Harumari TOKYO編集部員が気になるお仕事を一日体験する「とりあえず、やってみた」企画。今回、編集部の宮田が飛び込んだのは「住職」の世界です。お寺についてお話を伺い、理解を深めたところで住職さんが実際に日々どんなお仕事をしているか体験してみました。日本古来から続く伝統的な職業ですが、現代の私の仕事にも使えるヒントが散りばめられており、学びの多い1日となりました。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」。これはお坊さんが唱える「お題目」と呼ばれるもの。誰もが一度は聞いた覚えはあるかと思いますが、その意味について考えてみたことはありますか?ちなみに私はありませんでした。
これまで住職やお寺に深く関わったことはなかった私。興味を強くしたきっかけは数年前の法事でした。住職さんのお経を聞きながらお香を炊き上げているとふと全身が麻痺したような、そこにいるのにまるでその場にいないような感覚に捉われました。お経の力なのか、それ以外の何か不思議な力なのか……。お経ってどういう意味があるのだろう?そもそも仏教ってどういうものなのだろう?と、興味が湧き「仕事旅行社」が提案する一日仕事体験で迷わず「住職」をチョイスしました。
最初に行ったのは読経です。
数珠とお経が書かれている冊子をいただきました。
日蓮宗の数珠は人間の持つ煩悩の数と同じ108玉でできています。お題目『南無妙法蓮華経』を唱えた数を数えるのに使われ、唱えるたびに玉をひとつひとつ繰っていくのだそう。
持ち方にも決まりがあり、中指に数珠をかけて煩悩(玉)を包み込むように手を合わせます。(宗派によって数珠も持ち方も違います)
これまで特に何も考えずに数珠を持ってしまっていましたが、意味を知ることで今後より気持ちを込めることができそうです。
お題目を唱えていきます。
唱えたのは「妙法蓮華経方便品第二(みょうほうれんげきょうほうべんぽんだいに)」と呼ばれるお題目。お釈迦さまがお弟子さんたちに説いた教えが記されているものです。
「にーじーせーそん。じゅうさんまい。あんじょうにーきー。ごうしゃりほつ……」
山務員さんが叩いてくれる木魚のリズムに合わせて唱えるのですが、息継ぎが意外と難しく、所々つっかえてしまい音程も安定しません。
一方、山務員さんの読経は安定した低音で、ずっしりと腹に響いてきます。
方便品第二のあとは、「南無妙法蓮華経」も唱えます。「なむみょうほうれんげきょう」と、ひたすら同じ文句を唱えていきます。
「なむみょーほうれんげーきょう。なむみょーほうれんげーきょう」
「なんみょー、ほーれげーきょ。なーむょー、ほうれん、げーきょ」
「南無妙法蓮華経」という言葉は聴き覚えがあり、唱えるのは難しくないかと思っていましたが、一つ一つの言葉をちゃんと発音しようとすると、リズムがなかなか安定しません。
それでも気持ちを込めて唱えようとしていると、終わる頃には結構な体力を消費していました。
次に行ったのは瞑想です。
「『マインドフルネス』という言葉を聞いたことはありますか?」と髙松さん。
「マインドフルネスは悟りを開くための修行の一環として、日蓮宗では『唱題行(しょうだいぎょう)』という名で取り入れられています。今回はその修行をやってみましょう」
「瞑想を始めて少し経つと、いろんな雑念が頭に浮かんできます。それを自覚することが大事なんです。雑念を自覚して、自分の中から追い出す。また雑念が出てきたら、また追い返す……と、繰り返すんです」
なるほど、雑念が出ること自体は悪いわけではなく、それを頭の中から追い出す作業が大切なのですね。
と、コツを教えてもらったところで、いざ瞑想スタートです。
実際にやってみると、雑念が山のように湧いてきます。
「集中できているのかな」
「これいつまでやるんだろう」
「お腹すいたな」
……。
そんな雑念に気づき、振り払う作業をひたすら続けます。
自分が煩悩にまみれていることを思い知らされた時間でしたが、10分ほどの瞑想が終わると、なんだか視界がクリアになっている気がします。髙松さんによると、瞑想を行ってから7分ほど経つと脳波に変化が起こり、リラックス状態に入るのだとか。
集中力を高めたいときや就寝前のリラックスしたいなどに瞑想を取り入れることで気分を切り替えることができ、普段の生活にも役立ちそうです。
さて、次は写経です。
日蓮宗において最も大切だとされている教え「妙法蓮華経如来寿量品第十六」を筆ペンで写し書いていきます。「一字一字を仏様と思って、丁寧に書き写していってくださいね」とのこと。緊張します。
写経の時間は一時間でしたが、集中していたためかあっという間にすぎてしまいました。ひたすら没頭し、余計なことを考えなかったからでしょうか。終わった後は頭がスッキリとしています。集中することで雑念から解放される、先程の瞑想に通ずる感覚を改めて体感しました。
最後に、お札とお守り作りを体験させてもらいました。
今回作成したのは疫病退散のお札とお守りです。
筆ペンで一字一字願いとなる文字を書いていきます。
お札とお守りが完成したら、祈祷を行います。
「祈祷をすることで、お札とお守りに魂をこめていきます」
祈祷は一緒に祈りを捧げていたため残念ながら写真がないのですが、その祈祷の迫力たるや凄まじいものでした。読経の勢いや重低音から、お寺の静寂な空気をビリビリと震わせるような気迫が伝わってきました。
振り返ってみると、住職の仕事内容は普段の生活や仕事に活かせるものばかりでした。体験後も、髙松さんのアドバイスを思い出しながらときどき瞑想を行っています。
この体験で、お寺や住職さんがグッと身近なものに感じられるようになりました。髙松さん、ありがとうございました!
取材・文:宮田真雪(Harumari TOKYO 編集部)
本記事にて、以下の誤りがあり5月24日に内容を訂正いたしました。
読経をご指導いただいた方の職種を「住職」と記載しておりましたが、正しくは「山務員」となります。
謹んで訂正するとともに、読者の皆さま、ならびに関係者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
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