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小説家・羽田圭介×占星術研究家・鏡リュウジ 「人生に占いは必要か」を考える

VOL.3 小説家・羽田圭介×占星術研究家・鏡リュウジ 「人生に占いは必要か」を考える

2021年8月より月1で放送している「スーパーフラットトーク」。 MCを務める羽田圭介さん(以下敬称略)と、今起きているカルチャーのムーブメントのなかから、毎回ひとつのテーマを探し、今までの生き方を視座転換することを目指したオンライントーク番組です。 2回目の放送となった今回は「占い」をテーマに、「当たる、当たらない」だけじゃない、ちょっと違った視点で占いについて考えてみました。今回は、進行を担当させていただいたHarumari広報の真鍋がライブの様子をレポートでお届けします。

真鍋「羽田さんは占いをされたことありますか?」
羽田「あんまりしたことないです。一時期は、合理的という括りでメディアに紹介されたりしたくらいなので、あんまり信じてないですね。」

冒頭から占いに対してはやや懐疑的な様子を見せた羽田さん。科学的根拠がないと言われる占いをあまり信じていないようです…。果たして、そんな羽田さんの占いに対する価値観は変わるのでしょうか?

今回は、西洋占星術研究家で数多くのメディアなどに出演されている鏡リュウジさん(以下敬称略)をゲストに迎え、占いのスペシャリストとともに番組を進行していきました。

雑誌の“星占い”や毎朝の情報番組で流れる“今日の運勢”など、私たちの身近なコンテンツとして、占いは古くから親しまれてきました。まずは占いの種類について解説します。
編集部がリサーチをしたところ、占いは大きく4つのタイプに分けることができます。

① 個人データを元に占う(誕生日、血液型など)
② 偶然出たものから占う(タロット、トランプ、易など)
③ 心理学的根拠から占う(心理テストなど)
④ 占い師の特殊能力で占う(水晶球占いなど)

鏡さんによると、これまで日本では「命(生年月日など)、卜(タロットや易学など)、相(手相、人相など)」の3つに分けられることが多かったものの、はっきりとした分類の根拠がないそうです。
これら4つの分け方は割と最新の分類だと解説いただきました。
(もっと詳しく知りたい方→占いの種類と選び方

一方で、西洋の分類は日本と異なるそうです。
鏡「西洋では2種類のはっきりした伝統があって、ひとつは『インスパイアドディビネーション』。ディビネーションとは占いのことで、神から直接メッセージが来る、神託のようなもの。もうひとつは『アーティフィシャル』。人工的な占いと言われていて、いわゆる占いのこと。星を見たりカードを使ったり、人工的な手段を使って神々からのメッセージを推論していく。この2種類が西洋においては考えられてきました。」
鏡さんによると、最近のアメリカやイギリスの若者の間では、SNSを使った占星術やタロットへの関心が高まっていて、占いは今も昔も世界的に親しまれていることに変わりはないといいます。

人間は小さな出来事に意味を与えてきたい存在

真鍋「知れば知るほど占いの世界は奥深いですが、なぜ私たちは占いを当たった!と思うのでしょうか?」

鏡「人間って何か物語を作ったり、小さな出来事に意味を与えていきたい存在だと思う。
自分が生まれてきた過去、現在、未来があって、そこにひとつのストーリーを自分たちで作っているじゃないですか。恋愛や結婚においても、たまたまかもしれないけどここ(出会いや過程など)に意味があったと思いたい。それに対して合理的な言葉や科学の思考だと、どうしても意味付けできないじゃないですか。そのために、いろんな宗教があったり、その時々の価値観が出てきたり、そういうものを古い時代からやっているのが占いかなと思います。」

なぜ占いを当たると思うのか?に対しての明確な答えは、鏡さんですら見つけられていないようです。
そして、私は鏡さんの過去の記事を読んで気になったことを聞いてみました。

真鍋「鏡さんは元々占いに懐疑的だったという記事を拝見したのですが…。」

すると、衝撃的な返答が…。

鏡「懐疑的とか今でもそうですよ。(占いを始めた)最初の方が信じていて、だって冷静に考えて当たるわけないじゃないですか。星の動きとかカードとかそういうものが何かを表すとか、合理的に考えたらそういうのはないわけです。それにもかかわらず人は占いをやってきた。人は占いをする動物だと思っています。」

「人間は小さな出来事に意味を与えていきたい存在、人は占いをする動物」という発言を聞いて、個人的になんとなく腑に落ちました。確かに人間は、神や宇宙、運命など、本質の分からない神秘的なものに自然と惹かれているような気がします。

ここまで鏡さんの話を聞いた羽田さんが「絶対的に当てる占い師がいるというよりも、受け手が解釈をするという感じですか?」と質問しました。

鏡さんは、占いを「占い師と占いを受ける側の共同作業」と考えているそうです。
鏡「読み手がイマジネーションを働かせて、こういう風に共感できるとか、逆に反発するとか、そういうところで楽しめる。対面の占い師は、クライアント(客)の反応を見ながら言葉を変えていったりするわけで、占い師側もこういう意味だったのかと、読み変えていくこともできる。『占いは当たるけど、どんな風に当たるのか分からない』ともよく言います。」

「占いがどんな風に当たるか分からない」という鏡さんの発言に、
占いに従事する方に「分からない」と言われるなんて…と思わず驚きの反応。

羽田「自分は占ってもらったことはないけど、例えば小説の打ち合わせで、ベテラン編集者と打ち合わせることもあれば、小説に慣れていない新人と打ち合わせることもある。そこで的外れなこと言われたと思っても、自分のリアクションでそれはこういった理由で違うと言っている間に、自分の考えが整理されていくことがある。それは自分にとっての占いに近いのかなってちょっと思いました。」
最初は占いの存在に懐疑的だった羽田さんでしたが、ここで少しずつ占いとの共通点を見出してきました。自らの経験と、占いを受ける側の「解釈の仕方」。つまり、言われたことを自分で整理していくと言う過程が似ていると感じたようです。

占いが役に立つのは、役に立たないから。

鏡さんは最近、暮らしを豊かにする“ライフハック”や“PDCAサイクルが大事”など、人間は役に立つもののことばかり考えていて、このままだと人間の心は痩せ細っていくのではと感じているそうです。
鏡「占いが本当に役に立つのは、多分役に立たないからです。星の象徴をぼんやり考えたりとか、カードをめくって当たるかわからないことをやったり、直接的に役に立たないような遊びというんですかね。そういうところが占いの1番好きなところかなと思う。我々は危険な遊びをしているということを、占い師側も自覚しておかないといけないなと思いました。」

それでも占いは、悩んでいる時や困っている時にある種の指針を与えてくれるような、人の役に立つ効果はきっとあると思います。

羽田「役割とか役に立つということばかりの世界とは別の、抜け道みたいな感じなんですね。人間が合理的とか、これが真実だと思っていることは何か間違っているかもしれない。占い大事だと思いました。」
ここまで鏡さんの話を聞いて、一気に考えが変わったようです。

占いと心の関係を考える

占いは、当たっているか、当たっていないかという話以上に、占い結果に納得したり驚いたりといった心理的効果が大きいと考えています。
続いては占い師とは別の立場で心のケアに携わるスペシャリストとトークを展開しました。

公認心理師の山名裕子さん(以下敬称略)にご登場いただきました。
公認心理師とは、2019年に新設された国家資格で、カウンセリングなどを通して心のケアをしていく仕事です。

占いとカウンセリングの違い

山名さんによると、カウンセリングではアドバイスはするものの、何かを断言することはしません。それに対して占いはズバリと断言的なことを言ってもらえるという違いがあります。
しかし、共通点もあるといいます。
山名「カタルシス効果といって、人って何か悩みや苦悩を誰かに口に出して話すことで浄化され、心が楽になるという作用があります。占いでもカウンセリングでもその効果は得られるでしょうし、あとは自分だけの時間を持つことは日常に生きていたらなかなかできないと思う。友達とのコミュニケーションで自分の話だけをするわけにはいかないし、そういう意味でじっくり自分と向き合って自分を知る、自分の話をするという点では共通しているかなと思います。」

特にコロナ禍の1年で「友達がいない、カウンセリング以外に自分のことを話す場所がない」という人が増えたそうです。山名さんは、占いやカウンセリングに行ってみると、違った角度で質問されたりするので、新たな発見が得られるとも語りました。

解決策や助言が得られるカウンセリングを求める人もいれば、占いで断定的な言葉を求めている人もいるでしょう。何かを言い切ってもらうことを望む人のなかには、占い師への依存と言うトラブルも潜んでいます。そこで、占いにハマってしまう人への注意点なども伺いました。

山名「自分の選択や決断に自信が持てない人はすごく増えていると思う。全てを占いでとなってしまう人は実際現実にもいると思うけど、遊び感覚で楽しんで行けるのであれば、ストレス発散になるので素晴らしい利用の仕方だと思います。行かないと落ち着かないような状況になってきたら、一度心のケアのカウンセリングを利用していただいた方がいい。」

これに対して羽田さんは
「占いの場合、良くない占い師にあたって危ない言葉をもらうと悪いことが起こるかもしれないが、
悪いことが起きにくいカウンセリングの方が、占いよりも上位じゃないか?カウンセリングを、占いみたいに路上で机置くように身近なものにすれば安全なんじゃないかなと思うんですけど、そういう風に広がったりはしないものですか?」と質問を投げかけました。

占いとカウンセリングの共存が大切

山名「カウンセリングは資格がなくてもカウンセラーって名乗れるんですよね。経験値でされている素晴らしい人もいるけど、学問としてきちんと学んできた人でないと、カウンセラーに依存するケースも中にはあるので、そこはちゃんと見極めてほしい。そういう意味では、占いもカウンセリングも相性が大事になってくる。ただ、占いのほうが上とかそういうことはないので、それぞれ共存していくことが大事だと思います。」

山名さんによると、日本のカウンセリングの利用率は欧米の10分の1以下だそうです。
海外では少しモヤっとした時に話しに行くという文化が進んでいて、日本より閉鎖的ではないので、その文化を変えていくことが山名さんの目標だと話します。

山名「占いにしてもカウンセリングにしても、自分では気付かないことにハッと気付く経験ってすごく重要。第三者の他人ということが大事だと思っていて、そういう人に聞いてもらうことでアドバイスが得られると思います。」
カウンセリングも占いも、悩みがある時だけにいくのではなく、「何か話をしたい、コミュニケーションを取りたい」と言う気軽な気持ちで利用してみるのもいいかもしれません。

羽田「『人間は他人のことに気付くのは当たり前だけど、自分のことには気付かない。』まさに山名さんにも同じようなことをおっしゃっていただいて、うまくまとまったなと思います。」
と2人の話を聞いて、さらに新たな発見が得られたようです。

まとめ

羽田「占いに対して懐疑的な鏡さんが、年々昔より懐疑的になっていくという発言に納得させられました。共同作業で、受け手が言われた言葉を整理していくというプロセスが大事だと思った。悪い害をもたらす占い師を除き、それ以外の占い師はあっていいのかなという風になりましたね。小説と占いって似ているかもしれないと思いました。」

今回の放送で、羽田さんの占いに対する「視座転換」があったようです。
占いやカウンセリングをうまく取り入れることで、今まで知らなかった自分に出会うきっかけや、心の成長につながるかもしれないと私自身も放送を通して感じました。

詳しくはぜひ番組動画をご覧ください。

文:真鍋果夏(Harumari広報)