毎日を充実させる東京のトレンド情報をお届け!
Harumari TOKYOのLINEをチェック

詳しくは
こちら

HOME SPECIAL Second Town Journey in ONOMICHI(尾道) 尾道で働く|ONOMICHI SHAREが創るつながりの場所
尾道で働く|ONOMICHI SHAREが創るつながりの場所

VOL.7 尾道で働く|ONOMICHI SHAREが創るつながりの場所

仕事とプライベートが表裏一体な東京のクリエイティブワーカーなら、働く環境は少なからず日常生活に影響を与える。そんな方には尾道で最初に開設したシェアオフィス、ONOMICHI SHAREを訪れてほしい。コンシェルジュ、後藤 峻さんとの交流をきっかけに、働くことや生きることへの考え方が大きく変わるだろう。

日本の働き方は大きな変革を遂げつつある。そのひとつがコロナ禍以降、東京のIT企業やクリエイティブ職を中心に、働く環境を自由に選べるようになったテレワークだ。新しい働き方が可能となったいま、自分の理想の生活を見つめ直し、それに適した仕事環境を整えていくことがこれからの課題だ。尾道におけるその存在が、シェアオフィス「ONOMICHI SHARE」である。このシェアオフィスをきっかけに働くだけでなく尾道のさまざまな人とつながる体験を通して、東京で働いているとなかなか立ち止まって考えることがない、働くことや生き方と向き合うことができるだろう。

ガラス張りの室内からは海を一望しながら仕事ができる。

働くことについて自問自答を繰り返す

東京で十年近く働いていると、働き方がパターン化してくる。業界内での知り合いも増え、いい意味で仕事がしやすくなる。一方で、環境に揉まれていくなかで自分が仕事で大切にしたいことがブレることがある。そんなときは初心に帰ることができる場所に救われる。東京で出会うことの少ないそのような存在が「ONOMICHI SHARE」だ。ここに行くと、コンシェルジュの後藤 峻さんとの会話が弾む。どんなことをやってきたのか、そのスキルやどんなことで喜びを感じるかなど、彼の話術でどんどん引き出されていく。この自分を説明するという行為が、実はすごく重要。自分自身を理解していないと伝えられないため、自分の仕事や生き方に対する価値観を整理することにつながる。

「コンシェルジュを名乗っている以上、ただ働く空間を提供するだけでなく、“その人”が心地よいと感じる時間や瞬間を提供したいと考えています。どういう仕事をしたいかは、どのように生きるか・暮らすかの選択とイコールだったりしますよね。おすすめのお店を提案する際にその人の好みを理解していないと上手く勧められないのと一緒で、まずその人を知ることが大事だと思っています。仕事や物ごとに対する価値観や滞在中に期待することなどを引き出すことで、その人に合ったことを提案するように心がけているんです」(後藤さん)

システマティックな東京のシェアオフィスでは、ここまで個人と深く向き合う体験はなかなか味わえない。後藤さんとの対話は、尾道でのつながりを拡げるきっかけのひとつとなる。

まだテレワークが一般的となる以前、2016年からコンシェルジュとして尾道で働く後藤 峻さん。

仕事以外の共通点から仲間を見つける

東京からわざわざ地方に赴いて仕事の環境を整えたいと考えるひとつの理由は、地域の人や新しい価値観との出会いに期待しているから。東京なら、通いのお酒や音楽の場がすでにあるが、馴染みのない地域では、どこのお店に入って地域と繋がるか、よりつながりが近くなるにはどうすればいいかわからないことがある。そこで後藤さんの出番だ。彼は出会う人の価値観をヒントに頭の中でイメージを広げ、その人がどんな場所でどんな人と交われば面白いことが生まれるか、考えを巡らせる。

「2021年の緊急事態宣言中、私が地域のブルワリーを支援しようとオンライン配信で紹介する企画を立ち上げたとき、『ONOMICHI SHARE』の利用者さんでビールが好きでよくそのブルワリーに通われていたライターの方にトークのアシスタントとしてご協力いただいたんです。お互い移住者でもあったし、相性がきっといいんだろうなと思ったので。配信自体はスムーズにいき、面白いのはそのあとです。その方が所属される地域メディアの記事としてお仕事が動いてそのブルワリーさんを取材する仕事に繋がっていったんです。これは一例ですけれど、『ONOMICHI SHARE』を起点にちょっとしたことで繋がって、そこから仕事になっていくことがけっこうあるんです」(後藤さん)

後藤さんが話してくれたこのエピソードは些細なことかもしれない。しかし、人との絆の本質を述べているかのようにも思える。東京で仕事やライフステージが変わっても何らかのつながりを持てている人とは、何か趣味や価値観などの共通点がある場合が多い。それがたとえ仕事で出会った人でも、結果的に、仕事以外の共通点があるからつながり続けていたりする。後藤さんのつなぎ方もそこに近いものがあり、人として好きなものや大事にしているものを、それぞれの相性をみながらつないでいく。だからこそ、お互いを刺激したり、リスペクトし合えるようないい関係となる可能性が高くなる。

新しい環境で働くことは、どう生きたいかの証明である

さまざまな趣味嗜好を持ち、あらゆるジャンルの仕事をする人たちが日々、交わり合い交流を深めている「ONOMICHI SHARE」。そこで個人同士の些細なクリエーションが生まれたり、ときには地域のために力を発揮することもある。その代表的な出来事が2018年の西日本豪雨だ。尾道は断水になり、そのとき「ONOMICHI SHARE」でつながっていた人たちが連携して、地域で利用できる井戸やオープンしている飲食店などの情報をまとめたMAPやポータルサイトを作り更新し続けたという。このように自分の力が地域のなかでなにかの役に立ったという経験も、地域とつながる感覚になり、役割意識や居場所感覚にもつながっていく。

「『ONOMICHI SHARE』の利用者は、地域にとって資産だと思っています。ここを度々訪れる人は明確な目的がある場合もありますが、『尾道が好きだからまた来ました』という方も多いです。だけど、何度か行き来することで、“ここで何か自分もやりたい”と思うようになるのですが、そのときに自分のスキルや能力をどう都市部と違う環境のなかで生かせばいいか、悩まれることがあるように思います。それを整理し、役割としてそれらの生かし方に気づくことで、仕事や生きるうえでのモチベーションになります。さらに、顔の見える環境で人から感謝されると、より自分の居場所や存在価値を感じられるようになってくる。結局、仕事そのものではなく、人とのつながりが感じられるようになるわけですが、そういう体験が増えればますます尾道に通う理由になるんです」(後藤さん)

photo-Tetsuya Ito/by courtesy of DISCOVERLINK Setouchi

新しいアイディアを生み出しやすい環境

尾道では、街に仕事ができるWi-Fi環境が整った場所は少なく、そういう点でもテレワークで働く人にとって、十分なオフィス設備を完備した「ONOMICHI SHARE」はありがたい存在。東京ならカフェやシェアオフィスも多く、いい意味で選びたい放題だが、目の前に海を臨むロケーションは「ONOMICHI SHARE」ならでは。東京にはなかなかないポジションだからこそ、テレワークを好むクリエイターが集まってくる。

建物のすぐ目の前は尾道水道が広がっており、都内の窮屈なコワーキングスペースとの開放感は段違いだ。もともと書庫だった場所を改装しており、座席の距離感がある程度保たれた空間でのびのびと自分のペースで仕事ができる。また、こちらで使われている家具はアイディアを生み出しやすいようにと、デザイナーズアンティークで統一されており、好みの景観が見渡せる場所で仕事をすれば作業も捗りそうだ。

Zoomを使ったテレビ会議や周囲を気にすることなく仕事に集中して取り組みたい時に最適なミーティングルームはオプションで使える。2時間550円

最初に尾道を訪れる動機は「一度行ってみたかったから」で十分。しかし、リピーターになるには、街の雰囲気を好きになると同時に何度も訪れたいと思えるようなまちの人たちとのつながりが生まれるかどうかも要因のひとつとなるだろう。精神的につながっている人や場所が通う理由になる。そこに仕事があればなおいいが、仕事は結果論でもいい。後藤さんとの出会いは、これから自分がどう生きたいかを見つめ直すいい機会だ。

取材協力:ONOMICHI SHARE
撮影:もろんのん
取材・文:羽賀まり奈(Harumari TOKYO編集部)

ONOMICHI SHARE
広島県尾道市土堂2-10-24
http://onomichi-share.com/