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2019.8.6

下北沢の片隅のカフェは、コーヒーを片手に楽しむ“ムッシュの部屋”

Hi Monsieur(ハイ ムッシュ)

再開発で大きく変わろうとしている下北沢。でもやっぱりサブカルチャーの発信地のこの街には変わらず、独特の世界観の持ち主が集まる。カフェ「Hi Monsieur(ハイ ムッシュ)」の店主もその1人だ。

駅の西口を出て、南に向かって道なりに歩くこと10分ちょっと。駅前の喧騒を抜けた住宅街の一角にある、緑で飾られた店がカフェHi Monsieur。

英語の「Hi(=やぁ)」とフランス語の「Monsieur(=ムッシュ)」を取り混ぜた、呼びかけるようなユニークな店名に、思わず興味をそそられる。

ナチュラルテイストの外観から一転、一枚扉を挟んだ先は、海外の骨董品店のようなヴィンテージ感のある内装。数席のカフェスペースがあり、店をぐるりと囲むように古着や年代物の雑貨がびっしりと並んでいる。

出迎えてくれるのは、“ムッシュ”こと店主の大石さん。Hi Monsieurは、7月でちょうど4周年を迎えた。もともと古着屋が好きだったという大石さんは、学生のころからいつか自分も店を持ちたいと思っていたのだとか。

「いざ店を始めるとなった時、古着も好きだけどコーヒーも好きだし、ヴィンテージも好きだし、一つに決めきれなかったんです。結局は、別にどれかに絞る必要もないかなとも思って、自分の好きなものを全部表現しよう、と詰め込みました(笑)」。

ムッシュの淹れる美味しいコーヒーも飲めるし、ムッシュが世界中から集めてきたちょっと個性的な雑貨や服が、見て、買える。雑貨屋でもあり、古着屋でもあり、カフェでもあるのだ。

並ぶのは、アメリカをはじめ、イギリスやオランダなど各国で買い付けてきた、“ムッシュ好み”の品ばかり。食器やアクセサリー、服、ポスター、本。家具や一点もののオブジェに至るまで、ラインナップはさまざまだ。

ひとつひとつじっくり見ていくと、なかなかに個性派のアイテムが自由に飾られていておもしろい。天井を見上げれば椅子やジョウロ、フライパン、鍋がぶら下がっているし、棚に置かれたグラスやカップひとつをとっても、独特の形、絵柄、素材、質感……。美しく整った品というより、どれもオリジナリティとどこかに作り手の気配を感じる、手作り感があるもの。

「特にこれという基準があるわけではなく、その時、自分がいいなと思ったものを買い付けているだけなんですけどね。逆に、絶対に売れるだろうなっていうものがあっても、好みじゃないものは店に置きたくないので買いませんし(笑)」

それにしても、やけに人や動物の顔が描かれたグッズが多いような……。

「確かに、表情のあるものはずっと好きでつい買ってしまうので、どんどん増えています(笑)。すごく売れるというものでもないですが、ごく稀に『いいねぇ!』って、いくつかまとめて買っていかれる方もいらっしゃるんですよ」。

並べられているものは全て個別の商品なのだが、ムッシュの「好き」の集合体であるこの部屋そのものが、彼の世界観を表現するひとつのアート作品のようにすら思えてくる。ここには、そんな彼の世界観に触れる楽しさがあり、同じ価値観を持つ人にとってはお宝であふれる場所だ。

アイスクリーム(税込 400円)とコーヒー(税込 400円)

美味しいコーヒーや人気メニューのアイスクリームは、この空間を楽しむ時の最高のお供といえるだろう。もちろん、ここはHi Monsieur。カフェのアイテムにも、一捻り効かせることは忘れない。キャンドルスタンドで提供されるアイスクリームのシュールなこと!「桃とジャスミン」「チェリーとレモングラス」など、季節のフルーツをベースにしながら、スパイスやハーブをきかせたユニークなフレーバーにもぜひ注目してほしい。

席についてコーヒーとアイスクリームを味わいながら、あらためて店内を見回していると、今しがたひとしきり全て見終えたはずなのに、目線が変わったことでまた違った面が見えてくる。

窓のサッシ、玄関やトイレのドアの縁にも小さなフィギュアが置かれていたり、よく見るとさっきの天井のジョウロの裏にデッキブラシが隠れていたり、見落としていた仕掛けが、出てくる出てくる。まだまだ、見応えはありそうだ。じっくりこの世界観を楽しんで、惹かれたものがあれば、連れて帰るのもいいだろう。

「英語とフランス語をくっつけた店名も、いろいろ詰め込んだ楽しい店というのを表現したくて。好きなものを集めた僕の家みたいなものなので、『Hi!』って気軽に入ってもらえれば嬉しいです」。

「Hi Monsieur!」の挨拶と共に、ムッシュの世界観に飛び込んでみては? なかなか、クセになりそうだ。

 

取材・文 : RIN