコンセプトが「自然と共に生きる」ということで、これ、すごい普遍的というか大きなビジョンですよね。

福島:

そうなんです。めちゃくちゃど真ん中のメッセージなので、これを掲げるのはちょっと勇気が要りました。

島崎:

ですよね。

福島:

でも掲げ切ったことで差別化になって、応援してくれる人の数が圧倒的に多いんです。スタッフとして入ってくれる人もそうですし、事業パートナーとして組む人もそうですし、地域の方々も、本当にみんなSANUをつくろうとしてくれているんです。

島崎:

実際のところ、本当に実現するなら手に入れたいです。みなさんが応援したくなる気持ちはすごいわかります。もちろん僕自身も。

福島:

ありがとうございます。理念の強さ、世界が今これを求めている、社会がこれを求めているっていう感覚が一番強くありますね。なので、ど真ん中を走ってるなっていうのをすごく感じます。

「自然には感動がある」

島崎:

そもそもなんですが、お二人が考える自然と共に生きる暮らし、どんな幸せがあるんですか?

本間:

もちろん都市には楽しさがすごくあふれていますよね。美味しいレストランやカフェ、音楽イベント、ほかにもたくさんの娯楽があって、お金を出せば楽しさを買えるし、当然人が集まりやすいので仕事もしやすい。一方で、自然には感動があるなって思うんです。

島崎:

自然に触れることで得られる感動、ですね。

本間:

そうです。SANUを始めてなおさら感じるようになったんですけど、やっぱり朝焼けが海に染みていく何とも言えない色合いとか素晴らしいですよね。

島崎:

うん、都会では味わえないですね。

本間:

仕事の合間に「せっかくだからやってみよう」って福島と一緒にアルパインクライミングに行ったんですよ。そのとき、凍った川の下に流れる水の音がちろちろと聞こえてくる感じとか、冬山の静寂とか、都市の楽しさとはまた全然違った深度の感動がいろんなところにあったんです。

島崎:

いやあ、それってお二人の感度がすごく良くなっているというか、ちょっと1年に1回程度自然に触れただけでは感じられないことのように思います。

本間:

回数というよりは、観光という気持ちではなく、地元で生活するという意識とか目線を持つ必要はありますよね。それは僕らがSANUのお客様を「生活者」と定義していることにも関わってくるのですが。

島崎:

なるほど。しかも、その暮らしはあくまで「セカンドホーム」であって、都会での生活もある。ほんと、このサービスが画期的なのは、都会か自然かの二者択一じゃなくて、その両方の暮らしを手に入れることができる点だなあと。

本間:

やっぱり都市で感じるものと自然で感じるものの質が違いすぎて、どっちもいいなって改めて思っているので、これを伝えていきたいですね。

繰り返し通うことで“変化”に敏感に

島崎:

では、福島さんは改めて自然と共に生きるということをどう考えているんですか?

福島:

僕は、本当に総じて日本の自然は美しいっていうことと、でもやっぱり傷付いてるなっていうことの二つを常に感じています。

島崎:

単に楽しいだけじゃなく、現実もある。

福島:

たとえば、ユネスコのエコパークにも認定されている群馬県のみなかみ町は、谷川岳が後ろにあって利根川の源流もあって本当に美しい自然があるんです。でも、地元のお水を使っているブリュワリーの人と話をすると、少し水質が変わってきていると。

島崎:

そうなんですね……。

福島:

バブル期に開発されたコンクリートが廃墟になっているような、そういう現実も同時に見てきました。SANUで生活をする人が増えることで、自然を守りたいという意識を持つ人が増えていくことを期待しています。

島崎:

本間さんもおっしゃっていましたが、自然を好きになることで、その好きなものを守りたいという気持ちも高まる。SANUというブランドがその意識変化の装置にもなっているわけですね。

福島:

そうなんです。そして、環境が少しずつ良くなっていくっていう姿を地元の人と一緒につくれたら、意義のあることだなと思います。

島崎:

そうか。単に今の自然を楽しむだけじゃなくって、その変化も一緒に経験していくことも含めて「共に生きる」ということ。

本間:

繰り返し通うことで変化に敏感になれるんです。山がきれいになっていったらやっぱり嬉しいし、海が汚くなっていったらやっぱり悲しい。それって繰り返すっていう行為の中でしか見出せないものだと思うんですよね。旅行が“消費”だとしたら、繰り返し通うことは“生活”です。消費者じゃなくて生活者であろう、ということを提案したいんです。

島崎:

その距離感って大事なんだなって思いました。何も飛行機で15時間、20時間飛ばなくても、東京から約2時間くらいのところにその体験はいろいろ散りばめられている。

“日常の延長”に自然を感じる

本間:

僕は山に入るようになって、山椒を見つけられるようになったんです。

島崎:

山椒の実ですか! しぶいですね(笑)。

本間:

めちゃくちゃ地味なんですけど、山椒って意外といろんなところに生えていて、見つけて食べることが幸せなんですよ。やばっ、山椒うまいなって(笑)。

島崎:

へぇー。

本間:

それって、ハワイに行ってガイドさんに「これ何ちゃらチェリーの実だよ、食べてごらん」って言われて、おいしいなって思うのと多分全然違っていて、生きるって感じがするんですよね。

島崎:

確かに。自分で見つけて採って食べるのと、人に与えてもらうのとでは違いますよね。あと、海外とはやっぱり圧倒的に違う気がする。やっぱり、物理的な距離って、精神的な距離も比例する。

本間:

そうですよね。

島崎:

長時間のフライトって日常と非日常の際(きわ)をつくると思うんです。どれだけ現地のリアリティを感じても、飛行機がその感情をいったんゼロクリアにしてしまうというか。思い出にしてしまう。

本間:

確かに。

島崎:

SANUの拠点が2時間くらいの距離感って、とても絶妙で。「地続き」を感じられる限界の距離だと思うんですよ。都会に暮らしていても、今歩いている道の先に「あの自然」があるっていうリアリティを持ち続けられる。だからセカンドホームで体験した感動や磨かれた感性も、ちゃんと都会の暮らしの中でも残り続けることができる気がするんですよね。

福島:

嬉しいな。ちょっと鳥肌立ってます。それがまさにやりたいんですよね。東京に戻ってきて生活をちょっと変えてみたり、食べるものを少しだけ気遣ってみたり、そういう変化が生まれていくのが一番嬉しいことなんです。

自然の脅威に直面…それでも「自然は美しい」

島崎:

お二人が語っていることって、ほんと本質的というか自然に対する問題意識の高さをすごく感じます。それって、ご自身の原体験でもあったものなのか、それとも世代的に、大人になって改めて再認識したものなんですか?

本間:

どっちもっていうのが僕の答えです。もともと湖が好きでずっと釣りをしていて、冬はスキーとスノボをずっとやっていて、それが当たり前で育ったっていうのがひとつ。もうひとつ大きいのは、やっぱり震災です。

島崎:

2011年。

本間:

「Backpackers’ Japan」を起業して1年目で東北の震災。すぐに3月11日の週からボランティアでNPOを立ち上げて、現地で3カ月間活動していました。自然の脅威はもちろん目の当たりにしてすごく恐ろしいなと思う傍ら、ふと目線を上げると、やっぱり山の美しさとか、鳥の鳴き声とかがして、美しさもそこに残っている。

島崎:

まさに畏怖の心持ちですね。

本間:

自然の強さに恐怖してしまうと、美しさまで僕らは見えなくなってしまうので。もちろんしんどい思いをしてる方もたくさんいるし、僕も友人を亡くしているんですけど、それでも自然が美しい、それでも自然っていいよねっていうのを、僕の立場から発信するっていうのは個人的に大事にしたいなと思っています。

福島:

やっぱり震災とかの緊急事態って、いろんなものが露呈すると思うんです。原発の問題もそうですが、経済活動、つまり資本の先には人の生活があるし、人の生活の先には地球とか環境っていうものがある。そこまでロングショットでちゃんと想像することの大切さは、震災を通じて感じました。

島崎:

今のコロナ禍もある意味、同じことかもしれないですね。人は、危機を感じて初めて本質を問う。本当に大切な物は何かを考える。今、都心から郊外や遠い距離の場所への引越しや二拠点生活が注目されてきているのって、単なる合理性の話だけじゃないと思うんです。生きることとか幸せとかを改めて考えた上での選択肢なんだろうなと。

本間:

旅行で非日常を感じたりすることも否定はしないのですが、それは都会の暮らしが中心であることに変わりは無いんですよね。

島崎:

そう。ある種の現実逃避というか。それはもちろんポジティブな現実逃避なんですが、それだったら「もうひとつの家」を持とうよ、と。そうすれば現実が拡張して、都会の感性と自然の感動の両方を味わえる「幸せな暮らし」を手にすることができるわけですもんね。

本間:

はい。僕らが目指している世界は、そういう未来なんです。

SANUは“未来の幸せな暮らし”の現実解

島崎:

そうかぁ。このサービスを聞いたときに、ちょっと穿った見方をしてみたんですが、定額制だし、生活者という言葉が出たんで、たとえば、ずっとSANUの拠点を移動し続けて生活する人がいてもいいんですか?

本間:

一応、僕らの考えとしてそれは想定していないというのをはっきり申し上げます(笑)。僕、もともとバックパッカーだったんですが、多拠点生活しんどいぜって(笑)。

島崎:

お、経験者(笑)。

本間:

わかるんです、そこに憧れる気持ちは100%わかるんですけど、やっぱり家があるってかなり違うので。僕はよくコンパス型のライフスタイルと言うんですけど、片足に主軸を置いといて、もう片足で海・山・川、いろんなところに行くっていうのがちょうどいいと思ってるんですよね。

島崎:

なんか、ワクワクしますね。これまで別荘とか、都会か自然の二者択一かって僕の中ではまったくリアリティがなかったんですね。でも一方で、自然のある暮らしに対する憧れというか、必要性も感じていた。それがSANUのサブスクで一気に身近になった気がします。

福島:

ありがとうございます。“自然と共に生きる”っていうのは、ペットボトルを持たないことも指しますし、道端に咲く花に感動するっていう心持ちも指しますし、エネルギー政策って意味でもありますし。認知の話でもあり、人間の消費活動の話でもあるっていう、裾野がすごく広い言葉なので、それに対してどういろんなところからアプローチし続けていくかっていうのが、本当に楽しみでもあり挑戦でもあります。

おわりに――
自然が大事、自然回帰、とは都会に暮らす我々にとっては「理想論」でしかない。でも、これまでも社会はテクノロジーやアイデアで、これまでの豊かな暮らしを上書きする形で進化してきた。自然の感動や、危機のリアリティを肌で感じながら、自分ごと化しながら都会での暮らしもアップデートしていく。それはまさに、未来の幸せな暮らしの現実解だ。SANUはその未来を切り開き始めた。
10年後、20年後の未来に、SANUがどのような事業を展開しているのか楽しみだ。きっと、今よりも良い社会になっているのであれば、その中心にはSANUがあるのだろう。

※編集部注釈
サンスクリット語:インドなどの南アジア・東南アジアにおいて用いられた古代語。ヒンドゥー教の礼拝用語でもある。