HOME WELL BEING GENDER NEUTRAL その先に、知らないジブンが待っている 「スカートを穿くのもあり」EXIT りんたろー。が語る、気分としてのファッション
「スカートを穿くのもあり」EXIT りんたろー。が語る、気分としてのファッション

VOL.2 「スカートを穿くのもあり」EXIT りんたろー。が語る、気分としてのファッション

モード界のデザイナーたちのジェンダーへの挑戦や社会のあらゆる局面でのダイバーシティの尊重の後押しもあり、21世紀は男性服の社会的解放が少しずつではあるが前進している。20世紀に女性のパンツルックが大衆化に成功したように、男性にもスカートやワンピースという新しい選択肢が加ったら、もっと自由に好きな服装を探求することができるかもしれない……。そこで、ファッション感度が高く自らのブランドも展開する、お笑い芸人EXITのりんたろー。さんと、ファッション雑誌や広告などで活躍中のスタイリスト、井田信之さんが、「メンズスカートはファッションとして大衆化できるのか」を語り尽くすクロストークを開催した。

19世紀は法によって女性がパンツを穿くのが禁止されていた一方で、20世紀は女性がパンツルックなど男性服の要素を取り入れるのに大きく転換した時代だといわれている。さらに、20世紀後半に入ると、デザイナーたちは次なるファッションの開拓分野として男性のスカートの可能性を探り始めた。それからジェンダーに対するアンチテーゼは幾度かの変遷を経て、今では「ジェンダーレス」という概念よりもっと主体的な、気分や環境によってジェンダーも変化させていく「ジェンダー・フルイド」というムードにシフトしつつある。そんなファッションの変遷に触れつつ、自分らしい装いをするマインドとはなんなのか。そして、男性のスカートが日常のファッションの選択肢となる日はくるのか、2人の対談がスタート!

ギャル男のバイブスと今のジェンダー・フルイド的ファッション感は似ている

りんたろー。 / 1986年生まれ、静岡県出身。2008年4月、東京NSCに14期生として入学。コンビの解散、ピン芸人を経験後。2017年末に兼近大樹とお笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のネタ作りとツッコミを担当。

井田信之(以下井田):

ファッションにおいてのジェンダーの動きでいうと、ひと昔前は男性の服を女性が着たり、女性の服を男性が着ることで、自己表現や自分のメンタルの強さを表現していました。それが今は、男女の立場がすごくフラットになっていて、男女が同じビジョンで着られる服だったり、性別関係なく着られるデザインが増えてきているように感じます。りんたろー。さんはそういう意味でも、美容もファッションも自分のいいと思ったことをバランスよく取り入れていて、そんな流れにも通ずる感覚を持っている人なんだなと、勝手に感じていました。

りんたろー。:

ありがとうございます。本当にやりたいものを素直に取り入れていたら結果、こういうバランスになった感じですね。全然意識したことなかったなぁ。

井田:

なるほど。りんたろー。さんはどんなファッションを通ってきたんですか?

りんたろー。:

『men’s egg(メンズエッグ)』をバイブルとしていて、サーフ系やギャル男、お兄系などをひと通り通ってきましたね。基本はチャラチャラファッションと言いますか(笑)。そういうのがお笑いも含めて、今の自分のスタイルに活かされている感じですね。

井田:

それって今のファッションのムードに通ずるものがあるなと感じていて。1990年代後半のギャル男ファッションも一種のカルチャーで、考え方としては今、ギャル男とはテイストやカタチを変えて起こっているジェンダー・フルイドなファッションカルチャーと似ていることなのかなと思いました。

りんたろー。:

確かに! 今考えるとあれはめちゃくちゃ恥ずかった(笑)。でも、やっぱりそこに飛び込めるのは自分がいいと思うものを積極的に取り入れたいという強い意思があったからですかね。その新しいファッションにトライするマインドは、確かに今のジェンダーのないファッションを許容することに繋がっているのかも。いやー、でもあんな小さなTシャツよく着ていたなと思いますよ(笑)

井田:

今、またピタピタがにわかに流行ってきたりしているんで(笑)。ビッグシルエットは相変わらずトレンドなんですけど、裏ではなんかピタッとしたシルエットがいいみたいな。

りんたろー。:

へぇー、取り入れよう! 参考になりますね(笑)

性差のないファッションの本質は、自分がいいと思ったことを素直に行うこと

井田信之 / スタイリスト。1986年生まれ。2006年に舛舘和憲に師事。2009年独立、モードを学びに渡英。現在は、ファッション誌やカタログ、広告を中心に活躍。

井田:

EXITのお二人はお笑いの世界でもニューウェーブですよね。あまり周りにとらわれないで、自分たちの好きなことをのびのびとやっているイメージがあります。

りんたろー。:

お笑いは特にそうだと思うんですけど、逆張りカルチャーが強いので、誰もやっていないことをどんどん求められますからね。

井田:

いち視聴者から見ていても、そういうところも多様性だったり、性差を超える的な部分と考え方が一緒だなと感じていて。さっきのギャル男のマインドにもいえることだけれど、自分がいいと思ったことを素直に行って、精神的な解放ができていることが、性差を超えたファッションの本質な気がします。

りんたろー。:

なるほど。俺もネイルを始めた時に、絶対キモがられると思っていたんですよ。実際、俺もキモいなと思ったこともあったんで(笑)。でもやってみるとテンションが上がるし、女友達とも盛り上がることがあったり……。そういうのを体感すると、いまはリアクションも変わってきているのかなと思いますね。

井田:

男性も普通にメイクをするようになりましたもんね。ネイルもするし。

りんたろー。:

これは、スタンダードになっていくような片鱗を感じますね(笑)

ファッションはトレンドより気分を優先。だからスカートを穿くこともあり得る。

井田:

ところで、りんたろー 。さんは、自分の服をどういう基準で選んでいるんですか。

りんたろー。:

俺はすごく気分で移り変わるタイプですね。ちょっと前までバレたくないっていうのがあって、モノトーンの服を着ていたんですよ。でも最近は原色にハマっていて今日のようなテイストの服を選びがちです。流行には逆らっちゃうんですけど……。

井田:

でもそれって時代の流れで動いているっていうよりは、自分の気持ちの流れのなかで動いているってことですよね。すごく素敵ですね! ちなみにりんたろー。さんは、自分のなかでスカートの気分がきたら取り入れることはあり得るんですか?

りんたろー。:

全然あり得ますね! 昔なら女性がパンツを穿くというのがあり得なかったんですよね。それがパンツを楽しめるようになって。それを考えたら男性がスカートを穿いても全然おかしくないですよね。そういや昔、「ディオール」がスカートを発表したりしていましたよね?

井田:

スカートも何度も提案はされてきたんですけど、結構マイノリティで終わっちゃうんですよね。ファッションのニッチなところだけにしか響かなくて、なかなか浸透しないんです。例えば学生服とかもそうなんですけど、制服で女性はパンツかスカートか選べたりするのに、男性はパンツ一択だったり……。世界的に多様性だったり、ジェンダー・フルイドみたいな話をよく見かけるようになったのに、なかなか難しいのかなって。

新しい洋服の世界に触れて感覚を広げる

「Levi’s RED」の袴デニムの他にも、東京のファッションシーンで注目を集めるドメスティックブランド「KEISUKE YOSHIDA」の2019年Spring-Summer Collectionのワンピースも紹介してくれた。

井田:

今日はいくつかスカートのような見た目の洋服を持ってきました。例えば、このデニムは、マルジェラが「Levi’s RED(リーバイス・レッド)」のデザインをしていたんじゃないかと言われる2000年代前半のものなんですが、袴のようなワイドなシルエットで穿くとスカートみたいに見えるんです。

りんたろー。:

確かに昔は袴を穿いていた訳ですもんね。

井田:

そうなんですよ。それをヨーロッパの人たちが「いいね」ってなって、逆輸入したみたいな。今では手に入らないので、逆にプレミアがついています。しかもマルタン・マルジェラがデザインしたんじゃないかと言われていて。

りんたろー。:

おもろ! 予想でみんなが分かっているのがカッコいいですね!

井田:

自分も今日、実はウィメンズのワンピースを合わせていて、「J.W.アンダーソン」っていうロンドンのブランドなんですが、こういうのもりんたろー。さん的な感覚で着るのはありかなみたいな。マインドは超体育会系なんですけど、僕も結構女の子的な視点で服を選ぶことが多くて、そういうファッションの表現の自由さっていいなって思います。

りんたろー。:

シルエット、すっげー可愛い! 上がピタッとしていて。

井田:

りんたろー。さんとやっている方向は違っても感覚的には一緒で、好きなことを恥ずかしがってやらないのは嫌だなって思ってそういうことをやっていたらスタイリストになってしまいました(笑)

「J.W.アンダーソン」のレディスのワンピースをトップスとして着用する井田さん。ピッタリしたシルエットワイドなサイジングのボトムスが形成するシルエットを、りんたろー。さんは気に入って褒めていた。

りんたろー。:

なるほどー! スカートというと、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズさんもスカート穿いていますよね。ちょうどアメリカの『VOGUE』でワンピースを着て初の単独表紙を飾ったばっかりですし。海外ってもっと自由なのかなって思っちゃいますね。

井田:

確かに。そういうことを自然とやっている人と、自分の強さを出したいからやっている人もいると思うんですけど、前者の自然とできる人が最近は増えてきているような気がします。

りんたろー。:

それでいうと俺は自然な気がしますね。なんとなく「これよくない?」みたいな。

井田:

りんたろー。さんたちって自分たちがやりたいと思うことがどんどん進化していくし、世の中の人たちが賛同していてすごいですよね。

りんたろー。:

あー確かに。だから踏み出しやすくはなった気がします。最初なんて絶対賛同してくれる人がいないんで。それをするためにもっとお笑いでステージを上げようと思いましたね。このままじゃダメだと。お笑いに人を入れないとお笑いが衰退するみたいな。そういう、俺らがやるんだみたいな意識は強かったかもしれません。

2人の話にもあったように、大切なのはどんなことでもステレオタイプにとらわれず、自分がいいと思ったことを素直に取り入れるマインドである。ギャル男をはじめ、今までファッションカルチャーとして生まれてきた事象もそういう強いバイブスを持った者が集まった結果であった。その人らしいアイデンティティこそが重要であって、そこに性別も関係ない。そしてそれを認めることは他者への尊重にも繋がっていく。このようなマインドを持った者が増えれば、服装の自由を手に入れられる日は、そう遠くはないかもしれない。

りんたろー。
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撮影:浦 将志