フリーペーパー2020年春号の特集テーマ「30歳からのやりたいことリスト」。前回に引き続き、さまざまな活動を行う「PEOPLE」に焦点をあて、ハルマリ トウキョウが提案するTO DOリストを紹介していく。
「好きなことを見つけろ」と言われても急に見つかるわけじゃない。何かを始めるにしても自分ひとりじゃ心細い。そんな人こそ新しいつながりを生むコミュニティビル「Nagatacho GRiD」を訪れてほしい。
ここは、ガイアックスが企業活動の一環として立ち上げたコミュニティビルなのだが、このビルの機能のほとんどが、自社の社員のためというよりそれ以外の人たちの“遊び場”のように設計されている。コワーキングスペースだけでなく、キッチンのあるコミュニティスペースは老若男女が集まる食堂となり、政治家や専業主婦、学生や障害者までさまざまな人が思い思いのイベントを主催している。まさに何でもありの空間だ。
「これから先、会社という枠組みはどんどんなくなっていって、すべてはコミュニティに近づいていくと思うんです。皆さんが熱狂してコミットしてくれる“つながり”があれば、社員とか関係なく新しい価値を創造するムーブメントが生まれる。それが会社だけでなく社会にとって素晴らしい活動になると思っています」
そう語るのは、このビルのコンセプトから設計までを手がけたひとりである、ダビドバ ナタリアさん。彼女自身も、普段の仕事は家でやって、気になるイベントがあるときにだけ会社のあるこのビルにやってくるという。
「今日はクッキングレッスンなのか? 上映会なのか? 編み物サークルなのか? 読書会なのか? 今日来るのはコーヒーの天才? コミュニティランチに参加する人は誰かな? ドキドキ!それがGRiDの特徴ですね。ワクワクする“雑居ビル”という感じ(笑)」
すべてのイベントは、Nagatacho GRiDのアプリで会員登録をすると参加できる。だから、「好きなこと」に出会い、気の合う仲間を見つけ、その仲間と一緒に活動し、さらにつながりの輪を拡げていく、そのすべてのプロセスがこのビルの中にある。
「人はそれぞれ小さなことでも自分のできることがあるから、“つながりたい”という気持ちさえあれば、あとは全部このビルの人たちのネットワークでどんどん新しいことが生まれていくんです」
セレンディピティという言葉がある。偶然、素晴らしい幸運に出会ったり、思いがけないきっかけで自分の未来が切り開かれたりするような体験のこと。Nagatacho GRiDは、そんなセレンディピティに溢れた場所になっていくのではないだろうか。
撮影:河野優太
30を過ぎると凝り固まってくるのは頭よりもカラダのほう、さらに言えば「顔」だ。なんでもこなせるようになって、スマートと言えば聞こえはいいけれど、すべての仕草、表情、感情が安定しすぎて変化がない。でも、顔って自分らしさを表現する上でとても大事なファクターなのだ。「小顔ワークアウト」を提唱する日本で唯一のパーソナルフェイストレーナー、木村祐介さんのアプローチはとても興味深い。
「たとえば、“リフトアップ”のために大事なポイントは、口と足のつま先なんです。顔につながる筋膜は、実はつま先から顔までぐるっと一体となってつながっています。そう考えたときに唯一空洞となってそのつながりが途切れるのが口の空間。なので、口を意識的に閉じて、つま先に力を入れることで、顔からカラダ全体にテンションが掛かっている状態を作れるんです。それが顔を引き上げることにもつながります」
顔をカラダとのつながりの中で考えていく。顔を引き上げるスイッチがまさかそんな離れた場所にあったなんて、自ら気づける人はほぼいないだろう。さらに木村理論では、肩凝りがひどい人は肩凝りするように、顔がたるんでいる人は顔がたるむように脳が指令を出してしまっているのだという。
「大切なのは、自分がそうなるようにカラダが動いているという自覚です。30代になって老けたわ、という人は自分が老けるように物理的に動いているんです」
つまり最近鏡を見て自分の顔が疲れているなと思ったら、それは環境や生活習慣もさることながら“自分の意志で”そういう風に振る舞う指令を脳がカラダに出しているということ。逆に言えば、遡って自分の意識を変えるところから顔のトレーニングは始まるのだ。
「そのときに大切なのは普段の所作。どうしたら顔が引き上がるか、普段の自分の脳からカラダへの指令を変えることです。そのためには、自分が綺麗、美しいと思う人の姿勢や動き、しゃべり方や所作をイメージすること。これは何より大事でそこに美的センスが必要だと思うのです」
姿勢、動き、喋り、所作は、自分を自分たらしめる要素。そこに意識を持っていくことは、自分の現時点での生き様を知ることにほかならない。これこそまずは30歳になったらやりたい、そしてやるべきことではないだろうか。自分の顔を見つめ直す。そこからつながるカラダをどう動かし、今どんな姿で生きているのか、そしてこの先どういう姿になっていきたいのか。そこで自分の美的センスを最大限に意識したら、なりたい自分の姿は“理想”ではなく30代の“現実”に変わるのだ。
撮影:南方篤