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“コーヒー”が生むカルチャーを体感できる下町の焙煎所 「Single O Japan」(両国)

“コーヒー”が生むカルチャーを体感できる下町の焙煎所 「Single O Japan」(両国)

メニューは自家焙煎のスペシャルティコーヒーだけ。なのに「Single O Japan」にはコーヒー通だけでなく、近所の住民や海外からの観光客も集う。バリスタとの会話を楽しんだり、豆や淹れ方による味の違いを実感したり、コーヒー豆の生産現場のストーリーを知ったりなど。コーヒー1杯を通じて生まれる、下町のコーヒーカルチャーを体感しに行こう。

両国駅から歩いて10分ほど離れた、墨田区の一角。「Single O」の小さな看板を目印に細い路地を曲がると、まるで下町の町工場を思わせる風情ある建物の軒先に、月曜日の朝から人が集まっていた。「おはようございます!」と、爽やかな挨拶で出迎えてくれたのは、エスプレッソマシンが置かれたカウンターに立つバリスタ。ここはオーストラリア発のスペシャルティコーヒーロースター「Single O(シングル オー)」の、唯一の海外の焙煎所「Single O Japan」だ。

Single Oがここ両国に焙煎所をかまえたのは2014年。代表の山本酉(ゆう)さんは、自身がシドニーで出会った、シングルオリジンコーヒーの美味しさや、気軽にコーヒーを楽しみコーヒーを通じてさまざまな人が繋がるカルチャーに魅了され、「日本にも伝えたい」とこの地でロースタリーをスタートさせた。

今では国内随一のロースターとしてさまざまなカフェをクライアントにもつSingle O。「クライアントはファミリーだと思っています」と、Japanチームでマーケティングを担う安村大甫さんは話す。卸先と確かな絆を築き、ロースターに徹しながら業界を牽引してきた同店が、本場シドニーと同じく直接街の人と交流できる場にしようと、焙煎所を一般開放したのは2017年のこと。焙煎機が稼働していない土・日・月曜日のみコーヒーを提供する、「Tasting Bar(テイスティングバー)」を始めたのだ。

「せっかくこの場所に焙煎所をかまえているのに、一番身近な存在である街の人に飲んでもらう機会がなくて。代表の山本には『美味しさを知ってほしいのはもちろん、バリスタと話をしに来たり、散歩がてらに寄ったり、コーヒーを気軽に楽しむカルチャーをつくりたい』という思いがあったんです」。安村さんはそう話す。

確かにここは“コーヒーが飲める場”なのだが、カフェやコーヒースタンドをイメージしてくると、少し驚くかもしれない。いわゆる店舗のように入り口の扉があるわけではなく、フルオープン。焙煎所のエントランスにバーカウンターを設け、それを囲うように自由に腰掛けられる場がつくられている。

“店にいる”というより、“ひとつの場所にみんなが集まっている”という一体感が下町らしくもあり、賑やかであたたかい。脇に積まれたコーヒー豆の麻袋や奥の巨大な焙煎機を目にすると、普段はここで焙煎が行われているという臨場感が加わって、気分も上がる。

メニューはいたってシンプル。「プアオーバー(ドリップ)」「エアロプレス」「エスプレッソ」の3種類の抽出方法で淹れるコーヒーと、それぞれにミルクをあわせたもの、2種類のチョコレートドリンクのみ。その日の豆のラインナップは示されているが、淹れ方の違いや味の細かい説明は書かれていない。

どうしたものかと迷っていると、「ぜひ実際に試飲してみてください」と安村さん。そういって促された先にはサンプリングカウンターが。「Tasting Bar」を謳うとおり、今日飲める豆をすべて”テイスティング”できるのだ。

「『柑橘系の香り』とか『ダークチョコのようなコク』といった味の表現は、もちろんコーヒー通の方ならイメージできると思うのですが、ふらりと寄ってくださった近所の方やそこまでコーヒーに詳しくない方は、なかなかわからないと思います。でもそういう方にこそ来ていただきたい。素直に舌で感じて、自分の好きな味や豆の違いを知ってもらえたら嬉しいです」。好みや気分を尋ねたり、おすすめや特徴を伝えたり、お客さんとのコミュニケーションのきっかけにしたいとも話す。

実際に飲んでみると、コーヒーの甘味や、想像以上に豆によって香りや味が異なることに驚くはずだ。どんなに多くの種類の豆を揃える店に行っても、その場で味わえるのはひとつだけという場合がほとんど。同時に複数の豆を飲み比べられ、その違いをダイレクトに実感できる機会はそうそうない。

好きな味を見つけてオーダーしたコーヒーには、豆の生産者や産地などの情報と、豆にまつわる小さなストーリーが書かれた「Oカード」が添えられてきた。安村さんは、「最後にコーヒーをお客様にお届けする立場として、生産者の思いや農場現場の様子を伝え、お客様と彼らを繋ぐ役割も果たしたい」という。遠く離れたつくり手に思いを馳せると、目の前の1杯が少し深みを増したように思えてくる。

「おはよう!」という声とともに進んでカウンター席に着き、バリスタと会話を始める常連客が次々やってくると思えば、わざわざこの場所を目指してきたコーヒー好き、噂を聞きつけて寄ってみたという近所の住民、さらにはシドニーの本店を知る外国人観光客の姿も。

「嬉しいですね。うちにはフードやスイーツがないので、正真正銘、1杯のコーヒーのために来てくれるのですから」。確かに物理的には”コーヒー1杯”だが、それ以上の過ごし方があるから多くの人がここにやって来るのだろう。

豆の個性や淹れ方による変化を知り好きな味を探す楽しさ、バリスタとのコミュニケーション、生産現場のストーリー。周期的に変わる豆のラインナップや焙煎してから日が浅いフレッシュなコーヒーを飲めるのも、ロースタリーならではの楽しみ方だ。

Single Oは、ただ“コーヒーを焙煎する場”でも“コーヒーが飲める場”でもない。1杯のコーヒーを通じて、街にさまざまな人のつながりや笑顔を生むロースター。きっと“コーヒー”には、飲料であるということ以上にそういう意味があるのだ。コーヒー通はもちろん、そうでない人こそ、近くに訪れた際にはぜひそのコーヒーカルチャーに触れてみてほしい。

取材・文 : RIN

MORE INFO:

Single O Japan

エリア: 東京 / 清澄白河・両国
住所: 〒130-0014 東京都墨田区亀沢2丁目23−2
電話番号: 03-6240-4455
営業時間: 月曜日 8:00〜16:00
土曜日 10:00〜18:00
日曜日 10:00〜18:00
祝日 10:00〜18:00
定休日: 火曜日〜金曜日
公式WEB: https://singleo.jp/