贈り物に求めるのは、使い勝手のよさや上質さだけではない。手に取った瞬間の高揚感や、贈る相手を想う気持ちが形になっていることも、ギフト選びにおいて大切な要素。そんな想いを完璧に体現しているのが、老舗「近沢レース」のタオルハンカチだ。
文:稲垣美緒(Harumari TOKYO)
私と「近沢レース」との出会いは、山の上ホテル(現在建て替えのため長期休業中)の中にある「ヒルトップ」というカフェだ。
テーブルに敷かれたクロスの美しさに惚れ惚れとして触っていると、サービススタッフの方が「そちらは近沢レースさんにつくっていただいているんですよ」と教えてくれたのだ。「つくっていただいているって何だろう、既製品ではないの?!」と思ってよく見ると……。
「HILL TOP」の文字がレースで編んであるではないか!その繊細な芸術性に感動したのが近沢レースとの出会いだったのだ。
明治34年に横浜で創業された近沢レースは、長年にわたってファンに愛されてきた。レースの縫製は手振りミシンで1枚ずつ製造しているのだそう。ヨレのない正確なレースを縁取りさせるには非常に高い技術が求められ、現在、近沢レース店のタオルハンカチを縫製できる職人は日本に2名しかいないのだとか……!
近年人気を集めているのが、タオル地とレースを組み合わせた「タオルハンカチ」シリーズだ。
今治タオルを使用した生地の実用性と、レースの美しさが絶妙に融合しており、使い心地はもちろん、バッグの中に一枚忍ばせるだけで、なんとなく上品——そんな存在である。
頻繁に使われることと毎日洗うことを想定されて丈夫につくられており、耐久性も抜群。
とりわけギフトとして注目なのは、期間限定で発売される「シーズンタオルハンカチ」やコラボレーションによる特別シリーズだ。
季節感や時事ネタなどが織り込まれる新作が毎月発表されるたびに即完売もしばしば。ちなみに4月発売の「ロシアンブルー」には私も心を奪われてしまった。(あっという間に完売してしまったため、リバイバルを期待したい……!)
「宝塚歌劇団」とのコラボシリーズは、宝塚ファンだけでなく舞台芸術を愛するすべての人の心をつかむ、エレガントかつドラマティックなデザインが特徴。
ダンサーがずらっと並んでラインダンスをするさまは宝塚の煌びやかなステージを表現。「月」「宙」「星」など、“組”にちなんだモチーフも刺繍されており、わかる人にはわかる、というツウっぽさが粋だ。
最近のシーズンタオルハンカチの“オモロ”代表格は2025年1月に発売された「酒」。
お酒好きの誰かにあげるのにピッタリ。おちょこやボトルと並び、するめのモチーフと「酒がのめる」の文字まで華麗に刺繍してある。よく見ると「ちどり足」「酔ってません」との文字も……。“酒飲みさん”への解像度が高すぎる。上質さと遊び心を兼ね備えたこのシリーズは、堅苦しくなりすぎない“センスあるギフト”として重宝する存在である。
贈る相手の趣味や嗜好に合わせて選べるのも、近沢レースのタオルハンカチならではの魅力。コラボシリーズは値段が少々張ることもあるが、基本的には1,000円台で購入できるのも、気兼ねなく渡せるのもいい。
高価すぎず、日常的に使え、ちょっとしたときめきや遊び心もある……お礼や手土産、職場の送別品など、幅広いシーンで選ばれる納得のセレクトだ。