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アクティブ派住職が目指す、お寺を超えたお寺のあり方

アクティブ派住職が目指す、お寺を超えたお寺のあり方

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DATE:
2021.05.21

お寺といえば、何かお参りをする時や、法事の時など「行事」の際に行く場所という方が多いのではないでしょうか。でももともとお寺は人々が日常的に集まるコミュニティとして機能していたのです。いつの間にか「特別な場所」になってしまったお寺を、再度地域のために活かそうとしているのが、江戸川区・妙勝寺にいらっしゃる「アクティブ派住職」さんです。編集部員・宮田が住職の仕事体験のために訪れた妙勝寺でお話を伺いました。

720年の歴史をもつ由緒あるお寺「妙勝寺」へ

訪れたのは東京都江戸川区江戸川にある日蓮宗の寺院、妙勝寺。44代目住職の髙松孝行さんが迎え入れてくれました。髙松さんには「アクティブ派住職」なる肩書きがついています。お坊さんにアクティブもなにもあるのでしょうか?そう名乗るに至った背景を伺いました。

「妙勝寺は720年前にできたといわれている日蓮宗法華経の由緒あるお寺です。まず、お寺と聞いてどんなイメージがありますか?」
正直、法事や葬式くらいのイメージがありません……。
「そうですよね。法事などで何年かに一回行くところ、またはずっと掃除しているイメージ・・・・・・。みなさん、なじみがないとよく仰られるんです。ですが、元々お寺は病院や福祉施設、学びの場として活用され、江戸時代になると地域の生活に密着したコミュニティの場だったんですよ」(髙松さん)

境内を回りながらお寺や日蓮宗の歴史を紹介いただきました

老若男女が日常的に集い、顔をあわせる。今は失われてしまったそんな光景が繰り広げられていたそうです。しかし関東大震災や東京大空襲に伴う、都市政策の一貫により都内の多くのお寺が移動を余儀なくされたのだそう。多くのお寺はそこで檀家との関係が途切れたり、地域の人々との繋がりが切れてしまったんだそうです。妙勝寺は運よくそのままこの地に残りました。そのため比較的地元の方との繋がりが強く、人が集まりやすい環境になっているんだそうです。

こちらの御堂にはお釈迦様と四菩薩という立派な仏様が祀られていました

「普段の主な仕事は、祈祷や法話、声明(しょうみょう)など。また、最近とくに力を入れているのは社会活動です」

社会活動とは、どういったものなのでしょうか?

「例えば震災があった際は、現地に行って被災者の心のケアを行っています。東日本大震災の際には宮城県女川町(おながわちょう)に赴き、仮設住宅で『傾聴カフェ』を開き傾聴活動を行ったり、地元で被災したお寺に代わって火葬場や遺体安置所などでお経をあげたりもしました。
そのほかにも終末期の患者さんや自死遺族の心のケア、子どもの貧困問題を解決するためにお供物を家庭や児童クラブにおすそわけしたりと、さまざまな活動を行なっています」

お寺には活動レポートがたくさん

いわゆる「宗教」としての活動のみならず、人々に必要とされていることをすすんで行っていく、まさにアクティブな住職である髙松さん。住職として、仏教の教え「すべての人が本当の幸せになれる道」に向き合ってきたからこそ、困った人や傷ついた人々の心に寄り添ったさまざまコトに取り組まれているのですね。

傾聴のコツは「アドバイスをしないこと」

お寺は全国各地に存在し、その数はなんとコンビニの数以上と言われています。そのため、お寺によって活動方針もさまざまで、社会活動に力を入れているお寺はまだまだ少ないのだとか。そんな中で、髙松さんが住職として社会活動に力を入れ始めたきっかけは2011年の東日本大震災なのだそう。いてもたってもいられず被災地に赴いたものの、現地で大切な方を失った方々になんと声をかけていいか分からず、無力さを感じたことがすべての始まりだったそうです。

「試行錯誤をしながら『傾聴カフェ』を仮設住宅に開きました。被災した方々の話を聞くための場所です。多くの方々がカフェに来てくれ、お話をしてくれました。ふだん被災者同士では話しづらいことも『地元ではないお坊さんになら』と話してくれることが多いんです」

なるほど。確かに、誰かわからないボランティアの人には話せないような話でも、僧侶というだけで無条件に頼ってしまいたくなりますよね。髙松さんには、たくさんの人々から話を聴いてきた経験から養われた“傾聴のコツ”があるそうです。

「基本的にはこちらからは喋りません。相手が話し終わっても、何か言う必要はないんです」

話し終わっても喋らない……?それでは話が進まないのではないでしょうか?

「傾聴を必要とする方は、アドバイスを求めているのではなく自分の話を聞いて欲しい方が大勢いらっしゃいます。その場合、相手が話し尽くし、それを聞き尽くすことが傾聴なんです。『どうすればいいでしょう?』と質問を投げかけられることもありますが、実は本人の中に答えがあることが多い。そういうときには『そのように思われるのですね』と聞き返してあげます」

むやみにこちらからアドバイスをするのではなく、相手の中にある答えを引き出してあげる。「自分で答えを見つけた」という結果は、その人の自信や勇気につながります。このコツはビジネスにおける「コーチング」と同じような考え方だと感じました。まさに日々の仕事で活かせるスキルです。

「これまでの活動で、地域の人たちだけでなく、行政の方々とも信頼関係を結べました。その関係性を活かしたことをこれからはやっていきたいですね。例えば、ここは環七通りのギリギリ外側にあるため、都内で震災があった時に解放すれば、地域のボランティア拠点として活用できます。ただの仏教の寺院という存在を超えた活動をどんどんやっていくことで、他のお寺にとってのモデルケースにもなっていきたいと思っています」

「アクティブ派住職」のそのアクティブさは、新たな道を切り拓き、今までのお寺のあり方を変えていきたいという信念からくるものなのだと、お話を聞きながらしみじみ感じました。

次回は、そんな髙松さんが普段いらっしゃる、妙勝寺で「仕事体験」したレポートをお届けします。

仕事体験レポートはこちら

MORE INFO:

妙勝寺

住所: 〒134-0013 東京都江戸川区江戸川6丁目7−15
公式WEB: http://www.myousyou-ji.or.jp/