2021年、Harumari TOKYOが取材した「ONOMICHI SHARE」で、人と人をつなぐコンシェルジュとして働いていた後藤駿さん。あれから5年、後藤さんは独立し、尾道の商店街近くにコワーキングスペース「bench」を立ち上げた。最近では、東京での仕事を続けながら、数日単位で尾道へ通う人や、リモートワークをしながら滞在する人も少なくないという。benchには、そんな“通い続ける暮らし”の入口が、自然な形で生まれていた。

2021年、Harumari TOKYOが取材した「ONOMICHI SHARE」で、後藤駿さんはコンシェルジュとして働いていた。
当時の尾道では、テレワークの広がりとともに、“働きながら滞在する”という新しい人の流れが少しずつ生まれ始めていた。東京の仕事を持ち込みながら数日滞在する人。都市以外の場所との関係を探している人。ONOMICHI SHAREは、そうした人たちが自然と集まる場所でもあった。
あれから5年。後藤さんは独立し、新たにコワーキングスペース「bench」を立ち上げた。

場所は、尾道の商店街から少し入った尾崎本通り。築120年の古民家を活用した空間だ。
1階には、コワーキングスペースと土間のような共有空間が広がる。
奥では打ち合わせをしている人がいて、手前ではノートPCを開いて仕事をしている。夕方になると、仕事終わりの人たちが自然と集まり始め、「今度こんなことやりたいんですけど」と誰かが話し始める。誰かがコーヒーを淹れ、そのまま近くの店へ流れていくこともある。

イベントの日には、この土間スペースに人が集まり、そのまま立ち話が始まることも多いという。後藤さんによると、「雑談が生まれやすいように空間を設計している」とのこと。その狙いはバッチリ当たり、仕事や打ち合わせの流れでコミュニケーションも取りやすく、逆もまた然りだ。
2階は、静かに作業したい人のためのデスクワークスペースとして整備している。もともと住居として使われていた空間の雰囲気を残していて、どこか誰かの家に遊びに来たような空気がある。
建物も、大きくリノベーションしすぎていない。壁に残された文字や、以前使われていた家具も、そのまま残されている部分が多い。
benchには、仕事をする人と、誰かと話している人が自然に混ざっている。
日中は、オンライン会議をしている人もいれば、地元事業者との打ち合わせをしている人もいる。尾道で活動するクリエイターを招いたトークイベントや、ローカルメディア・編集をテーマにした勉強会、小規模な展示や交流会なども不定期で開かれている。
イベントが終わったあと、そのまま参加者同士で食事へ流れていくことも多い。別の日にまたbenchで再会し、そこから新しい企画や仕事が生まれることもあるという。
後藤さんがbenchを立ち上げた背景には、「ONOMICHI SHARE」で8年働く中で感じていたこともある。

「移住者が持つスキルや経験を、地域産業や新規事業に活かすお手伝いができないかと思っていたんです」
後藤さんはそう話す。
benchには、編集者やデザイナー、エンジニア、フォトグラファーなど、地域外から来た人たちも多く出入りしている。
2023年から尾道市移住定住コンシェルジュも務める後藤さん。
最近は「移住したい」というより、「こういう働き方をしながら尾道と関わりたい」「まずは定期的に通いたい」という相談も増えているという。
「コロナ禍をきっかけに『都会にいる意味あるのかな』みたいに生き方を変える、という人がかつては多かったですが、今はリモートワークの定着や、オフィス回帰の流れもあって、具体的な働き方のイメージをお持ちの方が多い。どうやったら実現できるか、みたいに考えている方が多い気がしますね。」

benchの空気にも、そんな距離感が流れている。
実際、benchで起きている変化は、とても日常的だ。
長く空き家だった建物に、人が出入りするようになる。イベントの日だけではなく、普段から灯りがついている。近くの店に立ち寄る人が増え、少しずつ顔見知りが増えていく。
「僕にとってコワーキングスペースは、ただ机を貸す場所ではありません。なのであまりビジネスパーソンしか近づけない場所にはしたくないし、地元の事業者やお年寄り、子どもまでもが出入りできるように、そういった日常的なこともバランスよく運営していきたいんですよね」
後藤さんはそう話す。実際、町内会やご近所付き合いは欠かせない。
benchが目指しているのは、“ご近所付き合いの延長線上”にあるコワーキングだ。

2021年、Harumari TOKYOが尾道で取材していたのは、「地方移住」の未来ではなかった。東京での生活を続けながら、もうひとつの街と関係を持つこと。
5年経った今、尾道では、そんな距離感のまま街と関わる人たちが少しずつ増えている。
セカンドタウンは、ただ街を見つけるだけでは続いていかない。
何度か通ううちに、知っている店ができる。顔を合わせる人が増える。また来た時の予定が、少しずつ街の中にできていく。
benchには、そうした関係の始まりが、ごく自然な形で生まれていた。
もうひとつの街との距離は、こうした小さな接点をきっかけに、少しずつ縮まっていくのかもしれない。
Bench!
公式WEB:https://www.kikkake-onomichi.com/bench/
Instagram:https://www.instagram.com/bench_onomichi/
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