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2019.5.14

営業は月に1~2回。芸人が営む幻のカフェが生まれたワケ

SACHIOPIA COFFEE(サチオピアコーヒー)

井の頭線・新代田駅から徒歩40秒の場所に、月に1~2日だけ不定期でオープンするカフェがある。‘幻’とも噂されるその名は「SACHIOPIA COFFEE」(サチオピアコーヒー)。コーヒープレゼンター芸人、平岡佐智男さんの店だ。

コーヒー好きの自分をジャッジしてほしくて

コンビではコーヒールンバとして、相方の西原朗演さんとともに活動する平岡さん。多忙ながらカフェをやり続ける理由は、やはりコーヒー愛からか。ユニークな同店の誕生ストーリーをふまえつつ、メニューの特徴なども聞いてみた。

平岡佐智男さん。「SACHIOPIA COFFEE」の入口にて

平岡さんは香川県出身。松竹のお笑い芸人として上京するも、一度引退しコーヒーの道へ。それまでアルバイトで働いていた「タリーズコーヒー」の社員となり、めきめきと頭角をあらわす。エリアマネージャー時代には、計4店舗の最高売り上げを更新したり、「アイスエスプレッソ」を開発したりと大活躍。

コーヒー愛はより深まるとともに、技術や造詣もよりプロフェッショナルに。しかし、それでもお笑いへの愛が消えることはなかった。現在の相方である西原さんから声がかかり、芸人の世界へカムバックする。

意外かもしれないが、復帰するケースは珍しいという。事務所の先輩の発案でコンビ名がコーヒールンバになったこともあり、コーヒープレゼンターとしての活動も増えていった。では、なぜ店舗まで運営しようと思ったのだろう。

実務経験をふまえた豆のレコメンドはもちろん、淹れることもできる。だからコーヒー芸人ではなく、コーヒープレゼンター芸人なのだ

「コーヒーに関するお話をするうえで、言いっ放しはフェアじゃないなって。それなら、自分の実力をジャッジしてもらえる店があれば、と思ったんです。まあ、まだまだヒマだったという部分もあるんですけどね(笑)」(平岡さん)

バリスタや接客の仕事も好きで、しかもたまたま家の近所に好物件があった。そこで、カフェ好きの芸人仲間に声をかけて2015年に「SACHIOPIA COFFEE」を開業。当初より不定期オープンだったが、一時的に営業日を増やしたこともあったとか。しかし「ガッツリやるのは違うかなー」と思ったそうで、今に至っている。

ドリップもラテも、フードもある

月1~2回の営業とはいえ、メニューは充実している。定番コーヒーは「OMEGATAKAI BLEND」だ。そのほか、この日は平岡さんの秘蔵豆による「PRIVATE BEANS」、エスプレッソ×ミルク×チョコレートの「カフェチョコ」、かわいらしいルックスの「目玉焼きLATTE」がコーヒーメニューにラインナップ。

「OMEGATAKAI BLEND」500円(税込)。だれが飲んでもおいしく飲めるようバランスよく仕上げており、マンダリンオレンジやブラウンンシュガー的な酸味や甘味が特徴だ
「目玉焼きLATTE」600円(税込)。ラテの上にピーチミルクとレモンソースをのせ、甘酸っぱくクリーミーなテイストに。スイーツ感覚でも楽しめる

料理やスイーツもあり、これらは芸人仲間のパワフルコンビーフ兼重清志さんや、おでんさんらが担当している。その中から、創業時から人気が高かったことで復活した「自家製かぼちゃプリン ア・ラ・モード」を紹介しよう。

「自家製かぼちゃプリン ア・ラ・モード」800円(税込)。しっとりと仕上げた甘さ控えめのかぼちゃプリンに、アイスやフルーツなどを添えたア・ラ・モード風の一皿

お笑いとコーヒーには‘幸せ’という共通点がある

店以外にもコーヒー活動の場を広げる平岡さん。それは一般的な情報発信だけでなく、平岡さんならではのアクションもある。よく知られているのが、バターコーヒーダイエットだ。とある書籍に書かれていたことで広まったメソッドだが、これを実践・実証した有名人のひとりが平岡さんだといえよう。

「痩せて健康になりたいと思っていたので、うってつけでした。それに、バターコーヒーダイエットに使うなら、より高品質な『スペシャルティコーヒー』の豆のほうが成分的にもいいんです。これを僕が実践することで、‘豆の違いによっておいしさは変わる’ということも広められると思いまして」

結果、20kg以上の減量に成功。服のサイズがXXLからMになり「お洒落を楽しめるようになったことが、意外にデカかったです。前は選べませんでしたから(笑)」とはにかむ

ダイエットで自身が注目されるとともに、スペシャルティコーヒーの話題作りにも貢献した平岡さん。最近は「課題発見コーヒー」という自主的な取り組みにも力を入れている。

「コーヒー好きの方がどんどん増えているのはうれしいんですけど、まだまだ都会の文化だと思う部分もあるんです。だから、地域の自治体とかに行って、僕がコーヒーを淹れる代わりにその地ならではの課題を聞かせてくださいっていう会。この5月には3カ所に行くことが決まってます」

「SACHIOPIA COFFEE」の店内。平岡さんは、お客さんともひんぱんにコミュニケ―ションをとる

「課題発見コーヒー」の回数は、カフェの開業日より多くなる月も。自己負担かつ、ギャランティがないにもかかわらずだ。しかし、それでも行く理由は? この活動が芸の肥やしとなり、コーヒーのすそ野の広がりにもつながると思うからだろうか。少なからずその目的もある。だが答えはもっとシンプルだった。「今、一番やりたいことなんです!」。

そう言って目を輝かせながら、各地のおばあちゃんたちと撮った写真をうれしそうに見せてくれた。目の前の人をお笑いで楽しませるように、自ら淹れたコーヒーで笑顔にする平岡さん。そうか! お笑いとコーヒーのライブ感には同じ、‘幸せ’という共通点があるのだ。

「OMEGATAKAI BLEND」の豆はWEBのほか店頭でも1000円(税込)で販売。焙煎や袋は、番組を縁に親しくなった「猿田彦珈琲」によるもの。そんな同店のコンセプトは、‘たった一杯で幸せになる珈琲’

コーヒールンバというコンビ名は偶然かもしれないが、なんとも素敵な響きだ。なぜなら、その活動はまるで同曲の歌詞のようだから。これからも平岡さんによる、しびれるような、香りいっぱいの、こはく色した飲みものが、たくさんの人をうきうきさせるに違いない。

【2019年6月オープン情報】6月8日(土)・6月9日(日)

取材・文・撮影:中山秀明