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32年前に描かれた“現在”の東京。今こそ『AKIRA』を観るべき理由

32年前に描かれた“現在”の東京。今こそ『AKIRA』を観るべき理由

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DATE:
2020.04.23

次から次へと新作映画が作られるなかで、月日が過ぎれば作品への注目度も薄れていく、それは致し方ないこと。けれど、何年経っても存在感を示し続ける王者的作品もあります。アニメーションの『AKIRA』はそのひとつです。そんな『AKIRA』が4月24日に「4Kリマスターセット」としてリリース! もともと凄い映画が、現代の技術によってさらにどう凄くなったのか、改めて『AKIRA』の世界をふり返ります。

製作期間3年、総制作費10億円、32年前の映画
破格の数字も凄いけれど、何よりもその世界観が凄かった!

『AKIRA』は1988年に公開されたアニメーション映画で、原作はヤングマガジン(講談社)にて連載していた大友克洋のコミックです。原作者自身が監督を務め映画化に。コミック自体もマンガ史に残る傑作としてその名を刻んでいますが、映画化の何が凄かったのかというと、製作期間は3年、総制作費は10億円。そして何よりも、当時のアニメーション制作スタジオの枠を越え、現在も第一線で活躍している実力派スタッフたちが結集して制作されていることです。

破格の数字も目を引きますが、人々を惹きつけたのはその独創的な世界観でした。ディズニーでもない、スタジオジブリとも違う──2019年の近未来を舞台にした壮大なSFの世界。そこで描かれるのは、若者たちの青春ドラマ、政治と宗教、破壊と再生、テクノロジー、過去と未来……そしてアクション。あらゆる要素が緻密に紡がれた観たことのない物語であり、唯一無二ともいえるその世界観は、色褪せるどころか月日を重ねるごとにより輝いていっているようにもみえます。アクション映画の流れを変えたと言われるハリウッド映画『マトリックス』の生みの親・ウォシャウスキー監督をはじめ、数多くのクリエイターに影響を与えているのも納得です。

そんな『AKIRA』が4Kリマスターとしてよみがえるわけですが、何がどう新しくなるのか──。35mmマスターポジフィルムを1コマずつ4Kスキャンしてデジタルデータにするなど、アニメがデジタル化される直前の時代に生まれた作品を、現代の最新技術を使って、映像も音響も音楽もアップデートした。32年後の技術を使ってまだ進化できるって、ほんとどれだけ凄い映画なんだよって思います。

 

『AKIRA』はSFアニメで、青春映画で、アクション映画で
どこか哲学的なテーマも内包しているヒューマン・ドラマ

『AKIRA』というタイトルも、どうやら凄い映画であることも、何となく知っているけれどまだ観ていない人の中には、小難しいストーリーなんじゃない? と思う人もいるのではないと思います。なので、簡単にストーリーに触れておきますね。

主人公の金田、その仲間の鉄雄と甲斐、彼らは職業訓練高校に通う健康優良不良少年で、仲間と一緒にバイクを乗り回しているやんちゃなティーンエイジャー、どこにでもいる悪ガキです。ところがある日、しわだらけの奇妙なこども・タカシに遭遇したことで鉄雄に異変が起き、不思議な力が覚醒。その力によって世界が危険にさらされることになります。そんな鉄雄を金田は救おうとするけれど……。

また、タカシにもキヨコとマサルという仲間がいて、鉄雄の力に危機感を抱いた彼らは最高機密といわれる“アキラ”のもとに向かいます。その“アキラ”こそが物語の核になっているキャラクターであり、この映画がなんか難しそう……と思われているところでもありますが、物語としては3つのストーリーが同時に展開していると捉えると分かりやすいです。

1つは、反政府ゲリラとアーミーが対立するストーリー。もう1つは、不思議な力を持ったタカシたちが何者なのかを明かしていくストーリー。3つ目は、金田が鉄雄を救うために奮闘するストーリー。その3つが絡み合いながら、タイトルになっている“アキラ”とは一体なんなのか、何者なのか、徐々に明らかになっていきます。

 

この映画の舞台はオリンピック直前の2019年!
『AKIRA』の世界と現実世界の何が同じ?何が違う?

『AKIRA』の世界では、1988年7月に関東地区に新型爆弾が使用され第三次世界大戦が勃発します。31年後、崩壊した旧市街区域は封鎖され、人々は東京湾上にメガロポリス=ネオ東京を構築。翌年にオリンピック開催を控えた2019年のネオ東京は、かつての繁栄を取り戻しつつありました。

現実の世界では第三次世界大戦は起きてはいないですが、大友克洋は30年以上も前に未来を予言していたのかとドキリとするような一致ゆえに、映画のなかで描かれる政府への暴動、都市の封鎖、未知の力による世界崩壊の危機は、今起きている社会背景とどうしても結びつけてしまう……。2020年のこのタイミングで『AKIRA』を観る意味を考えずにはいられないのです。

そして、この映画のラストはとても意味深な会話で終わっていて、そのラストをどう捉えるのかは、32年経った今でも、観た人それぞれがそれぞれの解釈をし続けている。答えはあるようでない、でもメッセージは確実に存在する、結末を探し続けている映画でもあるのです。

(c) 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

32年前に近未来として描かれた『AKIRA』の世界に、時代が追いつき、リアルな2020年を生きるなかでこの映画を観る。すでにその世界観にシビれている人も、新しくなった4Kリマスターを観たらもっとシビれるはず! すでに観ている人も、これから観る人も、もう一度『AKIRA』と出会う時です!

 

文/新谷里映