美人画や風景画のイメージが強い浮世絵だが、実はその中には、多くの江戸の食文化が描かれている作品も数多い。4月17日から開催される「おいしい浮世絵展」は、当時の人々のグルメっぷりに思わず感嘆してしまう、「食」をテーマにした浮世絵の展覧会だ。
今回の「おいしい浮世絵展」では、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳などが描いた浮世絵を、江戸の食文化になぞらえて4章にわけて構成している。
第1章は「季節の楽しみと食」がテーマ。食を通じ、春夏秋冬を愛でる人々の様子を知ることができる。たとえば、日本人の春の楽しみといえば「お花見」だが、歌川豊国の<見立源氏はなの宴>を見れば、江戸の昔から、人々が桜を愛でながら酒盛りを愉しんでいた様子がよくわかる。

寿司らしきものは現代のそれよりも大きく、重ねて盛り付けてあるのが現代との違いだ。
第2章では、「にぎわう江戸の食卓」として普段の食事の様子を知ることができる。たとえば、江戸の街には寿司、鰻、天ぷらなど、江戸湾で取れた食材を使った店が賑わいをみせた。

鰻を頬張ろうとする美人画<春の虹蜺>を描いたのは歌川国芳だ。写真は団扇絵のために描かれたもので、現代でいう広告のようなもの。団扇絵には美人と食が一緒に描かれることが多かったのか、国芳は冷えた白玉を器に盛り付ける<名酒揃 志ら玉>も手掛けている。

また、この章では江戸の料理書からのレシピも紹介。どんな料理だったのか、現代でもイメージしやすい仕掛けとなっている。
第3章は「江戸の名店」。料理茶屋が繁盛した江戸時代後期、両国柳橋の河内屋や八百善などを舞台に描かれた浮世絵が印象的だ。歌舞伎役者を広告塔のように登場させたシリーズは50点を数えるという。
第4章は「旅と名物」だ。東海道や中山道、日光街道や奥州街道、甲州街道など、五街道が整備されたのもこの時代。江戸時代は各地の大名が参勤交代という制度ができ、庶民もまた旅をするようになった。
東海道シリーズを手掛けたことでも知られる歌川広重や葛飾北斎は、東海道の宿場町を浮世絵に残している。そこには美しい景色だけでなく、土地の名物、季節ならではの食も描かれており、当時の風土を知ることができる。

歌川広重の<東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶屋>は、現在の静岡県にあった茶屋を描いたものだ。当時、この地域では冬にとろろ芋が取れたことから、とろろ汁を冬の名物としていたという。

本展を通じ、江戸と現代の食文化に意外な共通点を発見する人もいるだろう。一方、大量生産ができるようになり、季節を問わず多様な食物を口にできるようになった現代に失われてしまった食文化にも気づく機会になりそうだ。「春が来たぞ」と季節の到来を喜ぶ声や、嬉々と頬張る食事の香りが、浮世絵を飛び出してこちらへ迫ってくる気がする。
TOP画像クレジット:日本橋魚市繁榮圖 歌川国安 江戸ガラス館蔵
| エリア: | 東京 / 六本木 |
|---|---|
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| 電話番号: | 03-5777-8600 |
| 営業時間: |
月曜日 10:00〜20:00 火曜日 10:00〜17:00 水曜日 10:00〜20:00 木曜日 10:00〜20:00 金曜日 10:00〜20:00 土曜日 10:00〜20:00 日曜日 10:00〜20:00 祝日 10:00〜20:00 |
| 定休日: | 5月12日 |
| 公式WEB: | https://oishii-ukiyoe.jp/ |
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