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2019.4.25

猫×コーヒー。そこは新宿の人情派喫茶店

CAFE ARLES(カフェ アルル)

看板猫と店主ののんびりした空気は、店にも客にも伝染する。そこにあるのは新宿のど真ん中なのに、昔ながらの人情溢れる街の喫茶店の風景だった。

新宿のど真ん中に、不思議な場所がある。その名も「カフェアルル」。

店主の根本治さんが1978年に始めた喫茶店だ。絵画の収集の趣味があった根本さんが「それを飾るために喫茶店を始めた」というゆるーいはじまり。

「だからこだわりとか、想いとか、聞かれると、照れくさいっていうか、恥ずかしいっていうか。なんとなく始めたんだよね」と、なんともゆるいはじまりである。

リトグラフを中心に、芸術品で壁中埋め尽くされている店内。
店内には、根本さんの趣味で集めたヨーロッパのアンティーク家具やオブジェと混じって、お客さんからもらうと言う猫グッズの数々。

店内は絵画のみならず、たくさんの猫グッズや、お客さんやスタッフや看板猫の写真で溢れる。

「もうさ、変なやつもいっぱいあるし、ぐちゃぐちゃだよね(笑)。でも、お客さんが置いてくれって言うからさ。全部置いてたら、こういう風になっちゃったんだよな」

笑顔で毒づく根本さん。確かに、常連なら何か持って来たくなる、「家」のような気持ちにさせる店だ。

看板メニュー「インドオム」をお願いしようとしたら「そんなのいいから食べたいものにしなよ」と根本さん。ということで普通にオムライスです。

実際にお会いするとわかるのだが、根本さんはチャキチャキの江戸っ子であり、「人情派」。この店は看板猫がいるという、猫ブームの現代においてなんともコンテンツ力の高い喫茶店。だがそこにも人情派・根本さんならではのストーリーがある。

「飲み屋街のシャッターに猫が挟まってたんだよ、もう家じゃ飼いきれないから、どうせなら店で飼おうかなって思っただけ。特別猫が好きってわけじゃなくて、本当は犬派なんだけど(笑)」

根本さんに助けられた初代の看板猫「五右衛門」は、亡くなるまでの19年間、立派に看板猫の任務を果たした。

決して人に媚びず、でも人懐っこい五右衛門はたくさんのお客さんに愛された。

「五右衛門が死んじゃって、もう猫を飼う気は全く無かったんだけど、お客さんがみんな寂しがってねぇ。いろんな人に言われているうちに、こいつらの面倒見てくれないかってお客さんに頼まれたんだよ」

それが、現在の看板猫「次郎長」と「石松」だ。

背もたれに乗るのが好きな石松。

寝たり、起きたり、店の中を行き来したり、二匹は自由。看板猫というよりは「当たり前にそこにいる」。猫を飼っている人にはわかると思うが、そうそう、猫は勝手にそこにいたり、いなかったりする存在なのだ。

根本さんは何気なく始めた喫茶店をここまで続けてきた理由を、「ただ楽しいから」と言う。「いろんな人が来て、好きに過ごして。喋ってさ。なんか街の喫茶店として機能し始めたら、楽しくてね」。

不思議な雰囲気の店内には老若男女が集う。

従業員には若いスタッフから年配の方まで幅広く、客層もそうだ。

「最近は猫目当てで来てくれる人も増えたよ、なんか、みんな猫が好きなんだねぇ」

猫を目当てに来たお客様には、多少お眠であろう猫を抱えて連れていき、触らせてあげている。勉強しているお客さんは、そっとしておいてあげる。目線を上げたお客さんには、話しかける。まるで親戚の家に来たような、根本さんの声かけがじんわり沁みる。

取材が来ているのに失礼だろう?と根本さんに筆者の元に無理やり連れてこられた石松。
中国のお客さんが書籍でイラストにして紹介してくれたんだよーと嬉しそうに根本さん。なんと書いてあるかはわからないそうです(笑)

よくある「猫カフェ」ではなく、ここは喫茶店に、ただ猫がいる。

お客さんも、必要以上に猫に構ったり写真を撮ったりするのではなく、「ただそこに猫がいる風景」の中で思い思いの時間を過ごしている。

おしゃべりをしたり、コーヒーを飲んでいて、ふと気づくとソファに猫たちが現れたりする。

ランチを食べ終わった後の筆者に根本さんが「お菓子食べる?」と山盛りのお皿を持ってきてくれた。食べれませんが嬉しい。

常連さんだけでなく、一見さん、老若男女問わず、話しかけてくれる根本さん。

取材中、視覚の弱いお客さんが一人で来店中だった。「猫、触ります?」なんてスタッフが話しかけたり、退店の際は「外まで一緒に行くので捕まってください!」など、初めてアルルに来店したらしいそのお客さんに、店全体が優しい気持ちで向かっていた。とてもアルルらしい、象徴的な光景。この人情味溢れるところに、人も猫も吸い寄せられてきたに違いない。

ずっと睡眠中だった石松。起きたようです。
看板猫らしく、最後は取材席に来てくれました。

看板猫に会いに、というよりはこの猫と根本さんのいる「人情派カフェアルルワールド」を味わいに、ぜひ足を運びたい。