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本はおまけ。“出会い系本屋”「SNOW SHOVELING」が描くポストコロナの本屋像

本はおまけ。“出会い系本屋”「SNOW SHOVELING」が描くポストコロナの本屋像

コロナ禍を受けて、リアルな場所に足を運んで人と向き合うオフラインの体験こそ価値があったと実感している人も多いだろう。そんな思いを如実に感じた場所のひとつが、本屋である。その中でも本のセレクトや独自のサービスで個性を表現する独立系書店「SNOW SHOVELING」の取り組みは面白い。 絶賛運営中のユニークな本の宅配サービスとそれを通して伝えたい人との向き合い方について店主の中村秀一さんに話を訊いた。

東京の“出会い系本屋”の本の宅配サービスとは

駒沢通りの深沢不動交差点からほど近くのビルの2階でひっそりと営業する「SNOW SHOVELING」。空間には、約7000種類以上の本がジャンルレスに並べられているが、この書店の大きな特徴は本と出会うだけでなく、人との交流やおしゃべりを歓迎しているということ。店主の中村さん自らが、“出会い系本屋”と呼んでいるように、向き合って並べられたソファーのレイアウトなど、コミュニケーションを活性化する演出がちりばめられている。そんな同店も4月の緊急事態宣言を受けて以降、お店の営業をクローズした書店のひとつ。その代用として生まれたのが、「Umber Read(ウーバーリード)」という本の宅配サービスだ。

Umber Read 2,300円

心の扉を開く経験を買う「Umber Read」

「Uber Eats」を文字った言葉通り、中村さん自らが自転車などを使い(公共交通機関を利用せず)自力で自宅まで本を配達してくれるもの。4月上旬からスタートしたばかりだが、多い時では1日9件も配達が入っているそうで、世田谷・目黒エリアで大反響となっているそうだ。

「本屋に行けない状況でも、これまでの『SNOW SHOVELING』 通り、偶然の本との出会いを提供したいと思いからスタートしました。その意図は、書店で本を“選ぶ”のではなく、本を“待つ”ことで未知の本に出会える場所を提供するということ。A〜Dの4つのセットの中から選んでもらい、僕が選書をして届けるスタイルです。初めましての人もいますし、ステイホーム中なので『久しぶりに人に会いました』みたいな方もいらっしゃいます。なかには急に突っ込んだ話になることもあり、皆さん人との対面を渇望しているんだなと実感しています」

Aセット:家にいることを楽しむための3冊、Bセット:とにかく時間があるから、せっかくなので長い物語を読んでみる3冊、Cセット:シェフの気まぐれサラダが嫌いな店主じゃなくてNくんのゴリ押し3冊、Dセット:Blinda Date With a Book 覆面本3冊セット

上記のようにA〜Dのテーマはフワッとしており、具体的に何が入っているかは未知。電子書籍やAmazonによって読みたい本が直ぐに手に入るようになった現代において、タイトルの分からない本を届けてもらう価値とは何か。読書欲を掻き立てる未知のセットには中村さんのこんな狙いがあった。

「AIとかアルゴリズムは正確性もあり便利な仕組みですが、今回の『Umber Read』や本屋に行って本を選ぶのは、良い意味で想定外のコトが起こる行為だと思うんです。『この人は何でこんな本を勧めるんだろう』など、良い意味でエラーが起こりやすく、その偶然がもたらす出会いが価値だと感じています。あとは、アルゴリズムの恩恵を受けてしまうと、どうしても思考がルーティン化してしまって受け身になってしまう。それが自分自身で能動的に動いた結果だと、仮にそのチョイスが失敗だったとしても体験を買ったとして、ポジティブになれると思っています」

「SNOW SHOVELING」の近所のカレー屋、amiさんに「Umber Read 」を納品。
「Umber Read」は中村さんが自らお届け。お客さんと駒沢公園で待ち合わせている配達風景。

たった10分で店主に人生を語る「レコメン堂」

本を媒介にして経験を提供してくれたり、人とのコミュニケーションを手助けしてくれる「SNOW SHOVELING」のサービス。「Umber Read」とほぼ同じタイミングでスタートした「レコメン堂 ONLINE」というサービスもまた、本屋の役割を超えてセラピーを受けている気分になれる。

レコメン堂 ONLINE (面談10分、本1冊) 1,900円

「レコメン堂」とは、店主とGoogleのハングアウトを使って10分の面談をし、後日郵送で本が届くという選書サービス。もともとは地方でのPOP-UPなどの巡業先で、対面式で行っていたものとのことで、今回それがオンラインで実施することとなった。こちらも開始とともに評判があり、このカウンセリングワークが中村さんの日課になっているという。このコロナ禍であらゆる書店が導入し始めた選書サービスだが、他と違うのは、面談では本の話を一切しないということ。表向きには自分に合った本が届くサービスだが、その本質は選書ではなく人とのコミュニケーションだった。

「10分間の世間話をしていると、結構な頻度で打ち明け話になることがありました。要は初めて会う本屋の店主に何故かとってもパーソナルなことを話してしまうみたいなことが起こるんですね。そこから“他人同士だから話せる”ということを学び、価値となっていることに気付きました。10分間であれ、大袈裟に言うと初めて会う人に自分の人生をかいつまんで話しているのと同じ。あくまで選書はおまけで、話すことでお客さんが自分自身と向き合うきっかけになればいいと思っています」

「レコメン堂」のお届けイメージはこちら。

このサービスの延長で、「占わない」というカウンセリングもオンラインで開始を予定しているという。こちらも “占わずしてその人の悩みの相談に乗る”というカウンセリング的なサービスで、以前、店頭で提供していたもの。ネットで検索すれば白か黒か答えを教えてくれる時代でも、生きていく中で日々浮上してくる悩みの答えを導き出すのは困難だ。中村さんのサービスで自分自身と向き合うプロセスを一緒に行うことで、言葉や本を通して得られる経験と同じようなものが味わえるかもしれない。

店頭で「占わない」 を行う中村さん。©きくち よしみ

最後に、人との交わりに価値を置く中村さんに、このコロナ禍で感じていることを訊いてみた。

「小売とかお店みたいな形態は今すごくパラダイムシフトが起こっていますよね。既存の成功論とか今までこれが間違いなかったとことが壊れてきているので、その状況を楽しむということはできなくても、受け入れられないと淘汰されていくんじゃないかと感じています。個人的には無茶苦茶モチベーションが上がっていて、人の消費行動やルール設定が変わり始めると思うので、世の中で起こっていることに敏感になっています。ひょっとしたら世界がこうなるかも、みたいなシミュレーションを日々していますよ」

ユーザーの心の核心はつかないけれど、サービスによって考えるプロセスの中で、自分自身で答えを導き出すのを促してくれる「SNOW SHOVELING」の本のサービス。そこでの触れ合いや何気なく言われた一言で、心が少し軽くなるかもしれない。

MORE INFO:

SNOW SHOVELING

エリア: 注目商品・サービス
住所: 〒158-0081 東京都世田谷区深沢4丁目35−7
定休日: 火曜、水曜
公式WEB: http://snow-shoveling.jp