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2019.6.30

ライブハウスのそばには必ずいいカフェがある。新代田「RR」で小さなハッピーをチャージ

RR -coffee tea beer books-(アール・アール)

いいライブハウスとカフェがあるところは、いい街だ。海外のバンドマンの間では、そんな定説があるらしい。新代田のカフェ「RR-coffee tea beer books-」は、それまさに証明している名店だ。

東京随一のカルチャータウン下北沢、のトナリ。新代田駅周辺はそんなことを感じさせないほど、ごく普通の暮らしが息づいている。駅を出ると、目の前を我が物顔で横切る環状七号線。その環七に面し、京王井の頭線と交わる角に建つ2階建てのビルに「RR(アール・アール)」はある。駅からわずか徒歩10秒。すぐ近所でライブハウス「FEVER(フィーバー)」を営む西村さん夫妻が立つ、小さなコーヒーショップだ。

なるほど、いわれてみると、ロゴマークは地図になっている。「RR」という名前は、京王井の頭線の「Railway」と環七の「Road」から。「ライブハウスをやっているので『ロックンロール(Rock’n’Roll)でしょ!』ってよく言われるんですけど(笑)」。そう言って笑う夫の仁志さんと、隣でやさしく微笑む妻で店長の彩さん。穏やかなふたりの表情につられて、ついついこちらも頬がゆるんでしまう。

喜怒哀楽があふれる、街のコーヒーショップ

都心によく見るモノトーンのコーヒーショップとは違った、木を基調にした店内。雑貨店のようなぬくもりが、ふたりのやわらかな雰囲気と重なって、また、ニンマリしてしまった。

大の音楽好きで、10代のころから下北沢のライブハウスで勤めていた仁志さんが独立し、FEVERを開いたのが10年前の2009年。当時もこの街は、あくまで“住むための街”だった。「コンビニとラーメン屋さんくらいしかなくて。コーヒーを飲んだり、軽く仕事ができたりする場所がほしいと思っていました」。

聞けば仁志さんは、コーヒーショップに対してちょっとした憧れを持っていたという。「海外では、ライブハウス近くのカフェでバンドマンたちがよく打ち合わせをするらしいんです。楽しかったことも反省も時にはシビアな議論も、なんでもそこで話す。そんな話を、頭の片隅でずっと覚えてたんですよね」。

いいライブハウスの近くには喜怒哀楽あふれるコーヒーショップがあり、いい街になるというセオリーがあるらしい。確かに、ちょっとかっこいいかもしれない。

特別じゃなくていい。でも、小さなハッピーに出会える場所

元駄菓子屋だった物件を偶然受け継ぐことになったふたりは「自分たちがこの街に欲しいもの」、そして街のひとやバンドマンたちが集まれる場所を作り始めた。

2階には、黄色い椅子が印象的なやはり木のぬくもりあるアットホームなカフェスペース。「カフェに寄ったら、いい作品が見られちゃった」。そんな風に喜んでもらえたらと、ひと月の半分は展示も行っている。あえて展示を半月しか行わないのは、RRの“プレーン”のシンプルな空間も過ごしてもらえるように。

「外観は、やや入りづらいといわれることもあるんですけどね(笑)」(彩さん)。それでも、一度入ってみればなんともまったりとくつろげる空間が待っている。駅周辺のほとんどを民家が囲む新代田。「こんな風に過ごせる場所がほしかったんだよね」、なんて街のひとの声が聞こえてきそうだ。

「RRブレンド」(税込400円)。右:「本日のアイスクリーム」(税込 450円)は約5種類の中から2種類が選べる

自家製アイスクリームは、彩さんがかねてから作りたかったメニューだそう。「ミルクジンジャー」「ミントミルク」など個性的なフレーバーもあるが、ふたりがおいしいと思うものを素直に作る。「レモンカードマスカルポーネ」には粗挽きブラックペッパーをハラリ。レモンの酸味を引き立てるペッパーの華やかさが絶妙!

「来てくれた人に、小さなハッピーを持って帰ってもらいたい」。
くつろげる空間も、ちょっと心温まる展示作品も、手作りのおいしさも、全てはそのためだという。

「新代田って不思議な一面があって。小さい街なんですけど、バスの発着点だったり、ここまでタクシーで出てきて電車に乗り換える人が多かったり、ちょっとしたターミナル地点なんです」(仁志さん)。子連れママたちの下北沢への散歩コースの中継地点でもあるのだそう。わざわざこの街を目指して来る人は多くはないが、乗り換えの隙間時間や軽くひと息つきたいとき、みんなふらりとRRに立ち寄っていく。

新メニュー「モカ+シナモンアイスフロート」(税込650円)

きっとRRは、新代田を生活圏内にするひとたちにとって、ごく何気ない日常の中で立ち寄るのに心地いい場所なのだろう。この店には今、街の日々の喜怒哀楽が集まってくる。そう、仁志さんが憧れていたセオリーが現実のものとなっているのだ。ライブハウスのお客さんやバンドマンも、RRに訪れるという。

ひとの温もりと小さなハッピーがチャージできる一軒のカフェを中心に、いい街が作られている。わざわざ、じゃなくていい。“もし新代田に行く機会があれば”ふらりと立ち寄ってみてほしい。

取材・文 : RIN